矯正歯科が保険適用?対象の病気や疾患とは

矯正歯科の治療が保険適用にならないということは、広く知られている事実でしょう。自費になってしまうため費用の負担が大きく、最初から治療を諦めてしまう方も多いかと思います。ですが、保険で矯正治療がおこなえるという話を聞いたことはありませんか?もし、保険適用で治療ができれば費用の負担が小さくなるかも知れません。どのような場合に保険適用になるか歯科医師に伺いました。

目次

  1. 矯正歯科の治療が保険適用になる場合とは?
  2. 矯正歯科における保険適用となる疾患の一覧
  3. お口は大切な身体の器官。整えることはあらゆる予防に繋がる

1.矯正歯科の治療が保険適用になる場合とは?

どのような場合に保険適用で矯正治療ができるのか、歯科医師に下記のような質問をしました。

Q:矯正で保険適用される場合があると聞きました。どのような場合に保険適用になりますか。また、適用されない治療とはどのように違いますか。
A:病気が原因であれば、保険が適用されます。最も多いのが、「顎変形症」という病気です。顎の形が通常とは違うために、歯が正常に並ばないという状態であれば、病気の治療目的ですので保険での矯正が可能です。この場合、顎の形を整えるために手術が必須となります。
病気の治療ではなく、見た目の改善を目的とした矯正は全て自由診療となります。
A:一般の方の矯正で保険適応となる場合はありません。
唇顎口蓋裂などの先天的な病気のみ矯正が保険適応となります。
このような患者様は子供の頃から矯正をしていますので、大人になってから矯正を始めようという患者様で保険適応になる事は殆どありません。

歯科医師からの回答をうけて、保険適用になる場合の要点を下記にまとめました。

1.先天的な病気が原因であること
2.病気の治療が目的であること
3.外科手術を要する症状であること

上記のような場合が保険適用となり、見た目の改善を目的とした一般的な矯正治療については、保険適用にならないようです。

この質問の中に、気になる回答がありましたのでご紹介します。

A:生まれつき顎裂、口蓋裂などの奇形などを治療している方などの矯正治療は保険適応となりますが、数少ない指定された病院でしか保険適応の矯正治療は行えません。該当する方は非常に少数で、一般的な矯正治療はすべて保険適応ではありません。

保険診療として適用された場合でも、限られた病院でしか対応ができないようです。詳しくは、厚生労働省の資料をご紹介します。

2.矯正歯科における保険適用となる疾患の一覧

回答の中に具体的な症状や病名もありましたが、厚生労働省の保険診療に関する資料によれば、保険適用の対象となる病気や疾患について下記のように記載されています。

歯科矯正は、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において行う別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常、3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る 。)又は別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において行う顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る。)の手術の前後における療養に限り保険診療の対象とする。

*別に厚生労働大臣が定める疾患
(1)唇顎口蓋裂
(2)ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)
(3)鎖骨頭蓋骨異形症
(4)トリーチャ・コリンズ症候群
(5)ピエール・ロバン症候群
(6)ダウン症候群
(7)ラッセル・シルバー症候群
(8)ターナー症候群
(9)ベックウィズ・ウイーデマン症候群
(10)顔面半側萎縮症
(11)先天性ミオパチー
(12)筋ジストロフィー
(13)脊髄性筋萎縮症
(14)顔面半側肥大症
(15)エリス・ヴァンクレベルド症候群
(16)軟骨形成不全症
(17)外胚葉異形成症
(18)神経線維腫症
(19)基底細胞母斑症候群
(20)ヌーナン症候群
(21)マルファン症候群
(22)プラダー・ウィリー症候群
(23)顔面裂
(24)大理石骨病
(25)色素失調症
(26)口腔・顔面・指趾症候群
(27)メビウス症候群
(28)歌舞伎症候群
(29)クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
(30)ウイリアムズ症候群
(31)ビンダー症候群
(32)スティックラー症候群
(33)小舌症
(34)頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群、尖頭合指症を含む。)
(35)骨形成不全症
(36)フリーマン・シェルドン症候群
(37)ルビンスタイン・ティビ症候群
(38)染色体欠失症候群
(39)ラーセン症候群
(40)濃化異骨症
(41)6歯以上の先天性部分(性)無歯症
(42)CHARGE症候群
(43)マーシャル症候群
(44)成長ホルモン分泌不全性低身長症
(45)ポリエックス症候群
(46)リング18症候群
(47)リンパ管腫
(48)全前脳胞症
(49)クラインフェルター症候群
(50)偽性低アルドステロン症
(51)ソトス症候群
(52)グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
(53)その他顎・口腔の先天異常
※その他顎・口腔の先天異常とは、顎・口腔の奇形、変形を伴う先天性疾患であり、当該疾患に起因する咬合異常について、歯科矯正の必要性が認められる場合に、その都度当局に内議の上、歯科矯正の対象とすることができる。

3.お口は大切な身体の器官。整えることはあらゆる予防に繋がる

病気の治療ではない一般的な見た目を改善することが目的の矯正治療では、保険適用がされないということが分かりました。顎変形症や唇顎口蓋裂などの先天的な病気などにより、外科手術を要する治療が必要な場合のみ保険適用されるということです。

そして、保険診療として対象になる病気や疾患が意外に多いことにも驚きました。それだけ、お口という器官は身体において大切な器官であると考えられます。症状により異なりますが手術を要する治療が必要ですから、保険診療だとしても費用負担は大きいかも知れません。

現在の保険診療のルールでは、一般的な矯正治療では保険適用にはならないというのが結論です。しかし、矯正治療は将来的に虫歯や歯周病の予防になるとされています。身体の入り口であるお口を整えることは、全身のあらゆる病気を予防することにも繋がるのではないでしょうか。保険診療のルールが変わり保険適用の範囲がさらに増え、さらに多くの歯医者さんで治療ができる日が来ることを願っています。

寒河江 英子(Eiko Sagae)