歯科医師が教える!予防歯科がおサイフにも体にもやさしいワケとは?
近年、虫歯や歯周病の害が知られてくるにつれ、注目を浴びている「歯科予防処置」。
基本的なコンセプトは、「病気になってから治療するのではなく、そもそも虫歯や歯周病にならないように気を付けましょう」ということであり、これに反対する人は少ないと思います。
ただ、実践するときにやるべきことは、「日頃の歯磨き」と「歯科医院での定期的なメインテナンス」です。
「自宅でできる歯磨きはいいけれど、定期的に歯医者さんへ通うのは面倒くさい。お金もかかりそうだし、本当にやらないといけないの?」と感じている人もいることでしょう。
手間はともかく、特に歯科予防処置のメインテナンスはどのくらい費用がかかるのでしょうか?
歯科予防処置にかかる費用とは?
歯科予防処置を実践する上で必要な費用や手間はどのくらいになるのでしょうか。
歯科予防処置に力を入れている一般的な歯科医院では、日々の正しい歯磨きに加え、平均して3~4ヵ月に1度のメインテナンス(虫歯がないか等のチェック+クリーニング)を奨励しています。
虫歯や歯周病の予防のためになにより大切なのは、虫歯菌が作り、歯につく細菌の塊である「プラーク」を除去することです。
プラークは日々のブラッシングで取り除くのが基本ですが、歯と歯の境目や、奥歯の裏側などをはじめ、どうしても磨き残しが出てしまいます。
プラークが虫歯や歯周病に発展する前に取り除くこと、また歯周病や虫歯の兆候が見えた場合にも素早く対処することのできる期間の目安が3~4ヵ月ということになるのです。
そのため、多くの歯科医院が数ヵ月に1度のメインテナンスをすすめています。
気になる価格ですが、一般的な歯科医院のメインテナンスである「歯周病と虫歯の検査+歯石除去(スケーリング)+PMTC(クリーニング)」というメニューの場合、虫歯や歯周病の治療の一環として行うことで保険診療の対象となります。
平均価格は、1回約2,500~3,500円程度です。
ただし、内容は歯科医院により多少ばらつきがあり、着色除去が保険適用に含まれるかなどは医院ごとに違いがあります。
一方、純粋にメインテナンスのみを行う場合は保険診療の対象外となります。
この場合は「歯周病と虫歯の検査+歯石除去(スケーリング。歯肉の奥を含む)+PMTC(クリーニング)+フッ素塗布」がセットで、価格は5,000~10,000円が相場です。
歯科予防処置の費用は高い?
以上を踏まえて、歯科予防処置にかかる費用を少し計算してみたいと思います。
3ヵ月に1度メインテナンスを受けたとすると、1年間にかかる費用は、保険診療の場合(虫歯や歯周病などの治療の一環としてメインテナンスを受ける場合)だと平均値3,000円×年4回=12,000円。
特に虫歯や歯周病はないが、メインテナンスのみを受ける自由診療の場合なら、平均値を7,500円として年間の費用は、7,500円×年4回=30,000円が目安となります。
この価格が高いか安いかは判断が分かれるところでしょう。
参考までに虫歯の治療費目安を挙げると、初期段階の虫歯(削る~詰め物)なら保険診療で1,500~5,000円、自由診療の場合で5,000~50,000円程度です。
また、神経に達する重度の虫歯の場合なら保険診療で9,000~20,000円、自由診療の場合で50,000円以上が目安となります。
さらに、抜歯となった場合、差し歯/ブリッジの価格は保険適用なら1本3,000~20,000円、自由診療なら1本50,000~20万円、インプラントなら30万~60万円が相場といわれています。
仮にメインテナンスを20歳から80歳まで毎年続けた場合の費用は、年間9,000円×60年間=54万円となります。
総合的に見れば歯科予防処置がお得
これだけ見ると、「お金を払って予防をがんばるより、虫歯や歯周病になってから保険診療で治したほうがお得では?」とも思えます。
しかし、メインテナンス費用と治療費だけを比べて判断してしまうのは早計です。
というのも、虫歯は一度治せば元通りになるというものではなく、治療後に再発のリスクが発生します。
2004年に発表されたスウェーデン・イエテボリ大学予防歯科学のDr.アクセルソンの研究によれば、歯科患者に30年間で発生する虫歯の実に80%が再発であるという結果があります。
また、差し歯は平均7~10年で寿命を迎えるといわれていますし、長持ちさせるには定期メインテナンスと日頃のケアが欠かせません。
インプラントも同様で、施術後も日頃のケアと定期メインテナンスは必須です。
歯科予防をおろそかにして治療を受けることになれば、治療費+メインテナンス費用がかかり、再治療の数だけ負担も増します。
しかし、しっかり予防して治療を受けずに済めばメインテナンス費用だけですむため、結果的にお得になることが多いというわけです。
歯科治療は、重症であればあるほど治療そのものにも、その後の状態を維持するのにも時間と労力がかかります。
「最初から虫歯・歯周病にならない」歯科予防処置が、結果的にはお金と時間を節約することにつながりますので、ぜひ実践してみてください。
<参考>
「歯の本 歯医者に行く前に読む 決定版」(ダイナミックセラーズ出版)
医科歯科ドットコム編集部コメント
お金という面で見ても、予防歯科はお得といえるのですね。
せっかくの自分の歯ですから、できれば末永く残したいです。
この記事を読んで歯科医院で予防措置を受けたいと考えた方は、医科歯科.comから予約してみてはいかがでしょうか。
監修日:2020年1月17日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
人気記事
-
1
-
2
-
3
-
4
-
5