美しい口元や自分の歯で長く噛める喜びなど、矯正治療を受けることで得られるメリットはたくさんあります。
しかし「矯正治療は痛そう」というイメージから、治療に不安を感じている人もまた、少なくないのではないでしょうか?
確かに、矯正治療でまったく痛みを感じなかったという人はまれですし、多くの人は治療中に何らかの痛みを感じています。
しかし、矯正治療中ずっと痛いわけではありませんし、耐えられないほどの痛みに襲われることもありません。
矯正治療を行う上で気になる「どんなときにどれくらいの痛みがあるのか」について、具体的な痛みの時期と程度を紹介していきます。
矯正による痛みの正体は「炎症」と「血行障害」
矯正治療中の痛みはいったいどこから来るのでしょうか?
この疑問に対して、実は明確な答えは出ていません。しかし「歯が動く際の炎症反応」と「歯の移動に伴う血行障害」の2つが痛みの原因ではないかといわれています。
歯は、根の周りを歯根膜(しこんまく)という膜に覆われており、歯槽骨(しそうこつ)という骨に根が埋まる形で生えています。
この歯にワイヤー・ブラケットやマウスピースなどの矯正器具を使って弱い力を長時間かけ続けると、細胞の働きで歯の進行方向側の歯槽骨が一度壊され、歯が動き、後ろ側の歯槽骨が再生されるという現象が起こります。
これが、矯正治療で歯が動くしくみです。
歯槽骨の破壊と再生の際に起きる炎症が、痛みの元になっているというのです。
一方、歯の移動に伴う血行障害とは、歯が動くことによって歯の中の神経(歯髄)が圧迫されて血行が悪くなるという現象で、いわゆる「肩こり」と同じようなものだといえます。
矯正による痛みが強いのは装置の調整から数日間
矯正中の痛みは、基本的に「歯が動くことで起きる痛み」なので、歯の動きに合わせて矯正器具をつけてから数日間は強く、その後は徐々に治まるのが特徴です。
歯列矯正は大きく分けると、歯にブラケットと呼ばれる小さな器具を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を動かす「ワイヤー矯正」と、透明なマウスピースをはめることで歯を動かす「マウスピース矯正」があります。
どちらでも歯が動く原理は同じですが、どちらの方法を取るかによって治療のサイクルや痛みの感じ方は多少違ってきます。
ブラケットとワイヤーを使う場合
ブラケットとワイヤーを使う場合、歯を動かす期間中は3~6週間に1度通院して、矯正器具の調整を行うのが基本です。
痛みは個人差もありますが、矯正器具をつけた(調整した)4~5時間後ぐらいから違和感が出始め、翌日から3日目頃がピークになります。
痛みがピークのころには、食事の際に咀嚼するだけで痛みが走ることもあります。
その後は徐々に治まり、1週間ほどで違和感がある程度になり、2週間ほどで違和感がなくなるのが一般的です。
また、装置が口内に接触することで口内炎ができることもあります。
マウスピースを使う場合
マウスピース矯正は、1~2週間に1度マウスピースを交換して歯を移動させていきます(交換の頻度は症状によって異なります)。マウスピース交換直後には締め付けられるような圧迫感を感じることがありますが、徐々に薄れ、ほとんどの場合4~5日後には慣れてきます。
また、マウスピースを外してしばらくは、食事をすると少し痛むことがあります。一般的に、ブラケットとワイヤーを使う方法に比べて、痛みが少ない場合が多いです。
痛みを和らげるために
矯正治療に伴う痛みは、歯がしっかり移動して矯正効果が出ていることの表れでもありますから、痛むこと自体を止めることはできません。
しかし、適切なケアをすることで痛みを和らげることはできます。
痛みを和らげるのに最も簡単な方法は、歯ブラシや電動歯ブラシを使って歯と歯茎の境目や歯茎をマッサージすることです。
血行を良くすることで痛みを緩和する効果があります。
装置をつけたばかりで痛みが激しい時期や、どうしても痛みが気になる場合は、痛み止めの薬を使うことで痛みを抑えることもできます。
ただし、痛み止めには炎症を抑える成分、つまり歯の移動を止めてしまう成分も含まれていますので、長期間にわたって摂取し続けることは避けたいところです。
矯正装置が口内に当たって痛い場合は、歯科医院で矯正装置を調整してもらうか、「ワックス」と呼ばれる粘土状の保護剤で当たる部分を覆うことで痛みを和らげることができます。
矯正治療中にある程度の痛みを感じることは避けられませんが、そのサイクルや対処法を知っておけば、うまく乗り切ることが可能です。
痛みがあるからといって矯正治療という選択肢を避けてしまわずに、興味があればぜひ一度、歯科医院で相談してみてください。
医科歯科ドットコム編集部まとめ
矯正治療は方法によって痛みが色々と異なっているとのことでした。
ですが、実際に各歯科医院で受けられる治療法がどういった種類なのかは、なかなかわかりづらいですよね。
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監修日:2019年12月18日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医