歯科医師が警告!大好きな恋人やパートナーから、実は歯周病菌をもらっている?
キスで虫歯がうつるという話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
赤ちゃんが親から菌の感染をしてしまうのはよく言われる話で、実際に生後6カ月の乳歯が生え始めた頃から、既に虫歯菌や歯周病の感染リスクは始まっています。
赤ちゃんだけでなく大人になってからも、感染のリスクがある歯周病菌。
大好きな恋人やパートナーから、実は歯周病菌をもらっていたかもしれないなんて、ショックですよね…。
どんな経緯でうつるのか、また自分でできる予防対策も早速見てみましょう。
キスで感染するのはどんな細菌?
パートナーが持っている菌は、キスにより自分にうつってしまいます。
多くの場合は菌の免疫などで排除されるため神経質になる必要は無いのですが、以下の菌が感染してしまう可能性があります。
・歯周病菌
・虫歯菌
歯周病とは歯垢(プラーク)が原因となり歯茎の炎症がひどくなっていく症状で、歯周病の原因となる菌を総称して呼んでいます。歯周病菌にはP.g.菌、T.f.菌、Td.菌、P.i菌、A.a.菌などが含まれます。ちょっと馴染みが無いですね。
これらの菌は、お手入れをせずに歯に付着してしまった歯垢の中にたくさん含まれているんです。
なかでもミュータンス菌は酸を作り出し、歯の成分であるカルシウムやリンを溶かして歯を脆くし、虫歯の原因となる菌です。これは歯垢(プラーク)となって歯の表面に付着します。またラクトバチラス菌は、炭水化物や砂糖などの甘いものに含まれています。
乳酸菌飲料として「体にいい」イメージが強いラクトバチラス菌ですが、実はミュータンス菌と同様に歯を溶かしてしまう作用もあるのです。
どのように感染する?
一緒に食事したときに同じスプーンを使っただけでも細菌は感染します。間接的な接触でもリスクはあるのです。
パートナーとのキスであれば、ダイレクトに相手が保有している細菌を貰ってしまいますね。そして気を付けたいのが、恋人やパートナーが喫煙者の場合です。
喫煙は免疫力を低下させ、歯周病などの病気にかかりやすくなります。非喫煙者との比較では、喫煙者側の感染リスクが3倍以上に跳ね上がるとも言われています。つまり、喫煙者である恋人があなたの細菌に感染してしまう可能性が高いのです。
感染を防ぐにはどうしたらいいのか?
今あるお口の健康を守るためにも、定期的なメインテナンスは大切です!
自分でできることとプロの力を借りて行うこと、2つをうまく組み合わせてみましょう。
自分でできること
・食後の歯磨きを必ず行う
・フロスや歯間ブラシを使って歯間の汚れを落とす
・就寝前にしっかり歯磨きをし、仕上げに殺菌作用のあるうがい薬ですすぐ
・パートナーにも口腔内を清潔に保つことをお願いする
歯科医院でできること
・定期的な歯科検診を受ける
・歯のクリーニングを行ってもらう
・今ある虫歯をしっかりと治す
・正しいブラッシングの指導をしてもらう
さっそく対策をしよう!
健康な口元を維持していつまでも自分の歯で美味しくご飯を楽しめる自分でいられるように、歯のメインテナンス・ポイントを意識して、毎日の生活を送りましょう。
日々のメインテナンスの積み重ねが、きっと未来の自分の健康維持に役立ちます。
<参考>
Aggregatibacter actinomycetemcomitans(A.a菌)
小さな、球形、非運動性、通性嫌気性(増殖するのに酸素を必要としないが、酸素があればそれなりに利用して生存できる菌)、グラム陰性の両端の丸い桿菌。
グラム陰性菌とは、大雑把に言ってヒトに対しては、病原性が高く、内毒素をもつ菌だと言えます。(細菌の細胞壁の構成の違いによるものです。)
若年性歯周炎の病巣からよく検出される。
Porpyromonas ginngivaris(P.g菌)
黒色色素産出性バクテロイデス属に入り、偏性嫌気性(増殖するのに酸素を必要としないことと、大気中の酸素にさらされると死滅してしまう菌)、グラム陰性、非運動性桿菌です。
進行した成人性歯周炎、広汎性歯周炎から検出されます。歯肉の炎症の程度と、歯肉縁下プラークに占めるこの菌の比率との間に相関関係があることがわかっています。
歯周炎に罹患していない部位からは、ほとんど検出されません。
Prevoterlla intermedia(P.i菌)
前述のP.g菌と同じ属に入り、P.g菌とともに存在することが多い菌です。
歯肉炎、健康な歯肉を持つ人のおよそ半数に存在しています。
Tannerella forsythensis(T.f菌)
グラム陰性、非運動性、初期には球形を呈する嫌気性桿菌です。
この菌は、歯周組織の破壊の強い部位で、高率に検出されます。深在性で活動性の歯周炎の病巣でよく見られます。
難治性歯周炎の指標となる菌です。
Treponema dennticola(T.d菌)
ラセン菌(スピロヘータ)、グラム陰性、嫌気性菌です。
歯周炎の歯肉縁下プラークからよく検出されています。この菌は、歯周炎の活動性、重症度と関連しているとの報告があります。また、この菌が正常な免疫を抑制してしまい、歯周炎の治癒を妨害しているなどとの報告があります。また、治療された患者で、スピロヘータの割合が高いと再発率が高いとされています。
Fusobacterium nucleatum(F.n菌)
線状の長いグラム陰性嫌気性菌です。プラークの中では、体積的には大きな比率を占めます。ヒトの口腔内に常在し、紡錘形を呈しています。
この菌は、プラークの形成の中心菌で、その他の菌とともに凝集することで、バイオフィルムをいうぬめりの状態を形成し、歯の表面に付着するようになります。
また、糖分解能がなく、酪酸を発生し、悪臭を発生させます。
医科歯科ドットコム編集部コメント
愛する人とのキスを我慢するよりも、歯医者への通院を我慢するほうがよっぽど楽ではありませんか?
医科歯科.comでお近くの歯医者さんを探しましょう。大切な時間を守るために。
監修日:2019年12月10日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医