ビクアスクリニックの伊藤秀憲院長に私たちが日ごろ気になる育毛剤や飲む日焼け止めなどのお話しをお聞きしました。日頃メディアやブログなどでも目にするこれらの話題について医師の立場の方からお話を伺える機会は貴重なので、必見です。
ザガーロと育毛剤の併用
男性型脱毛症、AGAは思春期以降の男性に発症する髪が薄くなる状態をいいます。額の生え際や頭頂部がどちらか一方、もしくは両方から薄くなります。このAGAにはジヒドロテストステロンという男性ホルモンが関与しています。AGAになると毛髪の育毛期が短縮し、髪の毛が細く柔らかくなり切れ毛のようになってしまい、薄毛が徐々に進行します。内服薬であるザガーロはテストステロンからジヒドロテストステロンに変換する酵素をブロックすることで血中のジヒドロテストステロンの濃度を下げます。その結果、毛髪の育毛期が正常化し、抜け毛が減ったと実感される場合が多いです。
一方で、有効な外用薬もあります。それが、ミノキシジルです。これは、頭皮の毛細血管を広げて血行を促進して栄養を届けやすくします。その結果、毛母細胞が活性化されて細胞分裂が活発化し、毛髪が太くなります。
以上から、ミノキシジルは抜け毛予防の効果はありませんが、髪の毛を太くして頭皮の露出を改善させる作用があります。ザガーロやプロペシアなどのジヒドロテストステロンの血中濃度を下げる内服治療と、ミノキシジルの併用療法が望ましいですが、それぞれ単独でも効果はあります。ただ、AGAの病態生理から考えて、どちらか一方とした場合はザガーロやプロペシアの内服療法をお勧めします。
老化とともに髪の毛が細くなる場合、市販の育毛剤は効果があるか
男性で原因がAGAの場合はザガーロなどの内服療法も重要になってきますので、市販の育毛剤だけでは効果が出ない場合があります。
また、女性の場合は瀰漫(びまん)性脱毛症といって分け目中心に髪の毛が細くなり薄毛になることがあります。この場合、詳しい原因物質は分かっていませんが、ホルモンバランスの乱れやストレスなどで起こることが分かっています。
治療は育毛剤だけでなく、頭皮環境を改善する内服薬を処方することがあります。どちらにしても、お困りの際はクリニックに受診して医師に診察してもらうことをお勧めします。
全身脱毛の安全性、効果
脱毛は毛包周囲の組織を変性させることで脱毛効果が起こります。効果的に変性を起こさせるには熱を与える熱変性が良いとされています。熱変性を効率よく起こすには、レーザーが良いとされています。というのも、レーザーは色に反応すると熱が発生するという性質があります。
レーザー照射によって生じた熱が毛を介して毛包周囲を加熱します。その結果、毛包がダメージを受けて次に出てくる毛が細くなっていきます。ただし、毛が皮膚表面に出てきていないものには反応しません。
ですので、毛周期に合わせて複数回の治療が必要になります。
また、皮膚に熱を与える治療ですので、痛みや火傷、毛嚢炎のリスクがあり日焼けしている肌には照射できなかったりしましたが、最近では蓄熱脱毛といって弱い出力のレーザーを繰り返し照射して熱を蓄積させて脱毛効果を起こすものもあります。
この蓄熱脱毛は痛みが非常に少なく、時間も従来のレーザーよりも短時間で終わらすことができます。火傷のリスクもゼロではありませんが、従来の脱毛レーザーに比べたら非常に少なくなっております。また、当院が導入している蓄熱脱毛は三つの波長が出るものですので、太くかたい毛から柔らかい産毛まで脱毛が可能です。
最近飲む日焼け止めについて
紫外線にはUVAとUVBと二つの波長があります。
UVAは全紫外線の95%を占めており、それ自体のエネルギーは弱いですが、照射量が多く皮膚の深部まで到達します。その結果、コラーゲンやエラスチンを生成する線維芽細胞が損傷されて、皺やたるみの原因になります。また、メラニンの生成を活性化するためシミができやすくなります。このUVAによっておこるシミ、皺、たるみを光老化と呼びます。
飲む日焼け止めはこのUVAの吸収を促進しお肌を紫外線のダメージから防ぎます。
その主成分はシダ植物から抽出されたもので、安全性も高く小学生のお子様にもお出しできるものです。
一方で、UVBは全紫外線の5%程度ですが、UVAより強いエネルギーを持ちます。
肌の表面で吸収され、表皮細胞に損傷を与えてやけどのように赤くなったり、シミの原因になります。
塗る日焼け止めはこのUVBによる皮膚の損傷を守るため、日差しが強い時期には飲む日焼け止めと塗る日焼け止めの併用をお勧めしております。
加齢でターンオーバーしなくなってしまうのは?
ターンオーバー(肌の代謝)とは、表皮の基底層から作られた表皮細胞、ケラチノサイトが剥がれ落ちるまでの期間です。細胞が生まれ変わるサイクルと考えてください。若いうちは28日周期で行われますが、年齢を重ねるとその期間が長くなります。
決してターンオーバーしなくなるわけではなく、遅くなるのです。そうすると、ケラチノサイトの中にあるメラニンが排出されにくくなり、シミの原因になります。更にくすみの原因にもなります。ピーリングはこの溜まった角質を除去する有効な治療です。
また、光治療(フォトフェイシャル)によって溜まったメラニンを減らすことでシミ、くすみを改善できます。サプリメントでもメラニンを作るメラノサイトの機能を抑制するものも出ておりますので、ある一定の効果は見込めますが、シミにも様々な種類がありますので、一度クリニックに受診して、診断してもらうことをお勧めします。
医科歯科ドットコム編集部まとめ
ビクアスクリニックの伊藤秀憲院長に日頃、私たちが気になるアンチエイジング、脱毛、育毛などについてお話を伺いました。治療の最前線で活躍される医師の方のお話しだけあって説得力がありかつ分かりやすいものでした。日頃、私たちは何かと医療情報に接する機会は多いですがやはり医師の方のお話しは信憑性が高いので是非参考にしてみてください。
▼伊藤 秀憲先生 インタビュー記事
▶【医師に聞く!】最近よく耳にする「眼瞼下垂」ってなに?「眼瞼下垂」によってどんな症状がおこる?
取材日:2019年6月27日
プロフィール
院長
伊藤 秀憲
2007年 北里大学医学部卒業
2009年 北里大学病院形成外科・美容外科 北里大学病院救命救急センター
2010年 独立行政法人国立病院機構 横浜医療センター形成外科
2010年 JA長野厚生連 北信総合病院形成外科・美容外科
2012年 福岡大学病院形成外科・美容外科美容外来担当
2017年 医療法人社団美翔会 聖心美容クリニック
2019年 大田区蒲田にて、ビクアスクリニック開業