ネットで見る歯科医院の「スウェーデン式の予防システム」って何のこと?
歯医者さんの情報を探していると、「スウェーデン型の歯科予防処置の方法をとっている」とか「スウェーデンの●●大学で研鑽を積んだ」といった記述を見かけたことはありませんか?
「なぜ突然スウェーデン?」と思ってしまうかもしれませんが、スウェーデンは世界でも有名な歯科予防処置先進国なのです。
国を挙げて虫歯・歯周病予防に取り組んでいることで知られ、先進国の中でも特に虫歯・歯周病の人が少ないといわれています。
「なぜスウェーデンは歯科予防処置大国になったのか?」「いったいどのような取組みが行われているのか?」の疑問に答えるために、その歴史を紹介していきます。
世界初!国を挙げて歯科予防処置に取り組んだスウェーデン
スウェーデンが歯科予防大国への道を歩むようになったきっかけは、1970年代にさかのぼります。
今では歯周病治療の最高峰として知られている、スウェーデンのイエテボリ大学が、虫歯や歯周病などの口腔内疾患と、歯科医師・歯科衛生士によるプロの口内ケア・ブラッシングの関連性について大規模な調査を実施しました。
すると、虫歯や歯周病を予防するには、プロのケアと自分でのブラッシングの双方が重要であることがわかったのです。
スウェーデン政府はこの研究結果を受け、世界で初めて「虫歯になったら治療する」のではなく、「口内のプラーク(虫歯菌が作る細菌の塊)を減らすことで虫歯を予防する」という「歯科予防処置」の考え方を国の医療政策として採用します。
国民に定期健診を受けることを促し、「虫歯・歯周病は予防できるものである」との考えを根付かせていきました。
2014年にライオン株式会社が行った国際的な意識調査によると、「歯科予防処置について詳しい内容を知っている・ある程度知っている」と答えた人は、スウェーデンだと59.6%(日本は20.9%)でした。
「実際に歯科予防処置に非常に取り組んでいる・かなり取り組んでいる・やや取り組んでいる」と答えた人はスウェーデンが69.3%(日本が26.2%)となっています。
また、57.1%の人が直近の1年間で1度の検診を受診したとも答えています(日本は19.1%)。
スウェーデンは19歳以下の歯科治療がすべて無料!
次に、スウェーデンで行われている歯科予防処置の取組みを具体的に見ていきましょう。
まず、公的な歯科医院では19歳以下であればすべての歯科診療代は無料です。
これは虫歯・歯周病治療にかぎったことではなく、矯正や定期健診、フッ素の塗布などすべてが対象となります。
20歳以上になると無料にはなりませんが、歯科予防処置治療にも補助金が支払われ、年に一度は定期健診のお知らせが届くなど、歯科医院で定期検診を受けることが奨励されています。
このように、国民全員が定期的にプラークコントロールを受けるとともに、小さいころから歯科予防処置の考え方をしっかり身に付けることで、食べ物やブラッシング習慣にも気を配るようになるようです。
先の調査でも、「オーラルケア(歯や口のケア)で虫歯が防げるか」という質問に「防げる、またはどちらかというと防げると思う」と答えた人の割合はスウェーデンが80.8%(日本では64.9%)。
また、「オーラルケアへの取組み方」でもスウェーデンでは86.5%の人が「いつも念入りに行いたい、またはどちらかといえば念入りに行いたい」と答えています(日本では57.2%)。
なお、定期健診で受けるプロによるクリーニング(PMTC)の効果としては、1978年にスウェーデンで行われた実験で、104人の13~14歳児童に対して3ヵ月ごとのPMTCを2年間実施したところ、家庭での歯ブラシ指導を受けただけの児童のグループに比べ、虫歯になった児童の数は20分の1だったという実験結果が出ています。
スウェーデン式とは「科学的根拠に基づく予防」のこと
日本の歯科医院で「スウェーデン式の予防システムを行っている」とは、このようなスウェーデンの方式を取り入れているという意味で使われています。
より具体的に言えば、「科学的に効果が実証されたプログラムにのっとり、一人ひとりの状態に応じた適切な指導内容で、歯科予防処置を実践している」ということです。
身長やさまざまな病気への抵抗力、遺伝子上の特質が一人ひとり違うように、歯の硬さや酸への耐性、口内の虫歯菌の数、唾液の量なども一人ひとり異なります。
そのため、虫歯・歯周病を予防するためには、その人に合った指導が必要となるのです。
「スウェーデン式予防」といえば、科学的な研究成果にのっとった上で、歯科医院でのプロのクリーニング(PMTC)やブラッシング指導を織り交ぜ、ときには生活習慣にも言及しながら、それぞれの患者に合わせたオーダーメイドの予防治療を行っていますという目印になるわけです。
どの歯科医院が歯科予防処置に力を入れているのかは、パッと見ただけではよくわからないこともあります。
しかし、「スウェーデン式」という言葉は、ひとつの目安になりますので、歯科医院を選ぶ際の参考にするといいでしょう。
<参考>
日本・アメリカ・スウェーデン 3カ国のオーラルケア意識調査|ライオン
「歯科医に行く前に読む 決定版歯の本」釣部人裕著(ダイナミックセラーズ出版)
医科歯科ドットコム編集部コメント
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監修日:2020年1月17日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
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