歯科予防大国スウェーデンの「虫歯、歯周病予防」の歴史に迫る!
北欧の国、スウェーデンは世界有数の「虫歯、歯周病の予防大国」として知られています。
スウェーデンの虫歯、歯周病の予防の技術、そして人々の意識は日本のそれよりもずっと高いことをご存知でしたか?
今でこそ多くの人が健康な歯を保っているスウェーデンですが、どうしてスウェーデンは虫歯、歯周病の予防大国になっていったのでしょう?今回は、スウェーデンの虫歯、歯周病予防の歴史に迫ります!
昔は歯周病患者が多かった
今でこそスウェーデンでは、国民の虫歯の平均本数は日本の約半分、歯周病はなんと4分の1しかない、と言われています。
しかし、スウェーデンの人の歯がもともと細菌に強いわけではありません。
元々スウェーデンも、1970年代までは非常に多くの国民が虫歯や歯周病にかかり、歯を失う人も多かったのだそうです。人々の意識もそこまで高くなく、歯に対するケアもおろそかになっていたのだそうです。
政府主導の「虫歯、歯周病予防」プロジェクト
虫歯・歯周病だらけの状況を重く見たスウェーデン政府は、1970年代に「虫歯、歯周病予防」を国家プロジェクトとしてスタートさせます。
まずはスウェーデンのある大学が歯についての大規模な調査を始めました。調査の内容は、虫歯や歯周病などの疾患と、歯科医師による治療や歯科治療を行った後のブラッシングとの関係についてです。
調査を行った結果、虫歯・歯周病予防には、セルフケアと歯科医院での治療の両方が重要であることがわかりました。これ以降、歯科治療では従来の対症療法だけではなく、併せて「虫歯、歯周病予防」も行うことがより重要であると考えられるようになっていったのです。
スウェーデン政府はこの調査結果を受けて、「虫歯、歯周病予防」という考え方を国家的に推進していく方針を採り、国民に歯科医院で「虫歯、歯周病予防」を受診することを義務付けたのです。
現在の虫歯、歯周病予防①
そうしたプロジェクトの甲斐あって、現在のスウェーデンの歯の治療体制はとても充実しています。
まず、「すべての国民に平等に予防と治療機会」という目的で設立された国の医療サービス機関で、全ての国民が定期的に歯垢除去治療とその指導を受ける事ができます。
20歳未満の国民であれば、歯の状態を検査することも歯科医院での治療も無料でしてもらえるので、スウェーデンの人々は子供のときから歯の健診を生活習慣として定着させられるのです。
また、両親の出産前指導というのもあります。乳児でも歯が生え始める頃から歯の状態をチェックする義務があります。
それは治療ではないので、子供にとって歯の検診は気持ちがよくなる、楽しい事なのだという意識を定着させてくれます。
羨ましいことに、スウェーデンでは歯科医、歯の治療が怖いという感覚はほとんど無いのだとか。
現在の虫歯、歯周病予防②
他にも、個人の歯の状態によってケアやクリーニングの方法、歯科医院に通う頻度も異なってきます。そして疾患のある人には専用のプログラムが組まれます。
糸ようじ、歯間ブラシなど、自分では判断がつきにくい道具の選び方もきめ細かく指導されますので、当然健康レベルは上がります。
日本だと、とりあえず一週間ごとに通う、虫歯ができたらとりあえず削るなど、全てとは言いませんが個人に合わせた治療が充実している、とは言い切れないかもしれません。
糸ようじや歯間ブラシなどの小道具に至っては、歯のケアの意識の高い人が自分で市販のものを買って使用する、という状況ですね。
ここにもスウェーデンの虫歯、歯周病予防に対する意識の高さが見てとれます。
意識の違い
そもそも、虫歯、歯周病予防に対する意識の差はどうなのでしょうか?
スウェーデンでは小さいころから「歯の疾患は予防するもの」と教えられているので、虫歯、歯周病予防は必要だと思っている国民の割合は非常に高いです。
一方日本ではまだまだ対症療法が主流なので、虫歯、歯周病予防が必要だと答える人の割合はそこまで高くないです。
また、日本では使用している人があまり多くないデンタルリンスやデンタルフロスといったオーラルケア用品の利用がスウェーデンでは盛んです。
スウェーデンにおいては、「ブラッシングに加えてデンタルフロス、デンタルリンスは当然使うべき」という考え方の人が多いようです。
一方日本では、「歯のケアは丁寧なブラッシングだけで充分」と考えている人が多いようです。
結果に表れている!?
こうした意識の高さは実際の健康にもしっかり繋がっています。
日本では、「歯は歳と共に脆くなる」という考え方が一般的ですね。一方スウェーデンでは、70歳になっても日本人と比較して多くの歯が残るそうです。
歯を失ってしまうということは誰にでも起こる老化現象などではなくて、虫歯や歯周病がその原因であり、「虫歯、歯周病予防」にきちんと取り組むことによって、歳をとっても歯は残せるのだということを、スウェーデン政府の取り組みとその成果がきちんと証明してくれています。
まだまだ日本の虫歯、歯周病予防の意識は高くはないです。
しかし、歯の健康はそのまま生活の質、そして自分の体の健康にかかわってきます。
歳をとっても健康に過ごしていくためにも、若いうちから自分の歯のケアについて意識を高く持っておきたいですね。
監修日:2019年10月9日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
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