【現役医師に聞く!】インフルエンザは加湿器で予防できる?予防接種のタイミングも知りたい!


 
引き続きインフルエンザの予防と対策について、江戸川病院の腫瘍血液内科副部長であり感染制御部部長でもある明星智洋(みょうじょうともひろ)医師に、教えていただきます。
一般的に使われている空気清浄機やアルコール除菌、加湿器などは効果があるのでしょうか?
また予防接種のタイミングについても詳しくお話していただきました。
 

空気清浄機や消毒薬は効果がありますか?

空気清浄機に関しては、今はいろんなものがあるのでウイルス除去してくれるものもありますし、多少の効果はあるのではないでしょうか。
そして消毒薬についてですが、次亜塩素酸に関してはもちろん殺菌効果がありますが、次亜塩素酸というのはけっこう劇薬なのでそれを我々が吸入してしまうことではデメリットになるかもしれません。
インフルエンザウイルスは次亜塩素酸を使わなくてもアルコール除菌で十分の効果が得られると言われています。
あとは乾燥している場所でウイルスは増えやすいので、常に加湿をすることのほうが重要だと思いますね。
家の中にウイルスがいる場合に、加湿をしておけばその湿度の水分である水蒸気にウイルスが吸着して床に落ちていきますので、我々が呼吸をする高さまではウイルスが上がってきません。
ですから効果があるのですね。具体的には湿度が50%~60%を保つようにしておくと、家の中での予防ができるだろうと思います。
 

アルコールはどのように使用したらいいですか?

鼻や口で吸入をするときに、空気をすべてアルコールで除菌するということは不可能だと思います。
外出から帰ってきたときに通常は流水で手洗いしますが、物理的に100あったウイルスが50くらいにはなっているかもしれないですね。
でもまだ50は残っていますし、そういうときに手にアルコールを噴霧してすり込んであげることでウイルスをかなり減らせる効果が期待できます。そういう局所的には効果があるだろうとは思いますよね。
あくまで接触感染予防ということになるかと思います。
 

予防接種を受けるタイミングについて

もちろんインフルエンザが流行する前に打たないと意味がないわけです。
通常だとインフルエンザの流行期は12月から2月くらいまでなので、11月くらいまでには受けておきたいところですが、2019年に関しては異例の速さで流行しているので、ワクチンが手に入り次第やったほうがいいです。
実際に我々の病院では職員の集団予防接種に関しては、ちょうど10月の下旬から一斉に職員の予防接種を行っています。あと自治体にもよりますが10月1日から行っているようですね。
 

子供の予防接種についても教えてください

子供のほうが大人よりも免疫力が幼弱でつまり成熟していないので、やはり子供のほうがインフルエンザにかかりやすいと思います。
子供のほうが早く予防接種を受けたほうがいいのですが、お子さんの場合はワクチンを2回打つことを推奨しています。
2日連続でワクチンを打つわけではなくて、1回ワクチンを打ったら1週間はあけてください。そう考えれば、逆算して10月中旬くらいから1回目のワクチン接種をしておいたほうがいいと思います。
そしてこれは勘違いされているかたもいるかもしれませんが、2回やらないと全く効果がないわけではなくて、1回でも抗体ができるかたというのは8割くらいいると言われています。
でも2回打てばその8割がさらに9割になる、そういった感覚なので、どうしてもお母さんの都合などで病院に連れていけないという場合は、1回でも十分に効果はあるだろうと思います。
 

ワクチンを接種してもインフルエンザにかかることはありますか?

インフルエンザワウチンを打っても、身体の免疫が反応しなければ抗体ができない場合もあるでしょう。
その場合は結局、抗体がないので無防備な状態になりインフルエンザにかかってしまう可能性があります。
もう1つは、インフルエンザワクチンというのは毎年、今年はこのインフルエンザウイルスが流行するだろうという予測のもとにワクチンがつくられていると言われています。我々には同じように見えるかもしれませんね。
その予想が外れる可能性もありますし、年によってはそういうこともあります。
また、新型インフルエンザというのを聞いたことがあるかもしれませんが、これは通常のインフルエンザとは違って、従来のワクチンが一切効かないような新型といわれるものですから、初めてできたようなインフルエンザであれば予防できないので爆発的な流行をきたしてしまう可能性も考えられます。
これに関しては、国の予想のもとでワクチンがつくられているので当たるかどうかの話になりますが、我々ができることとしては今あるワクチンをとにかく打って万全の体制にしておくことくらいしかないのではないでしょうか。
 
さらにウルトラCの方法としては、たとえばどうしても今週末や来週に受験があるときに、インフルエンザに絶対にかかりたくない、大事な舞台があるんですといった可能性があるかもしれませんが、そういうときは自費になりますがインフルエンザの治療薬でたとえばタミフルという薬を飲んでいれば、抗ウイルス薬なのでウイルスが入ってきても排除できるでしょうし、飲んでいるあいだは予防ができるだろうと言われています。保険は利きませんので自費診療になります。タミフルはカプセルで、リレンザやイナビルは吸入薬なのですが、服用しているあいだはインフルエンザにはかかりにくくなります。
 

医科歯科ドットコム編集部コメント

乾燥しているとウイルスが増えやすいので、部屋の中では加湿することが予防としては大事だと教えていただきました。
また、インフルエンザの予防接種は流行する前には打っておいたほうが良いのですね。
今回は2回に渡って、明星智洋(みょうじょうともひろ)先生にインフルエンザについて興味深いお話を伺うことができました。
予防接種をまだ受けていない人は早めに受けることを検討してみてくださいね。
 
取材日:2019年10月16日
 
【明星智洋医師に聞く】インフルエンザって満員電車で感染するの?マスクやうがいの効果は?<インフルエンザの予防法と対策①>
 

プロフィール

江戸川病院
腫瘍血液内科副部長
明星 智洋 医師
 
<資格>
日本内科学会認定内科認定医
日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、指導医
日本血液学会認定血液専門医、指導医
日本化学療法学会認定抗菌化学療法認定医、指導医
日本癌治療学会認定がん治療認定医
インフェクションコントロールドクター(ICD)
Total nutritional therapy修了
 
<略歴>
2001/3 熊本大学医学部卒業
2001/4 岡山大学医学部附属病院腎・免疫・内分泌・代謝内科
2001/10 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 内科
2003/4 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 血液内科医員
2004/4 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液科
2005/4 癌研究会有明病院 化学療法科・血液腫瘍科
2009/4 江戸川病院 腫瘍血液内科
2009/10 同医長
2012/4 同副部長
2016/1 東京がん免疫治療センター長(兼任)
2016/10 Hyper medical creator就任
2018/2 プレシジョンメディスンセンター長(兼任)
 
<専門分野>
がん薬物療法(抗がん剤治療) 血液疾患(良性・悪性含む)
感染症管理、免疫療法日々、市中病院にてがん診療の最前線で抗がん剤中心の治療をおこなっている。
Hyper medical creatorとして、上場企業やベンチャー企業と、医療現場をつなげることをライフワークとしており、ユーグレナ、資生堂などとも連携している。
オンライン診療や栄養、人工知能、職場の環境改善など幅広い領域で、橋渡しをおこなっている。
その傍ら、趣味として梅酒が健康にどう影響するのか、どの料理と合うのかなど探究し、一般社団法人梅酒研究会設立、全国での梅酒まつりや品評会を主催している。
 
<出演・監修>
朝日放送 たけしの『みんなの家庭の医学』出演
映画『ゆめはるか』医療監修、出演
映画『サクラ花』医療監修
土曜ワイド劇場『切り裂きジャックの告白』医療監修
映画『うまれる ずっといっしょ。』アドバイザリーボード
その他、新聞などのメディアへの掲載多数
著書『先生!本当に正しい「がん」の知識を教えてください!』(すばる舎)
 
<その他>
株式会社オリィ研究所 顧問
株式会社マイロプス 顧問
一般社団法人梅酒研究会 代表理事
MRT株式会社 取締役