PCの仕事の方は要注意!歯痛、顎関節症の原因TCH(歯列接触癖)って何?
「無くて七癖有って四十八癖」ということわざがあるように、人にはいろいろなクセがあります。
爪を噛んだり、貧乏ゆすりをしたり、前髪を触ったり、挙げれば切りがありません。
そんなクセですが、実は近年発見された「新種のクセ」があるのをご存じでしょうか。
新しいクセの名前は「TCH(歯列接触癖)」といって、その名のとおり、歯を接触し続けてしまうというものです。
TCHが慢性化してしまうと体にさまざまな悪影響が生じることから、最近、歯科医のあいだでも注目が高まっています。
TCH(歯列接触癖)とは?
まずTCHについて解説する前に、そのままの状態でいったんストップしてください。
お家でネットを楽しんでいる方や、電車のなかでスマホやタブレットを触っている方もそのままの姿勢で止まって、口の中に意識を向けてみましょう。もしもアナタが食事中でもないのに、上の歯と下の歯がしっかりと合わさっている場合、TCHの可能性があります。
TCHとは、Tooth Contacting Habitの略で「歯列接触癖」と訳されます。
その名のとおり、歯を接触させてしまうクセです。
「歯って普通は接触しているものじゃないの?」と思われる方も多いかもしれませんが、歯は基本的に食事や会話などの際に瞬間的に合わさるだけで、歯と歯が接触している時間は1日のうちに20分以下といわれています。
ためしに全身から力を抜いて、リラックスしてみてください。
顎が自然と下がって、上下の歯に少し隙間が生じると思います。
それが正常な状態です。「そういわれると結構噛みしめている時間が多いかも」と思った方は、TCHの疑いがあります。
TCHがあるとどうなる?
「指しゃぶりが直らない子どもは出っ歯になりやすい」と言われているように、なかには体に悪影響を与えるクセもあります。
TCHも「体に悪影響を与えるクセ」のひとつで、慢性化している場合、お口のトラブルはもちろん、全身に異常が生じることがあります。
歯痛
顔に手を当てながら咀嚼をしてみると、頬や顎、こめかみなど広範囲にわたって筋肉が動いていることが分かります。
常に歯をかみ合わせるということは、これらの筋肉を緊張させている状態なのです。
正座をし続けていると足がしびれてピリピリと痛むように、歯に持続的に力が加わることで、余分な応力がかかり、虫歯でもないのに歯が痛む「知覚過敏症状」が起こります。痛み自体はしばらくすれば収まりますが、根本的に解決するにはTCHを直さなければなりません。
顎関節症
顎関節症とは、顎や歯に痛みを感じたり、口を大きく開けられなくなったり、咀嚼するときに顎関節が鳴ったりする症状のことです。
TCHの傾向があると顎関節に大きな負担がかかるため、これらの症状が出やすくなります。
インターネットではかみ合わせが原因と書かれていることもありますが、歯並びが悪くても顎関節症にならない人もいれば、逆に歯並びがいいのに発症する人もいます。あくまで「歯並びはひとつの要因」に過ぎません。
顎関節症が見られる場合、現在は歯並びを改善するよりも先に、まずはTCHを直すことが重要と考えられています。
首や肩のコリ
慢性的なTCHとなっている場合、顎周辺だけではなく首や肩にも緊張が及び、コリの原因となります。
整体や鍼灸などで体をほぐしてもらったとしても、コリがなかなか解消されないという場合は、TCHが原因である可能性があります。このほかにも、TCHは「歯並びの変化」や「歯周病の進行」にも繋がることがわかっています。
ただ歯をかみ合わせるだけのクセ、と考えていると危険です。
自覚している方はもちろん、今TCHであると気付いた方も、なるべく早いうちに直す必要があります。
TCHはどうやって直すの?
TCHは病気ではなく「クセ」ですから、特別な手術や薬などは必要ありません。
この治療で最も重要なのは「気付く」ことです。意識的または無意識的に噛みしめているときに、力を抜いて、ただ歯と歯を離すだけでいいのです。
医学的な知識は必要ありません。これを習慣づけることでTCHを改善することができます。
噛みしめに気付くリハビリのひとつに「目立つところに貼り紙をする」方法があります。
例えばパソコンやドア、冷蔵庫など、自分がよく見るところに「歯を離す」などと書いたメモを貼るだけです。
原始的ですが、非常に有効な方法といえます。お金がかからないのもいいですね。
TCHは歯科医院でチェックできます
食事や会話の他に、歯をかみ合わせるシチュエーションとして「集中しているとき」が挙げられます。
特にパソコン仕事をしている人は知らず知らずのうちに歯を噛みしめている人が多く、調べてみたらTCHだった、というケースも珍しくないようです。
「虫歯を治療したばかりなのに歯が痛い」「食事をするときに顎が痛い」などの症状があるときは、歯科医院で一度検診を受けてみてください。
口内の状況をみればTCHなのかどうかをチェックしてもらえます。
歯列矯正や咬合治療を検討するのは、そのあとでも遅くありません。
医科歯科ドットコム編集部コメント
クセの治療とはいえど、一度お医者さんに相談すると安心できるかもしれませんね。心当たりのある方は医科歯科.comからクリニックをご予約ください。
監修日:2019年11月24日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
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