歯科医師が答える!生理中の歯痛はこう乗り切りましょう!

 
生理の前後に起こるちょっとした体調の変化は、女性なら誰でも覚えがあるもの。
 
人により症状はさまざまですが、「気分が沈む」「イライラする」などの心の不調に加え、腹痛や腰痛などの体の不調が起こることはよく知られています。
 
しかし、それらに加えて歯や歯茎にも痛みを感じる場合があることは、あまり知られていません。

 
「急に歯が痛くなって歯科医院に行ったけれど、どこも悪くなかった」という場合、それは生理によるものかもしれません。病気ではないので治療することはできませんが、それでも痛みを和らげる方法はあります。
生理と歯痛の意外な関係と対処法について紹介します。

 

歯痛は月経前症候群の症状の1つ

月経前症候群と呼ばれる生理前の体調変化(通称「PMS」)の症状は、実は200種類ぐらいあると言われています。
 
個人差はありますが、おおむね生理の3~10日前から心や体に起こる変化を指し、生理が終わると症状が弱まり、消えていくのが特徴です。代表的な症状としては、イライラする、落ち込みやすくなる、腰が痛い、頭が痛い、だるい、胸が痛い……などがあり、同じ人でも月によって違うことも珍しくありません。
 
このような症状が起こる原因は、女性ホルモンの分泌量の変化にあると考えられています。体の中には、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類の女性ホルモンがあり、生理が終わった直後は、エストロゲンの分泌量がプロゲステロンの分泌量を上回っている状態になっています。
 
生理が近づくとプロゲステロンの分泌が活発になってこのバランスが逆転し、体にさまざまな変化が現れるのです。
 
女性ホルモンの変化がもたらすのは、PMSだけではありません。
例えば生理中は免疫力が落ちているので細菌に感染しやすくなる、生理直後からの2週間は痩せやすく、生理前~生理中の2週間は痩せにくいなど、女性の体に無視できないさまざまな影響を与えるものなのです。

 

元々ある虫歯が痛んでいる場合も

では、「生理中の歯痛はすべてPMSの一種。虫歯ではないし、どこも悪くない」のかといえば、一概にそうとも言えません。
それにはいくつか理由があります。

 

●虫歯が痛んでいる可能性

生理中は子宮の収縮を促進し、子宮内の古い血液を排出する「プロスタグランジン」という物質が多く分泌されています。実はこれは、生理痛の原因でもある「痛みを誘発する物質」。
その影響で普段痛みを感じないような小さな虫歯が痛み出すことがあるのです。

 

●生理中は歯肉炎にかかりやすい

歯周病菌の中には、女性ホルモンを栄養源として活動を活発化させるものがいます。生理中はこの女性ホルモンが毛細血管により全身に行きわたっている状態。当然口の中も同様で、歯肉炎になりやすい環境になっているのです。

 

症状を和らげるには生活習慣の見直しを

ただでさえ腹痛や頭痛があり気分が落ち込む生理中に、歯痛まで起きるとうんざりしてしまいますね。
PMSは病気ではないので症状を完全になくすことは難しいですが、症状を和らげるためにできることはあります。
以下のようなことを試してみてください。

 
①歯科医院へ定期メインテナンスに通い、痛みのもととなりそうな小さな虫歯を治しておくことで、余計な痛みを抑えることができます。

 
②生理中はいつもより丁寧に歯磨きをする
免疫力が落ちている分は、口腔内を清潔に保つことでカバー。
睡眠中は菌の活動が活発になるので、特に夜眠る前の歯磨きは丁寧に。汚れをきれいに落としてから眠るようにしましょう。

 
③ストレスを避ける
PMSの症状は、急な環境の変化や過度のストレスにより重くなることが知られています。
生理前~生理中はハードワークや常に緊張状態を強いられるような活動は極力避け、ストレスのかかり過ぎには気を付けてください。

 
④規則正しい食生活を心掛ける
野菜不足や糖分の摂りすぎ、過度なダイエットなどでバランスの悪い食事が続くこともPMSの症状を重くする原因になります。
喫煙や過度な飲酒、カフェインたっぷりのコーヒーをたくさん飲むのも避けたいところ。意識して野菜を摂ったり、「コーヒーは1日1杯まで」とルールを決めたりして、バランスのよい食事を心掛けるようにしてみてください。

 
歯痛をはじめとするPMSの諸症状は不愉快なものではありますが、毎月向き合わなければいけないもの。
うまく付き合っていくための知識を身に付けたいものです。

 
監修日:2020年2月26日
 

監修医 プロフィール

医療法人社団 輝 藤本歯科長洲医院
藤本 俊輝
歯学博士
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医