マウスガードは歯を守るのではなく噛み合わせが悪さから来るケガの予防!
スポーツの世界でも良いパフォーマンスを発揮するためには、食事から睡眠、メンタル面まで細かな配慮が必要であることが常識となっています。
それは、歯に関しても例外ではありません。
2017年1月、パラリンピック支援を行う日本財団は、東京歯科大学の協力を得てパラリンピックカヌー(パラカヌー)の選手である日本障害者カヌー協会の選手に、マウスガード(マウスピース)作成の支援を行いました。
併せて、東京歯科大学の武田友孝准教授によるスポーツ歯科に関する講話も行われ、「噛み合わせが良いほうが体のバランスも良いし、筋肉の活動も高い」など、噛み合わせと体の関係やマウスガードの効果などについて説明されました。
噛み合わせと体の関係は、スポーツ選手はもちろん、日常生活を送る私たちにも役立つ情報が多くあります。
改めて紹介していきましょう。
噛み合わせの良し悪しが体のバランスの鍵を握る
噛み合わせと体の関係としてまず注目したいのは、冒頭の武田准教授の話にも出てきたとおり、噛み合わせが体のバランスに大きな影響を与えるということです。
「噛み合わせが悪い」というのは、あごの関節や周囲の筋肉が一番リラックスする場所では上下の歯がうまく噛み合わず、顎関節が正しい位置からずれてしまっている状態のことです。
このように、あごの歪みが起きていると、体はほかの場所でバランスを取ろうとするので、首や腰など体のほかの部分の骨格が歪んでしまったり、筋肉の緊張が強くなったりします。
それだけでなく、自律神経が圧迫されることで頭痛や肩こり、不眠などの症状が表れることもあります。
アスリートはもちろん、日常生活を快適に送るためにも、噛み合わせは極めて重大な役割を果たしているのです。
噛み合わせが悪いとケガをしやすくなる
また、噛み合わせが悪いとケガをしやすくなるというデメリットがあることもわかっています。
といっても、口の中をケガしやすいという話ではありません。これも、体のバランスが崩れることと深い関係があります。
歯の噛み合わせが悪いということは、言い換えれば体の重心がずれ、バランスが崩れているということです。
となると、バランスが安定している人に比べて転倒などのリスクも高まりますし、常に筋肉へ余計な負担がかかっているため、「疲れやすい」「痛みがなかなか取れない」といった症状も起こりがちです。
また、体の歪みがあるかないかで、万が一ケガをした場合に、リハビリで必要な期間の長さも変わってくることも知られています。
大きな力を発揮するには「あごが正しい位置にあること」が重要
「歯を食いしばってがんばる」という言葉もあるように、ここ一番で大きな力を発揮するとき、人は無意識に歯を食いしばることがあります。
実際は、力を発揮する際にはすべての人が歯を食いしばっているというわけではありません。
最近の研究では、どうやら最大限のパフォーマンスを発揮するのに必要なのは、歯を食いしばることではなく、あごや首を含めた体の軸が正しい位置に固定されることであるといわれているのです。
スポーツ用のマウスガードの中には、そのような研究成果を取り入れたものも珍しくありません。
マウスガードの役割は、大きく分けて次の3つがあります。
・衝撃から歯や口内を守り、ケガをするのを防ぐ
・食いしばりにより、歯やあごの関節を痛めるのを防ぐ
・正しい位置にあごを固定し、運動能力を高める
このうち、注目したいのは3の効果です。
マウスガードを使用して一時的にあごの骨が正しい位置に固定されることで、握力や敏捷性、平衡感覚などがアップするといわれています。
もし、マウスガードの装着で運動能力が向上した場合には、歯科治療で噛み合わせを改善するといいでしょう。
アスリートにとって噛み合わせは非常に大切なものですが、それは特にスポーツに関わっていない私たちにとっても同様です。
体の痛みや倦怠感のある・なしは、日々の暮らしの快適さにも大きな影響を及ぼすものです。
健康な暮らしのためにも、ぜひ噛み合わせを意識してみてください。
<参考>
スポーツ歯科とは? 2020年五輪に向け重要性が高まる歯科医の活躍|リセマム
障害者トップアスリートに歯科支援|日本財団
医科歯科ドットコム編集部コメント
噛み合わせが体の様々な部分に影響するとは驚きですね。
「体の不調は噛み合わせのせいかも、、、」と思った方は医科歯科.comから予約ができます。
監修日:2020年1月21日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
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