加齢とともに増えると言われる心臓弁膜症!検査や治療について現役医師に聞く!
今回はTVCMでもよく見ることで知る機会が多くなった心臓弁膜症について東京心臓血管・内科クリニックの柴山謙太郎院長にお話しを伺いました。
加齢とともに増えると言われる心臓弁膜症の患者さん。
日本には300万人もの患者さんがいると言われるこの病気について現役のお医者さんが分かりやすく解説してくれました。
心臓弁膜症の症状について
心臓弁膜症の症状は多岐にわたります。特に多くみられる症状が、動いたときの息切れです。
動いたときに自分の呼吸が苦しい、他覚的にみて肩で息をしているといったときが症状の一つとしてあります。
特に顕著なのが、坂道や階段です。普段の平地歩行よりも強めの歩行をしたときに、息切れ症状が強くなります。
弁膜症に限った症状というわけでなく、心臓全般にそういった症状となって現れることがあります。
その為、息切れの症状があった場合には、弁膜症も含む心臓の病気の可能性があるということで、受診して精査してみたほうがいいと思います。
それ以外にも動悸症状、胸痛症状、あとは、気を失ってしまう失神症状といったものがあります。
例えば、動悸に関して言えば、不整脈がでて動悸症状を訴えることがあります。弁膜症に結びつきの深い、不整脈としていえば、心房細動という不整脈があります。
この不整脈がでると脈が速くなったり、動悸の症状を訴えるということがあります。
不整脈がでていなくても拍動自体が強くなって、それを自覚するというような動悸症状がでることもあります。
次に、胸痛症状ですね。狭心症や心筋梗塞といったものでも胸痛症状はでますが、弁膜症の中にも胸痛症状をきたすものがあります。
最後に、失神症状になります。重篤なものは心臓の病気であったり、頭の病気であると考えられますが、その心臓の病気の中でも、特に不整脈であったり、弁膜症による失神症状といったものは、危険なサインとして知られています。
弁膜症の症状は、労作時の息切れ、呼吸苦、あとは、動悸、胸痛、失神があり、これらをまとめて心不全症状ということもあります。
心臓弁膜症の検査はどのように行うのでしょうか?
心臓弁膜症の検査といいましても、まず最初に、心臓弁膜症かもしれないということで受診していただく必要があります。
弁膜症を疑う訴えの中で、最も多いのが、色々な医療施設、あるいは健康診断での心雑音です。
心臓の雑音、これは聴診をもって認められる所見であります。この心雑音で弁膜症かもしれないということで、循環器内科を受診していただいて、精査することが心臓弁膜症で特に多い流れになってきます。
そして、循環器の施設に来たあとの流れは、基本的に心臓弁膜症の診断は、経胸壁心エコー、いわゆる心エコーによる診断がほぼ全てです。
それ以外で診断するということは、現状ではありません。
これはガイドラインでも明確に記されておりますので、心臓弁膜症の診断ということであれば心エコーの一択と考えていただいていいと思います。
さらに、心臓弁膜症の診断がついた後ですね。
心臓弁膜症が、治療の適用があるかどうかに関して、悩ましい症例の場合は、他の検査を追加していくことになります。
心エコーでいえば、症状の有無を確認するために、運動負荷の心エコーをすることがよいと思います。
運動負荷の心エコーをすることによって、実際に運動負荷をかけてみて、その状態で症状がでるのかどうかを確認する。
これは症状の確認はもちろん、客観的な心エコーの数値を見ることができますので、その数値を見て実際にそれが弁膜症による症状なのかどうか、あるいは他の原因なのかどうかを診ることができます。
また、経食道心エコーという検査もあります。こちらは経胸壁心エコーで十分診られない場合、形態的に十分な評価が難しい場合に、経食道心エコーが有効な場合があります。
なぜ形態の評価が必要かといいますと、手術や、カテーテル治療をする際に、実際の病気の形態、病変の部位、機序、これらをしっかり把握するために形態を確認する必要があります。
その他、CTであったりMRIであったり、色々なもので心臓弁膜症を評価することができます。
食事や運動など普段の生活で気をつけることはありますか?
特に注意しないといけない事は、食事でいうと塩分です。
やはり、心臓弁膜症の多くで、血圧のコントロールが必要となる場合があります。
血圧コントロールのためには、食事での塩分制限が必要となります。
そのため過度な塩分を摂取していると思われる人に関しては、塩分を制限していく必要があります。
また、心不全症状がでているような患者さんにおきましては、水分の摂取に関しても厳重に注意が必要です。
特に体重の増加が大きい人に関しては、水分をできるだけ制限していくということも必要になります。
ただ、注意しないといけないのは脱水になると、重篤な状態になる可能性のある弁膜症もありますので、定期的に心エコーで水分のバランスを見ていく必要がでてくるかと思います。
運動に関しても適宜やっていただく必要があります。
もちろん重篤な弁膜症があって、それによる症状が明確に出ている場合は、運動制限が必要になります。
そして早期の手術の介入が必要なってくることがあります。
ただし、そこまで至っていない弁膜症に関しては、適切な運動が必要だと思います。まず一つに、弁膜症患者さんがご高齢の方が多いという点があげられます。
そのため、普段の生活で疲れやすくなるというのが、弁膜症によるものであっても、筋力の低下によるものであったとしても、患者様本人は自分の年齢のせいだと思って、運動を自主的に制限していくことが多いです。
これを防ぐためには、運動制限はせず普段通り生活する。
その中で、息切れ症状が以前よりもひどい場合は、年齢のせいにせずに、早めに循環器の施設に受診をするということを心がけていただくのがいいのではないでしょうか。
ですので、運動に関しては普段どおりやっていただくということです。
弁膜症の診断がついたら、どんな重症度の方であってもいきなり運動制限をするというのは間違っていると思います。
妊娠している方が心臓弁膜症にかかった場合、出産は可能か?
まず、出産妊娠をするにあたって、体内の体液量が増加します。要するに、血管や心臓にかかる容量の負荷が増えていくことになります。
それに伴って、やはり逆流性の疾患に関しては、逆流が増えるとか、容量負荷に伴う変化がでてきます。
弁膜症がある方に関して、必ずしも全例、妊娠ができないということではありません。
もちろん重篤な疾患や、内服治療の方で、特に不整脈により、ワーファリンを内服しないといけないというようなことがあった場合には、妊娠を考慮しないといけないということがあります。
しかし、症状がないような弁膜症や、しっかりと心エコーのフォローをしている患者さんに関しては、必ずしも妊娠をしてはいけないということはないと思います。
心臓弁膜症の治療について
心臓弁膜症の治療では、内服と、外科的あるいはカテーテルを用いた浸襲的な治療、この二択があります。
心臓弁膜症に関して、薬による内服治療は根本的な治療ではありません。
たとえば、心臓弁膜症に伴うような症状や、足の浮腫みといったものを緩和するために薬は使いますが、弁膜症を根本的に治療することはできません。
心臓弁膜症の根本的治療は、外科治療あるいはカテーテルを用いた浸襲的な治療によって心臓弁膜症の原因を根本的に改善することによって、はじめて治療の効果が得られます。
弁膜症の種類によって、その治療方法は異なってきます。弁をまるごと交換する弁置換術が必要なものもありますし、もとの自分の弁を用いた弁形成術が可能な症例もあります。
弁膜症の種類、弁膜症の機序や弁の形態によって、様々な治療方法の選択肢がありますので、それぞれの医療施設で、適切な治療方法を選択するということになると思います。
そのためには、色々な治療選択肢をもった医療施設で治療を受けることが重要になります。
例えば、外科しか処置ができない施設では、外科手術の一択になってしまいます。
しかし、外科手術もカテーテル治療も可能といった選択肢が広い医療施設であれば、この症例に関しては、どちらがいいのか、自らの引出しの中で、最適なものを選択することができます。
できれば、自分の弁膜症の治療に関して、ある程度患者さんご自身も、あるいは、ご紹介いただく先生にも治療方法をご理解いただき、治療選択肢が広い施設で治療を受けていただくということがベストなのではないでしょうか。
今後取り組んでいきたい治療や分野は?
私は心エコーが専門になります。心臓弁膜症に関しては、心エコーが必須の分野です。
その中で、より深めていきたいと思っているのが、運動負荷の心エコーになってきます。
日本で運動負荷の件数は、全国で1万件もいかず、5千件くらいとなります。
これは、アメリカでいうとメイヨークリニックという1施設の1年の件数とほぼ同等の件数です。
日本では運動負荷エコー検査はそれほど広がっていない、件数としては少ないというふうに考えられます。
これはなぜかというと、運動負荷心エコーというものに慣れていないということもありますし、現状の病院やクリニックでは、医療資源の問題から施工が難しいということがあります。
当院では、運動負荷心エコーに十分対応できるようなスタッフの配置であったり、医療設備を整えておりますので、運動負荷の心エコーをより深めていければと考えております。
先生が心臓弁膜症に罹った場合、相談に行く先生は?
基本的には診断が命だと思っておりますので、やはり心エコーの専門医の先生です。
できれば、循環器領域の超音波専門医の先生に相談に行くと思います。
また、そこで診断、治療の適用というふうに考えるのであれば、心臓血管外科の先生でやはり治療の選択肢が広い外科の先生だったり、あるいは、ハートチームです。ハートチームというのは、外科の先生だけじゃなく、カテーテル治療をする内科の先生、イメージングのドクター、あとコメディカルの方、麻酔科など、様々な専門家が絡んでいるチームをいいます。
そのようなハートチームがしっかり機能している病院、そして、先程あげたような治療の引出しが多い病院を選択して受診すると思います。
心臓弁膜症に悩まれている方にメッセージ
心臓弁膜症という言葉自体が、まだ慣れていない、社会に浸透していない言葉だと思います。
ただ、現状の心臓弁膜症患者さんは、もうすでに日本で300万人いると言われています。
これは日本の癌患者さんがトータルで100万人と言われてますので、この3倍もいることになります。
心臓弁膜症という言葉は、あまり浸透していないかもしれませんが、非常に多くの患者さんがいらっしゃいます。
そんなに稀な病気ではありません。もし、何か症状、あるいは最近疲れやすいというようなことで悩んでいる方がいらっしゃいましたら、専門の医療施設を受診していただくことをおすすめします。
医科歯科ドットコム編集部まとめ
今回、現役の医師である柴山謙太郎院長に分かりやすくい解説していただきました。
一般的に疲れやすい、歳のせいと思われがちな症状が実はこの心臓弁膜症に繋がっているケースが高いようです。
自分や自分の家族、誰もが罹る可能性のあるポピュラーな病気だけにその症状、検査方法、治療について知っておく必要はあるでしょう。
取材日:2019年7月18日
プロフィール
院長
柴山 謙太郎 医師
1999年3月 私⽴開成高校卒業
2005年3月 千葉大学医学部卒業
2007年3月 千葉大学医学部附属病院初期研修終了
2007年4月 倉敷中央病院循環器内科シニアレジデント
2010年4月 榊原記念病院循環器内科
2012年4月 東京ベイ・浦安市川医療センター循環器内科
2012年10月 Cedars-Sinai Medical Center, Heart Institute, Faculty research fellow(米国カリフォルニア州ロサンゼルス市)
2013年10月 東京ベイ・浦安市川医療センター循環器内科医⻑
2017年4月 東京ベイ・浦安市川医療センター心血管イメージング教育プログラムディレクター
2019年6月 東京心臓血管・内科クリニック開院
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