インプラント治療ってそもそも天然歯とどう違う?歯科医師が答える
歯科治療の技術は日進月歩。
より自然で天然の歯に近い見た目の素材開発も進んでおり、「虫歯になっても削ってかぶせ物をすればほぼ元通り」「万一歯を抜くことになってもインプラント(人工の歯)を入れれば前のように噛める」と安心してしまいがちです。
しかし人工の素材で天然の歯とまったく同じ働きをするのは、なかなか難しいもの。
「第二の永久歯」とも言われる人工の歯・インプラントは確かに優れた治療法ですが、天然の歯と比べると異なる部分もいくつかあります。
その違いについて紹介します。
「インプラント」ってどんなもの?
インプラントは、ブリッジや入れ歯と並んで歯を失ったときの治療法の1つです。
ほかの2つが抜けた箇所の両側の歯を利用して人工の歯や義歯を支えるのに対し、インプラント治療は外科手術によって抜けた部位の顎骨に人工の歯の根を埋め込み、その根に接続することで人工の歯を固定するのが特徴です。
保険診療適用外であり歯1本30万~40万円と治療費が高額であること、外科手術が必要となり糖尿病や骨粗しょう症の場合は治療ができないケースもあるなど、デメリットはありますが、ほかの2つの方法に比べて周りの健康な歯に負担をかけないのが第一のメリットです。
加えて天然の歯とほぼ同じような外観であり、自分の歯と同じような感覚で硬いものも噛めることから、歯を失ったときの有力な治療法になっています。
大きな違いは歯根膜の存在の有無
とはいえ、インプラントが天然の歯と同じ働きをするかといえば、残念ながらそうではありません。
両者は2つの点で大きな違いがあります。
①歯根膜(しこんまく)の存在
天然の歯は顎の骨の中に植わっている状態で生えており、歯と骨の間には歯根膜という薄い膜が存在します。
これはいわば、噛み合わせの力をコントロールするためのクッションのようなものです。
微妙に歯を揺らすことで余計な力を逃がすほか、繊細な触覚の違いを感じるセンサーと細菌からの防御層の役目も兼ねています。
インプラントにはこの歯根膜がありません。
通常のものを噛む分には特に差を感じることはありませんが、噛む力をコントロールする力、小さなものや細いものを感じる力、細菌に対する免疫力などはどうしても天然の歯に劣ります。
②細菌に対する抵抗力が低い
天然の歯の場合は、歯茎内に歯の根っこに対して垂直方向に走る線維があり、歯と歯肉が強く付着しています。
しかしインプラントの場合は水平方向に走る線維しかないので、人工の歯と歯肉の付着は天然の歯に比べて弱めです。
また血液の供給も天然の歯に比べて少ないので、細菌の侵入に対しての抵抗力も低くなります。
インプラントと人工の歯は虫歯になることはありませんが、インプラント周囲炎(細菌などが原因で周りの組織が炎症)を起こすことはあります。
人工物である以上、いったん炎症が起こると天然の歯より早く進行してしまいます。
そのため、普段からメンテナンスをしっかり行うことが大切になるわけです。
歯を失わないためにできること
このように、いかにインプラントが優れていても天然の歯が一番であることは間違いありません。
では、そもそもインプラントが必要とならない、すなわち歯を失わないためには何に気を付ければいいのでしょうか。
厚生労働省によると、歯を失う原因の第1位は歯周病(37%)、第2位は虫歯(29%)、第3位は破折(18%)となっています。
虫歯は、虫歯菌が出す酸が歯を溶かしてしまうことが原因。
また歯周病はプラークの中の細菌により歯の周りの組織に炎症が起きることが原因なので、予防のためにはやはり毎日の歯磨きでプラークや歯垢を取り除くのが第一歩です。
加えて、歯ブラシが届かない場所や、どうしても少しずつ溜まってしまう汚れをとるために、定期的に歯科医院でクリーニングを受けるのが最も効果的な方法だと言えるでしょう。
もし虫歯や歯周病にかかっても、早期発見に役立ちます。
いくら治療技術が進んでも、人工の歯と天然の歯はやはり別物です。
かけがえのない自分の歯を守るためにも、日々のブラッシングに加え、定期的にクリーニングやメインテナンスを受けておくのがよいでしょう。
<参考>
歯を失う原因(8020推進財団)
医科歯科ドットコム編集部コメント
インプラントといえども、やはり天然の歯と同じというわけにはいかないようです。
当たり前といえば当たり前です。
そんな当たり前すぎて有難みを忘れてしまいがちな自分の歯を、もっと大切にしていかないといけませんね。
医科歯科.comでは簡単に近所のクリニックが探せ、予約受付が可能です。
やはり自分一人のケアでは限界があります。
まずは一度お話をききにいき、定期的に歯医者さんでクリーニングを受けてみてはいかがでしょうか。
監修日:2020年1月10日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
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