歯科医師が教える!虫歯が自然治癒しないと言われるワケとは?
「なんとなく歯が痛いと感じていても、仕事等で忙しくて歯医者に行く時間がとれない……。だったらきちんと歯を磨くなどして、自然治癒するのを待とう!」と考える人もいると思います。
しかし、そのような考え方は非常に危険なのです。虫歯の初期段階では自分のケア次第で自然治癒する場合がないわけではないですが、ある程度虫歯の度合いが進行してしまうと、もはや自然治癒は望めなくなってしまいます。
それでも「いつかおさまるだろう」と高を括っていると、気付いたときには取り返しのつかない状態になってしまう危険性もあるのです。
ですから、虫歯は早期発見、早期治療が重要なのです。今回は、虫歯が自力で治らない理由をご紹介し、虫歯に対する意識を高めてもらえればと思います。
経過観察をしてもいい場合とは?
初期段階の虫歯は上でも述べた通り、自然治癒の可能性があります。虫歯はC0~C4という5段階で評価されています。
歯の構造は、もっとも表面になる部分を「エナメル質」といい、その下は象牙質とよばれています。
象牙質の下は歯髄といわれており、歯髄は歯の神経などが走行していて歯を栄養しているといわれる部分です。以上を踏まえて虫歯の段階をみてみると、
C0=初期の虫歯
C1=エナメル質が破壊される
C2=菌が象牙質まで進行
C3=菌が神経まで進行
C4=末期の虫歯(歯の根の部分だけ残っている状態)
このうち、「放置しても良い虫歯の特徴」は、上の5段階のなかでもC0(シーオー)の段階のみといわれています。
C0の段階の特徴は、「虫歯になりかけている状態で、歯の表面が白濁するなど、色の変化はあるけれど穴が空いてない状態」といわれています。
ただし勘違いしてほしくないのは、放置しても良いといっても、「何もせず放置して良いということではない」という点です。
C0の段階であれば、正しいブラッシングとフッ素などの利用で、本格的な虫歯が防げるので、いわゆる削って詰める治療が必要ではないといわれているだけというのは気をつけておきたいです。
自然治癒には何が必要?
人間の歯は、歯が溶ける脱灰(だっかい)と溶けた歯を唾液の力で戻す再石灰化(さいせっかいか)を食事をするたびに繰り返しています。
このバランスが崩れた時に虫歯が進行していくようになっています。虫歯が自然治癒していくためには出来るだけ脱灰を抑え、再石灰化を多くさせることが重要です。
そして虫歯を再石灰化させるには虫歯予防以上に歯を強くしていく必要があります。
再石灰化を促すためには
・よく噛んでいっぱい唾液を出す(砂糖の入っていないガムがおすすめ)
・食べ物や甘い飲み物をだらだら食べたり飲んだりしない
・食後は歯磨きできちんと食べカス(プラーク)を落とす
という以上の3つを意識することが大切です。
しかし、C1以上の段階になってしまうともう自然治癒は期待できなくなります。
なぜ自然治癒が期待できないのか?
C0は、歯の表面のエナメル質が透明感を無くして白墨(チョーク)のようになっている状態で、まだ症状が無く、穴も開いていない状態です。
穴が開いていなければ、先ほど述べた再石灰化で自然に治癒する場合があります。
しかし、C1以降、歯の表面に穴が開いてしまったら、それはもう再石灰化では埋めることはできないため、歯の自然治癒が望めなくなるのです。あとはその穴からどんどん歯の内側に向かって菌やその産生物が侵食していって、最終的に神経を犯し歯を溶かしてしまいます。
この過程は決して自然治癒することはありませんから、C1以上の段階になっていそうだなと思ったら一刻も早く歯医者にいって治療を受けることが必要です。
各段階の症状を知っておこう
C1以上の段階になった場合に出る症状を知っておいて、歯医者にいくタイミングの目安にしましょう。
【C1】エナメル質が溶け、歯の表面に小さな穴が空きます。
暗いところで見るとわかりづらいので、なるべく明るいところで入念に確認しましょう。
この時、まだ痛みはありませんので余計にわかりづらいです。
【C2】象牙質まで虫歯が進行した状態です。 象牙質は柔らかく、ここから急激に虫歯が進行するので、早急な治療が必要です。
この段階になると、なんとなく普段から痛みを感じたり、冷たいものや甘いものがしみたりします。
【C3】歯の神経まで虫歯が進行してしまった状態です
神経に菌が入り込むことで神経に炎症が起きるので、何もしていなくても歯の内側がズキズキとひどい痛みを覚えます。
【C4】歯の上部が溶けてしまい、ほとんど根だけ残った状態です。ここまできてしまうと見れば一目でわかります。
更に炎症が進行すると、神経が死に、やがて痛みがなくなります。
まとめ
虫歯が自力で治らない理由、そして虫歯の段階の目安がわかっていただけたでしょうか?
C0の段階であれば自然治癒の可能性がありますが、通常はC0の段階だと自分で判別することはできません。
そうなると自分の中ではC1からが虫歯ということになりますが、この時点ではもはや自然治癒が期待できないので、実質的に虫歯は自然治癒しない、ということが言えます。
対処が遅くて虫歯が重症化してしまった、ということにならないように、くれぐれも日々のケアとチェックは欠かさないようにしていきましょう。
監修日:2019年12月25日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
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