【歯に小さな穴が…歯医者さんへ相談】痛みがなければ放っておいて平気?
口の中の異変はなかなか気が付きにくいものです。「鏡を見たら歯に小さな穴が空いていて驚いた!」という経験はないでしょうか。「痛みもないのになぜ?」と思いますが、実は初期の虫歯は痛みを感じないことが多く、自分でも気が付かないうちに歯に穴が空いてしまうのも珍しいことではありません。どうして歯に穴が空いてしまうのか、放っておくとどうなるのか、どうすれば予防できるのかなど、歯に穴が空くメカニズムとその対処法について紹介します。
歯に穴が空くのは修復が追いつかなくなったとき
そもそも、なぜ歯に穴が空いてしまうのでしょうか?人の口の中には1,000億から1兆個ほどの細菌がおり、この中には虫歯菌も含まれています。虫歯菌は、食べかすなどに含まれる糖分を栄養として繁殖し、酸を作り出します。この酸により、歯の表面のエナメル質からミネラルが溶け出してしまう現象、「脱灰(だっかい)」が起きるのが、歯に穴が空いてしまう直接の原因です。
人の唾液には溶け出したミネラルを修復する「再石灰化」という作用があるため、通常の歯は溶けたり修復されたりを繰り返すだけで穴が空くことはありません。しかし、間食が多く口の中が酸性になっている時間が長かったり、虫歯菌の数が多すぎたりすると、この「脱灰」と「再石灰化」の均衡が崩れ、再石灰化による修復が追いつかなくなってしまいます。そうなると、歯の表面が溶けて穴が空いてしまうのです。
歯に穴を見つけたら、痛みがなくても歯科医院へ
歯に穴が空いてしまっても、穴が小さくて神経にまで達していないような場合は、痛みがないこともあります。しかし、痛くないからといって、そのまま放っておくのは良くありません。歯の表面が少し溶けた程度なら再石灰化の作用で元に戻ることもありますが、いったん穴が空いてしまうと、たとえどんなに小さな穴でも自然治癒することはありません。放っておくとその小さな穴から虫歯が進行し、神経に到達して強い痛みが出る可能性が高いといえるのです。また、見た目は小さな穴でも歯の内部で虫歯が広がっている場合もあります。穴が空いているのを見つけたら、早く歯科医院に行って治療することが大切です。
穴が空くのを防ぐのは日々の歯磨きから
歯に穴が空くのを防ぐには、まずは毎日の歯磨きでしっかりと歯の表面についたプラーク(細菌の塊)を除去することが大切です。歯に穴が空きやすい箇所はある程度決まっているので、特に次のような場所を重点的に磨くようにするといいでしょう。
▼奥歯の噛み合わせ
奥歯の表面はでこぼこがあるため、汚れが残りやすい場所になっています。特に、低い歯がある場合には、歯ブラシを口の真横や斜め横から入れて磨きましょう。
▼歯と歯のあいだ
歯と歯のあいだはプラークが溜まりやすいところなので、歯ブラシを小刻みに動かして一本ずつ丁寧に磨きます。歯の裏や歯と歯のあいだを磨きやすい、毛先が釘状になったワンタフトブラシ(歯のうしろを磨くのに便利)や、歯のあいだを磨ける糸状のフロスを使って、溜まったプラークをしっかりと取り除くことが大切です。
▼歯と歯茎のあいだ
歯と歯茎の境界は、汚れやプラークが溜まり易い場所です。ただ、歯周病が進むと歯茎の裏側に歯周ポケットが形成され、さらに磨き残しができやすくなります。初期の浅い歯周ポケットでも汚れが溜まらないように、歯ブラシを斜め45°にするときれいに磨くことができます。
ただし、どんなに丁寧に磨いても、歯ブラシだけでプラークを完全に落とし切ることはできません。日々の歯磨きと併せて、歯科医院で定期メインテナンスを受け、溜まった歯石や磨き残しを取り除いてもらうのがおすすめです。
詰め物が取れた場合もできるだけ早く歯科医院へ
虫歯が原因で歯に穴が空いてしまった場合のほか、詰め物が取れたことで歯に穴が空いてしまうのもよくあることです。この場合は詰め物を無理に戻そうとせず、取れてしまった詰め物を可能なら容器に保存して、なるべく早く歯科医院で診てもらうことが大切です。詰め物が取れたには理由があるはずです。詰め物の下で虫歯が進んだことによって詰め物が取れたという場合も多く見られます。
痛みがないと、ついつい後回しにしがちですが、詰め物が取れてしまった歯は中の象牙質や神経が外にさらされて虫歯になりやすい状態です。歯科医院に行くまでは詰め物が取れた歯を使ったり、極度に熱い・冷たいなど神経への刺激が強い飲み物や食べ物をとることは避けたりして歯の負担を減らすようにしてください。虫歯の治療は何度も歯医者に通わなければいけないイメージが強いですが、初期の段階なら1~2回の通院で治ることがほとんどです。歯に穴が空いてしまった場合は、たとえ痛みがなくても、早いうちに歯医者さんへ行きましょう。
編集部コメント
最近そういえば歯に穴みたいのが・・・と歯が気になるという方は、すぐにでもお近くの歯医者さんへ行って、歯の状態を見てもらってください。
監修日:2019年10月8日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
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