「よく噛む習慣」が虫歯予防や小顔効果にも!そのよく噛む回数とは?
「よく噛んで食べなさい!」
子供の頃、そんな風に注意されたことはありませんか?
動作の見栄えや食事のマナーとしての大切さだけでなく、「よく噛んで食べる習慣」は私たちの美容や健康に大切な意味を持っています。
例えば、よく噛むことで虫歯になりにくくなり、アンチエイジング効果や小顔効果も得られたりするといいます。
なぜ「よく噛む」ことがそうした効果につながるのでしょうか。
なぜ、よく噛むと虫歯になりにくくなるの?
よく噛むと、食べ物が歯で細かく噛み砕かれ、消化酵素を含んだ唾液と混ぜ合わされることにより消化しやすくなる。
これは皆さんご存じだと思います。しかし、唾液には消化を助けることの他にも、虫歯から歯を守るという大切な役割があります。
虫歯は、ミュータンス菌やラクトバチス菌などの虫歯菌がつくる酸で歯が溶けることによって発生します。
ところが、唾液には口腔内のpHを正常値に保とうとする「唾液緩衝能」という働きがあり、菌によって口腔内で増えた酸を中和してくれています。
この唾液緩衝能によって、口腔内を虫歯が発生しにくい環境に保ってくれるのが唾液です。
また、歯の表面は、酸によってミネラル(リン酸カルシウムなど)の結晶が溶け出すことでもろくなり、ついに穴があいて虫歯になるわけですが、歯からミネラルが溶け出すことを「脱灰」といいます。
しかし、脱灰は一方的に進行するわけではなく、歯は奪われたミネラルを唾液に含まれるミネラルから補給し、元の健康な状態に戻そうとします。
この作用を「再石灰化」といいます。
歯は毎日脱灰と再石灰化を繰り返して健康を保っているのですが、脱灰と再石灰化のバランスが崩れると脱灰が一方的に進み、ついに虫歯になってしまいます。
脱灰と再石灰化のバランスを保つためにも、唾液の働きは大きいといえます。
もちろん歯磨きなどのデンタルケアは欠かせませんが、私たちの口腔内の状態を健康に保つことが虫歯予防には重要です。
そのためには、口腔内のpHのバランスを保ち、脱灰のペースに負けないスピードで再石灰化を進めてくれる唾液の働きが欠かせないのです。
唾液は、よく噛むことによってたくさん分泌されます。
十分噛まずに食べ物を丸呑みしたり、飲み物で流し込んだりするような食習慣では唾液が十分分泌されず、口の中が虫歯になりやすい環境になってしまうのです。
よく噛むことでアンチエイジングに役立つ? 小顔効果も!?
「噛む」という動作は、私たちの口の周りの筋肉を多く使います。
口のまわりには口輪筋(唇をすぼませる筋肉)という重要な筋肉があり、顔の表情筋は口輪筋から放射状に伸びています。
このため、口輪筋が衰えてたるんでくると顔全体が下にたるんできて、口角が下がったりほうれい線などが目立つようになったりといった「老け顔」になりやすくなってしまいます。
また、二重顎や頬のたるみなども顔の筋肉の衰えと密接な関係があります。
このため、「小顔になるためのエクササイズ」などといって、口元から顎にかけてマッサージしたり、筋肉を動かしたりという方法が雑誌やインターネットなどで多数紹介されていますね。
しかし、口の周りの筋肉を日常的に活発に働かせるためには、「噛む」という動作がとても有効なのです。
漠然と「よく噛んで食べて」と言われてもピンと来ないかもしれませんが、「アンチエイジング・小顔のためのエクササイズだと思ってよく噛んで」と言われたら、意外と無理なく生活習慣に取り入れられるのではないでしょうか。
「よく噛む」って何回噛むの? どうしたらよく噛めるの?
「ひと口、30回噛みなさい」。
そんな具体的な数字を聞いたことはないでしょうか。
歯科臨床、医学、栄養学、食品学などの専門家によって構成される「日本咀嚼学会」という学会の資料によれば、「ひと口30回」という回数は、元々はイギリスで昔から言い伝えられてきた「経験的にそれくらいの回数が適切」という目安のようです。
日本でも同じような言い伝えがあります。
また、にんじんとナッツというふたつの食材で、「何回噛んだら食べ物はどういう状態になるか」を研究した学者がいて、その人の実験では、およそ20~25回の咀嚼回数で食べ物はもっとも凝集力が高くなる(飲み込みやすく、なおかつ十分噛まれた状態になる)としています。
昔からの言い伝えにも一応の根拠はあったと考えられます。
もちろん、そばやうどんなどはそんなに噛んだら跡形もなくなってしまいますし、逆にお餅などはもっと回数を多く噛んだほうがいいかもしれません。
私たちの習慣としては「一応30回を目安に、食べ物の硬さや大きさなどを考慮して噛む回数を調整する」ということを意識すればいいと考えられます。
まとめ
「よく噛むこと」には、上で紹介した以外にも、
「顔の表情筋が活発に動くようになり、表情が豊かで若々しく見える」
「噛むことが脳を刺激し、脳の働きが活発になる」
「唇の血行がよくなって、唇の色が鮮やかになる」
「顔全体の血行が良くなって、肌年齢が若返る」
などのメリットがあるとされています。
しかし、「良く噛む」の解釈にも注意しなくてはいけません。
ただ強く噛むだけでは咀嚼筋が発達しすぎてしまうことによって、エラが張ってしまい逆効果・デメリットになりかねません。
意識するのは、
●噛むスピードはゆっくりと
●力を入れないように
●噛む回数を30回を目安に、30回~50回
●時間をかけて食事する
以上の事を意識するだけで、いろんな効果を得る事でしょう。
あなたもさっそく今日から「よく噛む習慣」にチャレンジしてみませんか?
<参考>
予防歯科と噛む事の重要性
日本咀嚼学会からの発信
唾液緩衝能
医科歯科ドットコム編集部コメント
ゆっくりたくさん噛むことが大切なんですね。
もっと詳しく相談したくなったら医科歯科.comから歯医者を探してくださいね!
監修日:2020年1月23日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
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