皮膚科における低侵襲手術について
皮膚科の開業医として、癌研究会有明病院や東京大学医学部附属病院でのご経験を活かし武蔵野エリアで5医院を分院展開されご活躍されている医療法人清優会はなふさ皮膚科の花房火月理事長。このところ患者さん負担の少なさで注目されている皮膚科における低侵襲(ていしんしゅう)手術について聞いてみました。
皮膚科における低侵襲手術について
皮膚科における低侵襲手術というのは、一般的により傷を小さくして、且つ患者さんへの身体の負担が少ないようにして、回復を早くする治療法です。
皮膚科における低侵襲手術というのは、
①皮膚腫瘍をより小さい傷で、より患者さんの負担が少ない形
②入院が必要であったものを外来ですぐにとってしまうもの
といったようなことを指す言葉です。
皮膚科における低侵襲手術のメリット・デメリットについて
低侵襲手術は、傷が小さくなるというのが一番大きなメリットです。
例えば、顔の腫瘍で元々3㎝の傷が必要だったものが、ニキビ跡程度の数ミリの傷跡で治るというようなメリットがあります。入院が必要だと言われている患者さんが、外来手術で可能になり、一週間ほど仕事を休まないといけないと言われた患者さんが翌日から仕事へいけるというようなメリットがあります。
デメリットですが、一つは慣れていない医師が行うと再発のリスクがある。病理学的な検査が充分行えなくなるというようなデメリットがあります。それ故、ある程度熟練した医師が行う必要があるというデメリットがあります。
どのような経緯で皮膚科における低侵襲手術を行うようになったのでしょうか?
そもそも最初は一般外科医になりたくて胃がんなどの治療に携わっていましたが、外科で内視鏡手術であったり、腹腔鏡手術であったり、低侵襲手術が大きく普及している現場というのをみてきました。
その後に皮膚科医になりましたが、皮膚科においては、従来の切って貼って縫うという治療のみが行われていて、傷を小さくして手術をしようという発想が、そもそもなかったので、外科のようにこれから皮膚科も低侵襲で傷が目立たない治療をすることが求められるのではないかと思って、低侵襲手術をはじめるようになりました。
低侵襲手術で開発に苦労された点は?
はじめた当初の時は、どれくらいの大きさの腫瘍まで低侵襲手術が可能なのかとか、どういった腫瘍に対して適用になるのかなど、はっきりとわかっていませんでしたので、色々トライ&エラーがありました。
実際やったけどとりきれなくて普通の手術に移行したなど、そういった点で患者様にご迷惑をおかけしたことがあります。
あと、低侵襲手術を開発した当初は、それこそ日本全国から患者様に来て頂いていましたので、その分批判も頂きまして、ある有名な皮膚科の医師から、「君のやっていることは、間違ったことをやっているから早めになおした方がいいよ」とか、「君のやっていることはズレてる」とお叱りを受けてすごく悩んだ時期もありました。
現実的には例えば大阪から顔に大きな腫瘍があって、近くの病院や大学病院で、顔に3㎝くらいの傷が残るよと言われて、非常に困って私の所に来る患者様が何人もいらっしゃいましたので、「自分がやっていることは正しい」という信念を持ってその治療を極めようと思ってやってきました。
・周りの人の理解を得るということ。
・技術面でどれくらいのことができるかという試行錯誤が大変でした。
皮膚科における低侵襲手術が広まったことによる問題点は?
低侵襲手術がはじまった当初は、確かに技術的に未熟な医師がやることによって、再発したりだとか、かえって傷が汚くなったりとかいう問題点があったのですが、今はむしろ非常に便利で素早くできる方法のため、それをある種のビジネスとしてやりはじめる医師が目立ってきました。
そういった医師が、本来低侵襲手術の適用でもない疾患に対して、低侵襲手術を適用したりとか、必要もない手術をやったりとか、本来病理学的検査が必要なのに検査を行わなかったりといった、新しい問題が起こるようになってきました。それははじめた頃には想像できなかったことですね。
そのため、私も逐一そういった啓蒙活動ではないですけど、みなさんにお伝えする努力をしております。
先生が力を入れたい治療や皮膚科における低侵襲手術について
患者様のメリットが大きいためか、その反応の多さに驚かれている様子の花房火月先生。まだまだ治療できる医院が少ないのがネックですが、患者様にとって魅力的なこの治療法が早く日本のあらゆる病院に広まることを願うばかりです。
編集部まとめ
低侵襲手術というのは、まだはじまったばかりで、現在では粉瘤であるとか、一部の脂肪腫に対して行われているだけなのですが、これがやはりその他の皮膚腫瘍、皮膚線維腫であるとか悪性度の低い皮膚がんとかにも適用が可能なのではないかと思っております。
まだまだこれからの分野なので、引き続き力を入れて手術一例一例、自分のキャリアの全てをかけて行っていきたいと思っています。
取材日:2019年6月14日
プロフィール
花房 火月 医師
2006年4月~2007年3月 癌研究会有明病院(初期研修医)
2007年4月~2008年3月 東京大学医学部附属病院(初期研修医)
2008年4月~2008年6月 東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線レーザー科(専門研修医)
2008年7月~2008年11月 東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線レーザー科(助教)
2008年12月~2010年6月 NTT東日本関東病院皮膚科(医員)
2010年7月~2011年6月 東京厚生年金病院皮膚科(レジデント)
2011年3月 東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線レーザー科後期研修終了
2011年7月~ 三鷹はなふさ皮膚科開設
2014年6月~ 新座はなふさ皮膚科開設
2015年6月~ The Japan Times紙によりアジアの次世代を担うリーダー100人に選出。
2015年7月~ 国分寺駅前はなふさ皮膚科開設
2016年5月~ 久我山はなふさ皮膚科開設
2017年8月~ 志木はなふさ皮膚科開設
2019年4月~ The New York Times紙によりNext-Era Leaders2019に選出。
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