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2020-03-28 掲載

【医師が解説】「遺伝子解析と精密医療」副作用が出にくい分子標的薬の開発が進んでいる

 
医学とテクノロジーの進歩により、不治の病と言われた「がん治療」は変わりつつあります。2020年2月15日(土)、江戸川病院主催の講演会が開かれました。
 
本講演では、江戸川病院腫瘍血液内科医長の後藤 宏顕(ごとう ひろあき)医師が登壇し、「次世代がん治療」について解説します。本パートでは、遺伝子解析によって開発が進んでいるゲノム医療と分子標的薬について取り上げています。
 
後藤医師は、日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医、そして日本緩和医療学会認定 緩和医療専門医のふたつの専門医資格を持ち、がんに伴う身体と心のつらさに向き合っています。

後藤 宏顕

全ての細胞に影響を与える抗がん剤と、ピンポイントで作用する分子標的薬

後藤 宏顕 医師:変異した遺伝子のせいで、がん細胞は増殖します。つまり、変異した遺伝子をやっつけて壊せば、がんを小さくすることができます。
 
遺伝子ががんを発生させるのであれば、そもそも遺伝子をやっつけて壊す、それが本講演でお話したい医療です。
 
そこで登場するのが、分子標的薬というお薬です。要するにがんをピンポイントでやっつけるお薬です。
 
これは10年以上前から登場していて、劇的にそれぞれのがんの治療を変えているお薬のグループです。

抗がん剤と分子標的薬

副作用あるがメリットもある抗がん剤

スクリーン左側の図、従来の抗がん剤は、全ての細胞に影響を与えてしまいます。がん細胞にも効果を発揮しますが、正常な細胞にも影響を与えてしまうことが副作用です。
 
例えば、細胞分裂が盛んなところで起きる症状として、脱毛や、骨髄(こつずい)で白血球が減ってしまう、といったことが起きてしまいます。
 
これらがなぜ起きるかと言うと、この抗がん剤は全ての細胞に影響してしまうからです。それでも、がん細胞に対してやっつける効果は、しっかりあります。
 
抗がん剤は、様々な臨床試験の組まれた中で勝ち残り、ガイドラインに載っている治療です。もちろん副作用もありますが、それ以上にメリットがあるから今でも使用されています。
 
私もこれまでたくさん処方してきました。抗がん剤があったから助かったという患者さんは、たくさんいらっしゃいます。ですから、この従来の抗がん剤を否定するつもりは全くありません。
 
ただ、副作用とのバランスが大切で、副作用をどう回避するか、それはまさしく専門性の高い分野でもあります。

副作用が出にくい分子標的薬

スクリーン右側の図、分子標的薬は、がん細胞に特徴的な部分を攻撃します。分子標的薬は、副作用が出にくいです。しかし、副作用がないわけではないです。
 
正常な細胞の中にも同じようなものが発現していることもあり、副作用がでることもあります。従来の抗がん剤よりもかなり副作用が少ないので、副作用が少ないながらよく効くというメリットがあります。
 

ゲノム治療は、実は既に始まっている

遺伝子を調べて、分子標的薬を投与するゲノム治療、実は肺がんの治療で既に始まっています。
 
EGFR(イージーエフアール)、ALK(アルク)、ROS1(ロスワン)、BRAF(ビーラフ)、PDL1(ピーディーエルワン)、肺がんの方はこういった遺伝子を全例調べています。
 
そして、もしそれらに変化がある場合、我々は変異と言いますが、そういった変化があれば、分子標的薬を投与します。
 
例えば、PDL1(ピーディーエルワン)が発現している場合は、抗がん剤と組み合わせたり、免疫チェックポイント阻害薬ひとつでも、よく効くということが分かっています。ですから、肺がんの場合は治療の前に遺伝子を調べます。

肺がんのゲノム治療

治療まで、時間がかかるという問題点も

ただ、問題点もあります。今までは、ひとつひとつの遺伝子を確認していました。まず生検して、何がんか確認をします。これに一週間くらいかかります。
 
そこから、EGFR(イージーエフアール)の変異があるかどうかを確認します。これが二週間くらいかかります。
 
その結果が出てから、ALK(アルク)など他のものを調べます。ですから、一通り調べ上げて「この治療があなたにとってベストです」という決着がつくまで、一か月以上かかります。
 
ただでさえ、がんと診断されて早く治療したいのに、生検までにも時間がかかりますし、そこから治療が決まるまで一か月近くかかるわけです。
 
とてもじゃないがこんなに待てないですよね。実際に「なんでこんなに時間がかかるんだよ!」というふうに言われることも、たくさんあります。
 
進歩していることはとてもいいですが、結果的に調べることが増えてしまった影響で、治療までとても時間がかかっています。

テクノロジーの進歩により、一気に遺伝子解析ができるように

遺伝子パネル検査を利用して、色々な遺伝子を一気に調べられるようになってきました。遺伝子パネル検査によって、治療までの期間がかなり短縮化されると思います。
 
このように、肺がんでは遺伝子医療が既に始まっています。なぜこのようなことができるようになったのか、それはテクノロジーの進歩です。
 
ヒト全遺伝子解析は、2001年では100億円以上かかりました。いわゆる国家プロジェクトで、これはニュースにもなりました。それが、2015年には50万円程度、だいぶ安くなり性能も上がっています。
 
こういったテクノロジーの進歩が、より簡便に早く検査することに繋がっています。

民間の遺伝子解析検査とは?

ちなみに、民間の遺伝子解析検査というものもあります。しかしこれは、がんの遺伝子検査とは違います。
 
これは、がんや生活習慣病のリスク、皮ふの性質(日焼けしやすいかしにくいか)、速筋と遅筋のどちらが進歩しやすいか、要するに短距離走と長距離走のどちらが得意かを調べられます。
 
あとは、脳の物事を解析する速さや質、そして自分のルーツを調べることができます。
 
我々人間のミトコンドリアの中にあるDNAは、女性からしか遺伝しないので、ひたすらお母さんの方の遺伝子をずっと追っていくと、人類は9人の母親から生まれたということが分かっています。
 
例えばそういうルーツ、自分はどこから来たのかということが2~3万円くらいで分かります。キャンペーンがあると、1万円弱くらいでやっていることもあります。

民間の遺伝子解析検査

私も興味があってスクリーン画像右側の方(GeneLife Genesis2.0)をやってみたのですが、割としっかりした検査で、たくさんの遺伝子を解析していることが分かりました。がんリスクで何が高リスクか、なども分かります。
 
ただこれは、がん医療に特化した遺伝子解析ではないので、それは間違えないようにしてほしいと思います。
 

一度に100種類以上の遺伝子を解析する「がん遺伝子パネル検査」が保険適用に

がん遺伝子パネル検査は、会社によって違いますが、一度に100種類以上の遺伝子を解析しています。

がん遺伝子パネル検査

保険で認められているのは、OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム(シスメックス株式会社)と、FoundationOne® CDxがんゲノムプロファイル(中外製薬株式会社/ロシュ社)です。
 
2019年6月から保険適用になりました。ようやく日本も遺伝子解析の時代に入ってきたなと、喜ばしい気持ちです。

遺伝子解析は、精密医療に役立つ

なぜこんなに進んだか、それはアメリカのバラク・オバマ前大統領が関係しています。一般教書演説で、「Precision Medicine Initiative」ということを話されていました。
 
Precision Medicineとは、精密医療です。精密にその人に合った治療を行う、そういうものを目指しますということです。

これをオバマ前大統領は、国を挙げてがんゲノム医療に力を注ぎました。その結果、遺伝子解析の時代になってきました。

アメリカと日本は、検査対象が異なる

しかし、アメリカと日本はかなり違います。アメリカではStageⅢ、Ⅳの方全員が遺伝子解析検査の対象になっています。

日本とアメリカの違い

StageⅠ、Ⅱは比較的すぐに手術ができることが多いですが、StageⅢ以上になると手術が難しい場合があります。
 
つまり、アメリカではまず薬物治療によってがん縮小を狙える可能性もあるため、StageⅢ、Ⅳから全員が検査可能になっています。
 
日本の場合は、標準治療が定まっていないもの、原発不明のがんが対象です。要は親玉となる原発素が見当たらないがんです。
 
例えば、胃にがんがあった場合は胃がんと診断され、そこから転移する可能性がありますよね。しかし、先に転移したがんが見つかって、肺に影があり、どこから来たのか、調べても分からないのが原発不明がんです。
 
かかる患者さんは、食道がんの方より多いと言われているため、決して珍しくないがんです。
 
あとは希少がんや、肉腫などです。センター病院へ行くとサルコーマ(肉腫)センターなど、希少がんを集中して治療を行なう場所が増えてきました。
 
こういったがんは患者さんが非常に少ないので、標準的な治療の開発が難しいです。だからこそ、このがん遺伝子パネル検査が保険で認められたことは、とてもいいことだと思います。
 
これによって、もしかしたら遺伝子変異が見つかり、そこにいい治療が組み込める可能性があります。
 
もうひとつ、希少ながんではない、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんの方、そういう方はがん遺伝子パネル検査を受けられないかというと、そうではないです。
 
受けられるのですが、標準治療不応のがんというものがあります。標準治療不応のがんとは、ガイドライン推奨の治療をやりつくしたということです。ガンドラインは、毎年変わっていて最新の治療を網羅しています。
 
そういった治療をひと通りやって終わった方、あるいはそろそろ終わるかも知れないという方が、初めて保険で認められるようになりました。
 
今まで認められていなかったことを考えると、チャンスは出てきたと思います。ただ、2つも3つも4つも治療をしてきた状態で、もう治療がないという段階だと思います。その時点で体力はあるのか?
 
そして、検査を受けて結果が分かるまでに1か月~2か月かかります。その間、何も治療がないです。それで本当に間に合うのか?といった問題があります。これは日本の課題です。
 
みんながみんなやってしまうと、お金もかかります。財政面の影響もあり、これがいまの日本の現状です。これは解決していくしかないと思います。

遺伝子変異が見つかっても、約90%は治療できない

そして、もし遺伝子変異が見つかっても、それが治療に組み込めるのは約10%です。つまり、折角待って心待ちにしていた検査を受け、いい治療薬が見つかって欲しいと願っても、多くの方は治療ができないのです。
 
例えば、もし見合う薬が見つかったとしても、その病院で臨床試験をしていないと難しいです。どうなるかというと、自費になります。自費だとひと月100万くらいかかります。
 
しかも効く可能性がありますから、使用すればするほど治療期間は長くなります。そういうジレンマがあります。
がんゲノム医療中核拠点病院
資料:厚生労働省,がん・疾病対策課「がんゲノム医療中核拠点病院等の指定について」
 
検査を受けられる病院は、日本全国に中心的な病院が11か所あります。都内では、慶応大学・東京大学・国立がんセンター中央病院、こちらで検査をしています。
 
もし、検査を受けたい場合は、希少がんや標準治療が終わってしまう方なら保険適用で受けられます。
 
そういった方で、組織(手術標本や生検材料)がある方、もしくは生検せずに画像判断でがん治療を行う場合もありますので、そういう場合は組織が必要ですので、生検をしなければいけません。
 
また、5年前10年前の手術標本では、組織が傷んでいる可能性もありますので、新たにとり直す必要が出てくる可能性もあります。
 
あとは、主治医に紹介状を書いていただく必要があります。そこで初めて、都内であればがんセンター中央病院、東京大学、慶応大学などを受診して、そこから検査をして結果がでるのに1か月ほど、日本ではそういう流れになっています。

アメリカのように、早い段階で検査できるようになることが理想

ただこれは、今までなかったことを考えると、こういった手段が出てきたということはとても重要に思います。
 
課題はよく分かっていて、アメリカのようにもっと前の段階から検査を進められれば、標準治療以上の効果を期待できる分子標的薬で治療できる可能性があります。
 
分子標的薬も毎年のように増えています。どんどん開発が進んでいて、我々が知識のアップデートをするのが大変なくらい、新しいお薬が増え続けています。
 
そして、せっかく見つかった治療、新しいお薬もできているのに、お金が続かないと意味がないですよね。今後、国としては、治療費の工夫も進めていくべきだと思います。
 
繰り返しになりますが、ゲノム解析からのがん治療は、今後急速に発展していきます。皆様もニュースなど、アンテナを張って情報収集をしてください。
 
そして、主治医の先生にも、「こういう検査に興味があります。」「こういう検査はどうですか?」と聞いてみるのはいいかも知れません。
 

医科歯科ドットコム編集部コメント

この日、小岩アーバンプラザの会場には、300人近い聴講者で大盛況でした。新しい医療情報への関心の高さが伺えます。
 
副作用が出にくい分子標的薬の開発が進んでいること、そして遺伝子解析が一気に調べられるようになり、ゲノム医療は進んでいるとお話しされていました。
 
まだまだ課題はありますが、がん治療は今後急速に発展し、近い将来多くの命が助かる時代になると期待できそうです。
 

<講演概要>
テーマ:「次世代がん治療について」
開催日:2020年2月15日(土)
主催:江戸川病院地域連携室
後援:江戸川区ほか
 
<関連記事>
・【医師が解説】「人類の歴史は、病気との闘いの歴史」医学とテクノロジーの密接な関係
 

講師プロフィール

江戸川病院
腫瘍血液内科医長
後藤 宏顕(ごとう ひろあき)医師
 
<資格>
日本内科学会認定内科医
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医・指導医
日本緩和医療学会 緩和医療専門医
PEACE PROJECT 緩和ケア講習会・指導者講習会修了
院内緩和ケアチームリーダー
 
<略歴>
2004/3 千葉大学医学部卒業
2004/4 船橋市立医療センター 初期臨床研修医
2006/4 がん研究会有明病院 消化器外科レジデント
2008/4 がん研究会有明病院 化学療法科レジデント
(2008/1-2008/7 がん研究会有明病院 緩和ケア科研修)
2010/4 江戸川病院 腫瘍血液内科
(2011/1-2011/3 聖路加国際病院 緩和ケア科研修)
 
<専門分野>
がん薬物療法(抗がん剤治療)、がん緩和ケア(苦痛緩和)
 
医科医師医療後藤 宏顕 医師講演会医療情報次世代がん治療についてがんがん治療
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