【医師が解説】「効率的ながん検診は、ズバリこれ!」自分の身体を過信せず検診は必要

 
「がんを治す時代から予防する時代へ」2人に1人ががんになると言われていますが、がんを予防できればその数字は変わっていくはずです。2020年2月15日(土)、江戸川病院主催の講演会が開かれました。
 
本講演では、江戸川病院腫瘍血液内科副部長の明星 智洋(みょうじょう ともひろ)医師が登壇し、「正しいがん検診の受け方」について解説します。本パートでは、効率的ながん検診とは何かについて取り上げています。
 
明星医師は、がん診療の最前線で現役の医師として活躍しており、日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医、そして日本血液学会認定 血液専門医でもあります。
 

男性に多い前立腺がんは簡単に検査できる

明星 智洋 医師:男性特有のがんで前立腺がんというものがあります。前立腺がんも年々増えていて、非常に多いがんです。前立腺がんの検査は簡単にできます。
 
腫瘍マーカーのPSAという検査方法があり、こちらは採血するだけですぐに分かります。江戸川病院は院内検査なので、採血をして1時間で結果が分かります。
 
前立腺がんがあればPSAが上がります。PSAが上がっていなければ、前立腺がんの可能性は極めて低いと言えます。血を採るだけという非常に簡単で、そして早期に発見できる検査のひとつです。

 

自分はがんにならないと過信している?

これだけがんという病気は、どのような検査をすれば見つけやすいかが分かっているのに、がん検診の受診率は20~30%くらいの人しか受けていません。
 

 
厚生労働省による国民生活基礎調査(2007年)でがん受診率というものが出ていますが、一番多いもので胃がんは約30%、大腸がんも約27%、肺がん、乳がん、子宮がんも約20%しか、がん検診を受けていません。
 
約8割の人は「私は健康だから、がんにはなりません!」と、スルーしているのかも知れません。がんは2人に1人がなる確率の高いものですから、他人事ではないです。自分の身体を過信しないことが大事です。

 

腫瘍マーカー検査はあまり意味がない?

経済協力開発機構(OECD)2013年の調査で、自分は健康じゃないと感じている人が日本では多いのにも関わらず、がん検診を受けていません。矛盾していますよね。
 
他にもがん検診として、腫瘍マーカー検査というものがあります。前立腺がんの腫瘍マーカー検査が有用だということをお伝えしましたが、その他にもたくさんあり何十種類もあります。
 
腫瘍マーカー検査を人間ドックや自費で受けるとすると、1回3,000円~5,000円くらいします。1項目が、ですよ。10種類の項目でやったら、30,000円~50,000円してしまいます。
 
腫瘍マーカー検査は価格が結構高いので、あまりおすすめできません。さらに、腫瘍マーカーが上がっていてもがんでないこともありますし、腫瘍マーカーが正常でもがんの場合があります。
 
ですから、むやみやたらにやっても意味がありません。大腸がんだと診断されて、その経過を追っていく為には有益かも知れませんが、高いお金を払ってまでやる意味はないと思います。

 

PET検査は全身を一発で検査できる

PET検査というものを聞いたことはありますか?「FDG(フルオロデオキシグルコース)」という物質を注射して、全身に行き渡らせて、数時間後にレントゲンを撮ると、悪いがんが赤く光るというものです。
 

 
PET検査は全身を1回の検査で分かるので、非常に有益な検査だと言われています。検査自体は自費でやると1回100,000円くらいします。
 
全身を検査してくれるPET検査ですが、果たして万能なのでしょうか?実は、PET検査にもデメリットがあり、検出できない部位もあります。赤く光るところががんだと説明しましたが、脳も全体的に赤く光ります。
 
この赤く光っているところががんで脳腫瘍かというと、そうではありません。「FDG(フルオロデオキシグルコース)」という物質は、ブドウ糖などの糖分をたくさん取り込む臓器が赤く光ります。
 
例えば、脳が活性化して頭を使っているときというのは、糖分を使うので赤く光ります。心臓もしっかり動いているときは糖分を使うので赤く光ります。膀胱も造影剤が溜まるので赤く光ります。
 
ですから、脳腫瘍や膀胱がんなどはPET検査では発見できません。しかも、1cm以下の小さいがんはPET検査では光りませんので、早期発見がなかなか難しいです。
 
さらに、糖尿病がある人は全身が糖まみれになっていることが多いですから、PET検査をやると全身が赤く光ります。従って、がんを発見できません。PET検査にはそういったデメリットがあり、制約があります。
 
全身を1回の検査で撮れるというメリットがありますので、何かで引っ掛かったときに二次検査で使うならいいと思います。けれども、人間ドックなどで特に症状がないのに使うというのには、価格が高いと思います。
 
やってもいいですが、自費で約100,000円かかりますので、私でしたら美味しいものを食べたいですね。PET検査は、うまく使い分けることが必要です。

 

効率的ながん検診とは?

つまり、効率的ながん検診は何でしょうか?胸部レントゲン検査や腹部エコー(超音波)検査はもう必要ありません。肺もお腹の中も分かる低被ばくの「全身CT」をやれば、ほとんどのことが分かります。
 
それで分からない場所、胃、大腸に関しては、カメラで見るしかありません。そして、男性に関しては前立腺の腫瘍マーカー検査が非常に有益であろうと思います。
 
女性に関しては、特有の乳がん検診、子宮頸がん検診などがありますので、別途受けていただいた方が良いと思います。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

この日、小岩アーバンプラザの会場には、300人近い聴講者で大盛況でした。誰もが、できれば健康で長生きしたいと思うようで、健康情報への関心の高さが伺えます。
 
2人に1人ががんになるかも知れないわけですから、自分の身体を過信しないで効率的にがん検診を受けて、がんの芽を摘み予防に取り組みたいですね。
 

<講演概要>
テーマ:「正しいがん検診の受け方」
開催日:2020年2月15日(土)
主催:江戸川病院地域連携室
後援:江戸川区ほか
 
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講師プロフィール

江戸川病院
腫瘍血液内科副部長
明星 智洋(みょうじょう ともひろ)医師
 
<資格>
日本内科学会認定内科認定医
日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、指導医
日本血液学会認定血液専門医、指導医
日本化学療法学会認定抗菌化学療法認定医、指導医
日本癌治療学会認定がん治療認定医
インフェクションコントロールドクター(ICD)
Total nutritional therapy修了
 
<略歴>
2001/3 熊本大学医学部卒業
2001/4 岡山大学医学部附属病院腎・免疫・内分泌・代謝内科
2001/10 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 内科
2003/4 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 血液内科医員
2004/4 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液科
2005/4 癌研究会有明病院 化学療法科・血液腫瘍科
2009/4 江戸川病院 腫瘍血液内科
2009/10 同医長
2012/4 同副部長
2016/1 東京がん免疫治療センター長(兼任)
2016/10 Hyper medical creator就任
2018/2 プレシジョンメディスンセンター長(兼任)
 
<専門分野>
がん薬物療法(抗がん剤治療)血液疾患(良性・悪性含む)
感染症管理、免疫療法日々、市中病院にてがん診療の最前線で抗がん剤中心の治療をおこなっている。
Hyper medical creatorとして、上場企業やベンチャー企業と、医療現場をつなげることをライフワークとしており、ユーグレナ、資生堂などとも連携している。
オンライン診療や栄養、人工知能、職場の環境改善など幅広い領域で、橋渡しをおこなっている。
その傍ら、趣味として梅酒が健康にどう影響するのか、どの料理と合うのかなど探究し、一般社団法人梅酒研究会設立、全国での梅酒まつりや品評会を主催している。
 
<出演・監修>
朝日放送 たけしの『みんなの家庭の医学』出演
映画『ゆめはるか』医療監修、出演
映画『サクラ花』医療監修
土曜ワイド劇場『切り裂きジャックの告白』医療監修
映画『うまれる ずっといっしょ。』アドバイザリーボード
その他、新聞などのメディアへの掲載多数
著書『先生!本当に正しい「がん」の知識を教えてください!』(すばる舎)
 
<その他>
株式会社オリィ研究所 顧問
株式会社マイロプス 顧問
一般社団法人梅酒研究会 代表理事
MRT株式会社 取締役