【歯科医師が回答】災害から学ぶ、緊急時に役立った口腔ケアとは?誤嚥性肺炎にならないために
2011年3月11日に発生した東日本大震災から、今年で9年目を迎えます。災害当時は、歯ブラシを持っていない人がほとんどだったと思いますが、お口は身体の入り口で大切な臓器です。
そのため、口腔ケアが全身の健康にも影響すると言われています。佐藤 美嘉(さとう みか)歯科医師にインタビューし、災害や緊急のときの口腔ケアについてお話を伺いました。
災害時の水不足、歯ブラシがない状況下での口腔ケア
――災害時、岩手県内で歯科診療をしていたそうですが、避難所での実際の状況は?
2011年の東日本大震災のときは、2週間以上ライフラインがストップし、飲む水も手に入れるのが大変な状況でした。義歯がなく、置いてきてしまい、食事ができないという方も大勢いらっしゃいました。
また、避難所での生活は睡眠不足に陥りやすく、肺炎やインフルエンザなどの呼吸器疾患を起こされる方も少なくありません。感染症から身を守るためにも、口腔ケアは重要なものとなります。
しかしながら、歯ブラシや、歯間ブラシ、洗口液など、実際の災害時に避難所にそういったものが充分に備えられているかどうかはわかりません。実際に飲む水さえ、確保するのが精一杯な状況の可能性もあります。
――身近なもので、口腔ケアに役立ったものは?
実際に役立つのはオキシドールと爪楊枝ではないでしょうか。歯間部の汚れを取り除き、綿球に浸したオキシドールでぬぐいさります。コットンが無い場合はティッシュでも構いません。
オキシドールは発泡作用もあり、粘膜にも使用可能です。爪楊枝は避難所での配給時に渡される割り箸の中にあると思います。個別包装のものでしたら、割り箸とセットで入っています。
爪楊枝はすぐ捨てずに、歯間ブラシがわりとして代用してください。大人になってからは、歯間部を清潔にすることがとても大切です。
唾液には洗浄の効果がすごく高いので、歯間部をしっかりきれいにすれば、唾液の自浄作用で虫歯や歯周病はある程度抑制されると思います。
また、防災グッズの中に、必ず口腔ケア用品を入れておくことも重要です。水不足も考え、洗口液やマウスウェットティッシュなども備えておくと安心です。
「緑茶うがい」でお口の中を殺菌する
――お口の細菌を増やさないためには?
避難所では緑茶が提供されることもあると思います。緑茶には殺菌作用や除菌作用があり、口腔ケアができない時の緑茶うがいは大変有効です。
緑茶以外にも、麦茶やウーロン茶、紅茶にも同じような効果が期待できます。支援物資で届けられた最後の一口は、うがいで健康を守りましょう。
医科歯科ドットコム編集部コメント
災害や緊急のときの口腔ケアについて、佐藤 美嘉(さとう みか)歯科医師に教えていただきました。災害などの緊急時では、通常の歯みがきができないことが多いと思います。
しかし、そのまま歯みがきをしないままでいると、虫歯になってしまうだけでなく、高齢者であれば誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクが高まります。
爪楊枝で歯間をきれいにし、緑茶うがいで口の中を殺菌するなど、できる限りのことをして口腔ケアをおこないましょう。防災グッズに口腔ケア用品を追加したいですね。
取材日:2020年2月6日
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プロフィール
・岩手医科大学卒業、2010年に歯科医師免許取得し、研修医終了後、都内医療法人に勤務
・現在は医療法人社団 高輪会、常勤医として外来、総合病院の病棟、ターミナル施設を担当
・一般的な歯科、美容診療の他に歯科口腔外科(摂食嚥下、ターミナル治療を含む)
特に摂食嚥下治療に関しては、高齢による機能低下、器質的変化により、食べることが今後難しいと言われた患者様の摂食のリハビリをしております。さらに、認知機能を摂食により改善させています。
オーラルケア(リハビリも含めた専門家による口腔周囲の衛生管理、および機能向上)の重要性が日本では欧米に比べると認知が低く、認知症改善、嚥下機能改善、生活習慣病に効果があることを広める活動をしております。
・大手生命保険会社生命保険加入者様向けセカンドオピニオンドクターを担当
・大手生命保険会社主催のセミナーで、看護師や保育士の方向けに、小児の予防医療、発育セミナーを開催
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