「炭酸飲料や酸性食品は歯を溶かす?」ホントのところを歯科医師が語る
「炭酸飲料を飲むと歯が溶ける」という言葉を聞いたことはありませんか?
結論からいいますと、これは正しくありません。しかし、間違ってもいません。正確には「酸性食品は歯を溶かす」です。
炭酸飲料に限らず、酸性の飲食物を常用した場合、歯が徐々に溶けてしまいます。
これはいわゆる「酸蝕症(さんしょくしょう)」と呼ばれる症状で、自然に治ることはありません。
近年、虫歯や歯周病とならぶ口腔疾病として注目されています。
あまり耳にしない言葉「酸蝕症」を知っていますか?
歯の化学的な損傷の一つであり、酸蝕症に罹患した歯を酸蝕歯(さんしょくし)といい、生活習慣病の一つととらえられています。
歯の表面を覆っているエナメル質は、人体で最も硬い組織と言われています。
鉱物の硬さを表すモース硬度によると硬度7となっており、鉄(硬度4)や、ガラス(硬度5)よりも高い数値を示しています。
しかし、エナメル質はとても硬い一方で「酸に弱い」という弱点があります。
細菌が作り出した酸によって歯が溶けてしまった状態の「虫歯」がいい例です。
他にも酸性を示す飲食物を口にしただけで歯が溶けてしまうこともあります。
このように細菌とは関係なく溶けてしまった歯のことを「酸蝕歯(さんしょくし)」と呼びます。
飲食物によって歯が溶けるというと、炭酸飲料を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
確かに炭酸飲料でも歯は溶けますが、それだけに限らず、酸性のものならば歯は溶けてしまいます。
たとえば飲料だけでも以下のようなものが挙げられます。
・フルーツジュース
・黒酢
・スポーツドリンク
・栄養ドリンク
・ワイン
・ビール
・日本酒
体にいいフルーツジュースや黒酢、熱中症予防に役立つスポーツドリンク、美容効果のあるワインなども含まれており、驚いた方も多いと思います。
しかし、「体にいいもの」は必ずしも「歯にいいもの」とは限りません。
添加物の有無、糖質の多寡、味の濃い薄いに関係なく、酸性の飲食物ならば酸蝕歯になる可能性があります。
「炭酸飲料は飲まないから大丈夫」
「自然由来のものしか口にしない」
と思っていても、知らず知らずのうちに歯が溶けてしまうこともあるので注意してください。
知らない間に進行する危険あり? 酸蝕症の症状とは?
酸蝕症は毎日少しずつ溶けるので自分ではなかなか気づきにくい疾患です。
以下のような症状に該当する方は、酸蝕歯の可能性があります。
・冷たいものを食べたり飲んだりするとしみる
・歯にツヤがない
・歯が薄くなっている
・黄色い象牙質が透けて見える
・噛みあわせの部分が凹んでいる
・歯と詰め物の間に隙間がある
酸蝕歯は自然に治ることはありません。
これらの症状に心当たりがある方は、なるべく早めに歯科医師に相談してください。
酸蝕症を防ぐために
歯が溶けてしまったら、元の状態に戻ることはありません。
酸蝕歯になると歯並びが悪くなるだけでなく、顔や体もゆがんでしまいます。
美容的にもよろしくありません。
天然の美しい歯を維持するためにも、またこれ以上症状を進行させないためにも、次のような点を心がけてください。
①酸性の飲食物を控える
毎日、炭酸水やスポーツドリンクなどの酸性飲料を飲んでいる人は要注意です。
少しずつ頻度を減らして、代わりにミネラルウォーターやお茶などを飲むようにしてください。
また注意して欲しいのが妊婦さんです。
妊娠中は酸っぱいものを食べたくなることが多いのですが、レモンやグレープフルーツなどの柑橘類を食べ過ぎると歯が溶けやすくなります。
なるべく控えるようにしましょう。
②摂取するときは短時間で
歯に酸が接触する時間が長いほど、酸蝕歯のリスクが高まります。
少しずつ時間をかけて摂取するよりも、短時間のうちに摂取する方が安全です。
どうしても強い酸性のものを食べたり飲んだりしたいときは、時間をかけないように速やかに摂取してください。
③酸性の飲食物を口にした後は、水でうがいをする
酸性の飲食物が口に残ったままだと、歯がどんどん溶けてしまいます。
少しでもリスクを減らすために、食後には必ずうがいをして洗い流しましょう。
放置しても唾液が中和してくれますが、就寝時は唾液の分泌量が少なくなるので元に戻るまで時間がかかります。
歯磨きをした後に炭酸水やフルーツジュースなどを飲んだときは、うがいだけでもしてください。
④すぐに歯磨きをしない
酸性の飲食物を摂取した直後は、歯が柔らかくなっています。
食後すぐに歯磨きをすると歯がすり減ってしまうので気をつけましょう。
目安は唾液によって口の中が中和される30分後です。
それまでは水でゆすぐ程度にとどめてください。
⑤キシリトール入りのガムを噛む
キシリトールは自然界に存在する甘味炭水化物の一種です。
キシリトールは虫歯菌に酸を作らせないことと、唾液の分泌を刺激し、中和を促進させ、そして唾液中のカルシウムがエナメル質と結び付く再石灰を活発にすることにより虫歯を予防します。
まとめ
酸性の飲食物は私たちの身の回りにあふれています。
酸蝕症はコンポジットレジンなどで修復することはできますが、それは本来の歯ではありません。
いつまでも美しい歯を維持するためにも、予防することが何よりも大切です。
炭酸飲料を飲んでいてもちゃんと対策をすれば大丈夫なんですね。もっと詳しく相談したくなったら医科歯科.comから歯医者さんを探してみてはいかがでしょうか。
監修日:2020年2月4日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
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