秋冬に起こりやすい肌トラブルについて、はなふさ皮膚科クリニック 理事長 花房火月(はなふさひづき)医師にお話を伺っていきます。
「尋常性乾癬」(じんじょうせいかんせん)について、あまり聞きなれない病名になりますが、芸能人で症状を告白されたかたもいますね。
よくある症状なのでしょうか?
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)について教えてください
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)というのは、ちょっと聞きなれない病気だと思うのですが、非常に多い皮膚疾患のひとつで一種のコモンディジーズ(Common Diseases)といわれる、ありふれた疾患になります。
尋常性乾癬は皮膚の頭から足までどこにでもできるのですが、特に摩擦の起こりやすい部位に生じやすいといわれていますね。
摩擦の起こりやすい肘や頭髪、膝なんかに赤くて丸い斑点ができます。
分厚い鱗屑(りんせつ)・・・要はカサカサしたフケのようなものが分厚く堆積していることが特徴です。
そして普通の湿疹と違ってなかなか治りにくく、繰り返し起こってしまうのが特徴ですね。これは一度かかってしまうとなかなか完治がしづらくて、一生付き合う方も多々いらっしゃいます。
最近では芸能人が発症を告白して有名になった病気です。冬になると皮膚の表面が乾燥して、それを掻いたりすることによって尋常性乾癬が悪化するかたが多いです。
尋常性乾癬はどんな人がなりやすいですか?
尋常性乾癬になりやすい人なのですが、はっきりした原因は分かっておらず、どういった人がなりやすいかは今のところ不明ですが、ある種の白血球の型をもっている人がなりやすいということが分かっています。
赤血球の型はO型、A型、B型、AB型、というように4パターンに分かれていることが知られていますが、白血球というのはもっと複雑で白血球の型があります。
ある種の白血球の型をもっている人は尋常性乾癬になりやすいことが分かっていますので、なんらかの白血球、すなわち免疫のパターンをもっている人がなりやすいと考えられています。
症状のある人が病名に気付いていないことはありますか?
たとえばごく軽症で頭や肘だけに症状がある人で、じつは尋常性乾癬だったという人もいますね。
症状が軽微であれば、そんなに心配する必要はないかなと思います。やはり全身に広まっていくとすごく目立つので、たとえば顔なんかにできると目立つので、それで困って病院に来るかたが多いです。
あともう1つ尋常性乾癬で問題になるのは、爪が変形してくるのでそれを嫌がるかたが多いですね。特に女性は爪が変形してボロボロになってくると、すごく困るとおっしゃるかたが多いです。
さらに乾癬は、乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)といって、リウマチのように指先や足先が痛くなってくる場合があります。症状があったらすぐに病院に行かないといけないと思います。
治療法や症状との付き合い方について教えてください
病院を受診するとじつに様々な治療法がありまして、まずはステロイドの外用やビタミンD3(ビタミンDの一種)を付けることで症状を抑えることができます。
軽症の方であれば、そういった付け薬(塗り薬)だけでじゅうぶんに対応することができます。
また痒みが酷い人は多いので、痒みが酷ければ痒み止めの飲み薬を飲んでいただきます。
もしそれらの付け薬やアレルギーの飲み薬で改善がない場合は、紫外線治療を行うことが多いです。
紫外線治療というのは、通常の紫外線から有害な紫外線をカットして治療効果の高い紫外線だけを放出する機械がありますので、それを使って尋常性乾癬を治していきます。
さらにそれでも良くならない場合は、オテズラといった飲み薬やネオーラルといった免疫抑制剤を使って症状を抑えることができます。
それらでも改善しない場合や関節症状・・・指のリウマチのような症状が強いかたには生物学的製剤という点滴や注射で治療することが今は可能になっていますね。
そしてこの病気は冬に悪化することがあるのですが、皮膚の表面が乾燥してしまうとそこが炎症を起こしやすく、炎症が起こるとそこに乾癬ができやすいですね。
あとは掻いたりするような物理的刺激で乾癬は起こりやすいので、掻かないようにすることが大事です。掻いたりこすったりしないようにするということが大事です。
冬場はよく保湿をして乾燥させない、掻かないようすることです。衣類も刺激の強いものを避けることがすごく大事かと思います。
紫外線の治療は定期的に受けるものですか?
症状が酷いかたですと、1週間に2回くらいの治療を行っても良いですね。
乾癬のかたであれば紫外線で改善させるということができますので、夏場なんかはなるべく半ズボンをはいてくださいね、
半袖の服を着て陽にあてるといいですよ、なんて指導することも多いです。
また中高年の尋常性乾癬に関しては高脂血症や高尿酸血症、高血圧、糖尿病、そして肥満といった、いわゆるメタボリックシンドロームとの関係が指摘されています。
ですので、少し生活習慣を見直すことで改善が見込めるといわれていますね。あと喫煙との関係も指摘されているので、タバコをよく吸う方は禁煙を心がけると良いかと思います。
医科歯科ドットコム編集部コメント
「尋常性乾癬は、ある種の白血球や免疫パターンをもっていると発症しやすいと考えられています」と花房火月医師。
外用薬や飲み薬、紫外線治療など症状に応じた治療法があるとのことでした。
頭や肘、膝などに分厚くカサカサしたフケのようなものが増えてなかなか治らない、ということがある場合は病院で診てもらうと安心ですね。
取材日:2019年10月4日
▶皮膚科における低侵襲手術について
プロフィール
花房 火月 医師
2006年4月~2007年3月 癌研究会有明病院(初期研修医)
2007年4月~2008年3月 東京大学医学部附属病院(初期研修医)
2008年4月~2008年6月 東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線レーザー科(専門研修医)
2008年7月~2008年11月 東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線レーザー科(助教)
2008年12月~2010年6月 NTT東日本関東病院皮膚科(医員)
2010年7月~2011年6月 東京厚生年金病院皮膚科(レジデント)
2011年3月 東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線レーザー科後期研修終了
2011年7月~ 三鷹はなふさ皮膚科開設
2014年6月~ 新座はなふさ皮膚科開設
2015年6月~ The Japan Times紙によりアジアの次世代を担うリーダー100人に選出
2015年7月~ 国分寺駅前はなふさ皮膚科開設
2016年5月~ 久我山はなふさ皮膚科開設
2017年8月~ 志木はなふさ皮膚科開設
2019年4月~ The New York Times紙によりNext-Era Leaders2019に選出
2020年2月~ 大宮はなふさ皮膚科開設
<その他>
著書『ぜんぶ毛包のせい。 薄毛・AGA ニキビ ヒゲ・体毛 ニオイ 汗』