2020年4月1日より、東京都では「受動喫煙防止条例」が執行されます。望まない受動喫煙を防ぐための取り組みとして、喫煙専用室を除き、屋内での喫煙は原則禁止となります。
万病のもととも言われるたばこですが、歯周病とも関係があると言われています。歯周病とは、細菌の感染により歯ぐきが炎症を起こし、歯が抜け落ちてしまう恐ろしい病気です。
佐藤 美嘉(さとう みか)歯科医師に、たばこと歯周病の関係についてお話を伺いました。
たばこを吸うことで、正常な歯ぐきが作られなくなってしまう
――たばこと歯周病はどのような関係?
たばこと歯周病には、深い関係があります。歯ぐきの正常な細胞を作るには酸素が必要です。
しかし、喫煙することで一酸化炭素が多くなり、酸欠状態に陥ります。また、たばこに含まれるニコチンは、血管を収縮し、体が酸欠・栄養不足状態になります。
歯ぐきの細胞は毎日再生されて生まれ変わっていますが、ニコチンは免疫機能も抑制してしまうため、正常な歯ぐきが作られにくくなります。
例えば歯ぐきを歯ブラシなどで傷つけても、なかなか元に戻らないというような状態になります。その部分の歯ぐきが化膿し、治癒しにくいということが起きます。
その痛みにより思うような口腔ケアができないため、ブラッシングがおろそかになり、歯周病が悪化していくという悪循環に陥った口腔環境になってしまうのです。
――歯周病の改善には、禁煙が必要?
禁煙は絶対必要になります。たばこを吸うことで、口腔環境は悪化します。せっかく治療しても、喫煙により、思うような治療効果が得られないことが多いです。
禁煙後の歯周病治療効果は4割以上もアップします。また、喫煙によりインプラントの成功率も左右します。
歯周病のみならず、禁煙は肺がんなど、多くの全身疾患に影響を与えるため、禁煙をトライしてみてほしいと思います。
受動喫煙でも歯周病になる?妊婦・子どもは特に注意
――たばこを吸っていなくても、受動喫煙で歯周病になる?
受動喫煙による口腔内の影響も、少なからずあるとの報告があります。受動喫煙により、歯肉の炎症性のタンパク質を増加させるという研究結果が出ています。受動喫煙と歯周病については、今後詳しい調査が進む項目と思われます。
――歯周病にならないために気を付けることは?
日々の口腔ケアを正しい方法で適切に行うことです。また、セルフケアのみならず、定期的に歯科でのプロフェッショナルケアを行いましょう。
そして、喫煙者と同じ飲み物を飲まない、同じお箸を使わないなどは、とても大事ですね。特にお子さんは歯周病菌がうつりやすいです。
成人はそうでもないですが、妊婦さんは気を付けた方がいいと思います。歯周病になると、低体重児で赤ちゃんが生まれてしまうリスクがあると言われています。
歯みがきで出血したら危険サイン!歯周病は生活習慣病のひとつ
――歯周病に気付くにはどうしたらいい?
歯間ブラシを通したときに出血がある場合や、歯が少し揺れ始めたら歯周病を気にした方がいいです。グラグラするくらい歯が揺れていたら、もう手遅れの状態かも知れません。
歯が浮くような感じがする、違和感があると思ったら歯科医院に行って治療していただいた方がいいかなと思います。少し揺れる程度なら復活可能です。
また、糖尿病の方は約80%以上が歯周病の可能性があります。定期的に歯科医院に行っていただいて、口腔ケアをした方が良いと思います。
――歯周病を予防するためには?
口腔ケアや禁煙も大事ですが、食生活もすごく大事です。甘いものばかり食べていたりすることもよくないです。歯周病は生活習慣病のひとつなので、運動して睡眠をとることが大切です。
歯ぐきは血管の固まりのようなものです。運動によって血流がよくなるので、運動することで歯周病を改善してくれます。全ての病気は運動が大事かなと思いますね。
医科歯科ドットコム編集部コメント
たばこと歯周病の関係について、佐藤 美嘉(さとう みか)歯科医師に教えていただきました。
歯周病は、歯ぐきを溶かしてやがて抜歯になってしまう恐ろしい病気です。初期は痛みがなく気付きづらいため、別名「サイレントディジーズ(静かなる病気)」「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれています。
歯みがきで出血する、歯がムズムズして浮いたような違和感がある場合、歯周病を疑うサインです。特に喫煙している人は進行が早いため、口腔ケアをしっかりおこないましょう。
取材日:2020年2月6日
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プロフィール
・岩手医科大学卒業、2010年に歯科医師免許取得し、研修医終了後、都内医療法人に勤務
・現在は医療法人社団 高輪会、常勤医として外来、総合病院の病棟、ターミナル施設を担当
・一般的な歯科、美容診療の他に歯科口腔外科(摂食嚥下、ターミナル治療を含む)
特に摂食嚥下治療に関しては、高齢による機能低下、器質的変化により、食べることが今後難しいと言われた患者様の摂食のリハビリをしております。さらに、認知機能を摂食により改善させています。
オーラルケア(リハビリも含めた専門家による口腔周囲の衛生管理、および機能向上)の重要性が日本では欧米に比べると認知が低く、認知症改善、嚥下機能改善、生活習慣病に効果があることを広める活動をしております。
・大手生命保険会社生命保険加入者様向けセカンドオピニオンドクターを担当
・大手生命保険会社主催のセミナーで、看護師や保育士の方向けに、小児の予防医療、発育セミナーを開催