フッ素が虫歯予防にイイと言われる3つの理由とは?フッ素に有害性はあるの?
化学物質の一つである「フッ素」。
市販の歯磨き粉の多くに含まれる成分で、虫歯予防に効果的とされています。
よくテレビの宣伝などで耳にすることがあるのではないでしょうか?
いち時期、フッ素は歯に悪いという主張も見られましたが、やはり虫歯予防に一定の効果があるという考えが多くあります。
このフッ素は具体的にどのような仕組みで虫歯を予防してくれるのでしょうか?
今回は、「フッ素」についてみていきたいと思います。
フッ素とは
フッ素とは原子番号9番の元素であり、天然では蛍石や氷晶石などとして存在し、基本的に単体では存在し得ません。
フッ素単体では酸化力がとても強く、ほとんど全ての元素と反応します。
ですから何らかの元素と反応して化合物となった状態で、フッ素は広く自然環境の中に存在しています。
土壌や海水にも含まれているので、地球上のすべての動物、植物にも含まれています。
加えて、毎日飲む水や食べる肉・魚介類・野菜などほとんどの食品に微量ながらもフッ素は含まれているのです。
通常、生活で触れる範囲であればフッ素に有害性はもちろんありません。
フッ素が虫歯予防に有効な理由 (1)酸の発生を抑制するはたらき
「フッ素は虫歯予防に役立つ!」のはその通りですが、では具体的にどのような仕組みで虫歯を予防してくれるのでしょうか?
歯磨きを丁寧に行わないとどうしても歯垢(プラーク)が歯の表面や歯と歯の間に残ってしまいます。
この取り除ききれなかった歯垢は細菌の塊であって、放置しておくと酸を放出します。
虫歯という病気は、歯垢中の細菌が糖質から酸をつくり、その酸によって歯が溶けてしまう病気のことです。
フッ素を歯の表面に付着させることによってこの酸の発生量を抑えてくれますから、虫歯予防に繋がると考えられています。
フッ素が虫歯予防に有効な理由 (2)再石灰化の促進
テレビCMで「再石灰化」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。
「フッ素の力で再石灰化を防ぐ!」というような宣伝文句が多いですね。
しかし、再石灰化というものがどんな現象なのかはよく知らない人が多いのではないかと思います。糖が含まれる食べ物を食べると口の中は酸性に傾き、その酸が原因で歯が溶ける「脱灰(だっかい)」が起こります。
脱灰のあと、唾液のはたらきによって時間が経てば口の中は再び中性に近づきます。中性に近づくことで始まる現象が「再石灰化」であり、この再石灰化で脱灰の際に溶けてしまった歯を修復する、という一連の流れがあります。
しかし、加齢などにより唾液が少なくなり、間食が多くて口の中が酸性になっている時間が長いと、だんだん再石灰化が追い付かなくなってくると考えられています。
脱灰によって歯が溶ける速さに、再石灰化作用が追いつかないために歯に穴が空いてしまう、というのが虫歯の正体です。
初期の虫歯であれば、この再石灰化作用によって治癒され、歯は健康な状態に戻ると言われています。
この再石灰化作用を促すのがフッ素の二つ目の役割なのです。唾液というのは歳とともにどうしても減ってくるものですし、寝ている間は特に唾液の分泌量が減少します。
ですから、唾液だけで再石灰化作用を保つのはだんだん難しくなってくるのです。
そこで歯磨き粉に含まれるフッ素を歯の表面に付着させて再石灰化を促すことで虫歯の予防を期待するということなのです。
一つ注意点ですが、歯磨き粉を使用して歯磨きをしたあと、口をゆすぎすぎるとフッ素がとれてしまうと言われています。
違和感はあると思いますが、少し歯磨き粉の味や風味が残るくらいでうがいをとどめておくことが重要であると考えられています。
フッ素が虫歯予防に有効な理由 (3)歯質強化に繋がる
歯の表面を覆うエナメル質が再石灰化する際、唾液の中のカルシウムやリン酸などの成分を取り込みます。
このときにフッ素がそこに加わると、より強いエナメル質の構造をつくることができます。元のエナメル質はハイドロキシアパタイト、という結晶を作っているのですが、これが酸に弱い性質があり、フッ素によってこれがフルオロアパタイトという結晶に変化します。
このフルオロアパタイトは酸に対して安定している結晶ですから、歯を酸から守りやすくなるということです。
エナメル質は歯を外的刺激から守る壁のようなものですから、ここを強化することは虫歯予防にも繋がると考えられています。
有害性は?
フッ素の有効性が主張される一方で、フッ素の有毒性を主張する論者も数多く存在します。
実際、フッ素に有害性はあるのでしょうか?
結論から言うとフッ素に有害性は確かにあります。
ですが、それは「大量摂取した場合」のことであって、歯磨き粉に含まれる程度のフッ素であれば人体に影響はないと考えられています。
このフッ素という物質は、非常に微量であれば大きな害はないけれど多量であれば人体にとって非常に毒性の強い化学物質であるということは、フッ素支持派も反対派も双方が認めていることです。
19世紀の外国のフッ素研究者の多くが、毒性の強さから、研究中に死亡したり、重症を負ったりしていることからも毒性は明らかと言われています。
しかし、日常で触れている程度ではただちに悪影響が出るというわけではないので、虫歯予防のためにもフッ素入りの歯磨き粉を使用するべきだと考えられています。
監修日:2019年11月12日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
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