「少し前から、冷たいものを食べると歯に染みる気がする……。けれど仕事が忙しくて歯医者に行く時間もないし、何だか怖いから行きたくない。」そんな理由で、歯科医院に行くのをためらっている人も結構多いのではないでしょうか?
しかし、虫歯はごくごく初期のものを除いては自然治癒しない病気。
治療しない限りどんどん進行する危険性をはらんでいます。
「歯科医院には行かない」と決めてしまう前にぜひ知っておきたい、虫歯を放置した場合に起こりうることをまとめて紹介します。
口の中での虫歯の進行は5段階
そもそも虫歯は、口の中に住む虫歯菌(ミュータンス菌)が食べかすなどの糖分を食べて酸を出し、歯を溶かしてしまうことで起きる細菌感染です。どれぐらい進行しているかによって、CO~C4までの5段階に分類されています。
●CO ‥‥ 虫歯の初期段階。歯の表面のエナメル質部分が少し溶かされ始めた状態で、歯が透明感を失って白く濁ったり、溝が茶色くなったりして見えます。歯に穴はあいていませんし、痛みもありません。この段階なら、歯みがきなどで虫歯菌を除去してやることで、歯の再石灰化(唾液の作用により自然に歯が修復されること)作用で自然に健康な状態に戻る可能性があります。
●C1 ‥‥ エナメル質が少し溶かされて小さな穴があいた状態。痛みはありません。
●C2 ‥‥ 穴が広がって、エナメル質のすぐ下にある象牙質まで達した状態。冷たいものや、甘いものが染みるようになり、穴に食べ物が詰まったりします。
●C3 ‥‥ さらに穴が広がって象牙質を貫通し、その下の神経(歯髄)にまで達した状態。痛みの感じ方は人それぞれですが、ズキズキとした激しい痛みが続く場合もあります。
●C4 ‥‥ 歯の上部の大部分が溶けてしまい、根っこまで虫歯菌に冒されてしまった状態。神経が死んでしまうので一時痛みはなくなりますが、さらに進行すると顎の骨の中で膿が溜まり歯ぐきが腫れ上がる、口臭がひどくなる、激しい痛みを感じるなどの症状が出はじめます。
口腔内の環境が体にも影響を及ぼすことも
ズキズキとした痛みだけでも十分嫌なものですが、もう1つ見逃せない虫歯のリスクとして「歯原性菌血症」があります。
「菌血症」というのは、傷口から血液の中に細菌が入り込み、血流に乗って全身に運ばれている状態です。
この症状が起こること自体は珍しいものではなく、転んで怪我をした時や食中毒になった時、歯科治療なら抜歯した時や口の中に傷ができた時にも起こります。
しかし、いくらさまざまな機会に起こりえるものだといっても、しょっちゅう転んだり抜歯したりするわけではないので、発生頻度自体はそんなに高くありません。ところが虫歯や歯周病などで口の中の環境が悪化していると、食事やブラッシングの度に菌血症が起きてしまうのです。
ただ、人間の体には免疫機能が備わっているので、大半の場合では血中に入り込んだ細菌が悪さをする前に排除されます。そのため、むやみに恐れる必要はありません。
しかし他の病気で体調を崩している、ストレスで抵抗力が落ちている、加齢による体力の衰えなどが原因で、免疫システムが上手く機能しないといった時期に重なれば、短期的には頭痛や発熱の症状が出たりします。その一方、細菌性髄膜炎や感染性心内膜炎など大きな疾患の一因となる場合もあるので注意が必要です。
治療にかかる時間・お金もこんなに違う
虫歯を放置して症状が進むと、当然治療にはそのぶん多くのお金と時間が必要になります。
同じ虫歯の程度でも、保険診療か自由診療か、どんな治療法を取るか、詰め物にどんな素材を使うか、歯科医院がどれぐらい混み合っているのかなどによって治療期間・治療費は変わってくるため、一概には言えませんが、保険診療の場合の一カ所あたりにかかる治療期間・費用のおおよその目安は以下の通りです。
●CO ‥‥ 自然治癒が可能。通院は必要ありませんし、当然治療費用も0円です。
●C1 ‥‥ 虫歯部分を削って詰める治療が必要です。通院は1回程度で治療費用1500~3000円でしょう。
●C2 ‥‥ C1同様に虫歯部分を削って詰める治療を行いますが詰め物の調整が必要になります。通院は2~3回でトータル2500~5000円の治療費用となります。
●C3 ‥‥ 神経を抜き、根管を消毒する必要があります。炎症が落ち着くのを待って根を密封し、土台を整えて被せ物をする根管治療を行います。治療に必要な期間は約1~3カ月で、6000~1万円の費用は考えておくべきでしょう。
●C4 ‥‥ 抜歯後、ブリッジか入れ歯、インプラントが必要です。治療期間は約2~6カ月、1万5000~2万円が必要になりますが、インプラントは保険適用外のためそれなりの費用がかかります。
●菌血症から身体に異常が現れた場合 ‥‥ ここまで進行するのはまれなケースですが、突発的な頭痛や発熱、手先の痺れなどで救急搬送された例があり、その場合内科での抗生物質などによる治療になります。根本的な原因は虫歯なので、再発防止のためには虫歯治療が不可欠。治療期間・費用は口内の状態により変わります。
まとめ
虫歯の症状が進むと、痛みや不快感が増すのはもちろんですが、治療も大掛かりなものになり、体への負担もお金も時間も余計にかかってしまいます。
歯医者さんの中には、歯科恐怖症の人の不安を和らげる麻酔治療などを行っているところもあるので、「虫歯かな?」と思ったら、どんなに時間がなくても放置した場合のリスクの高さを思い出して、早いうちに歯科医院を受診することをおすすめします。
早期発見・早期治療を行なうことで、必要となる時間もお金も、さらには痛みも小さいうちに処理してしまいましょう。
医科歯科ドットコム編集部まとめ
よく小学校の歯科検診なんかできいた「Cが○○」といった言葉にはこのような意味があったんですね。
この歳になってはじめて知ることになるとは(笑)少しでも歯に異常を感じたら、クリニックへ行くのが一番です。
監修日:2019年10月16日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医