【あきらめないで!】歯科医師に聞く!自分の歯を残すための骨再生治療とは?

 
歯を失わずにすむかも知れない、そんな可能性を秘めた骨再生治療について、第一人者である塚原デンタルクリニックの塚原 宏泰先生にお話をお伺いしました。

 

自分の歯を失わずにすむ!?骨再生治療(PRGF療法)とは?

骨の持つ自然治癒能力を、最大限引き出すためのサポートをする治療を骨再生治療といいます。
 
具体的には、拒絶反応などが起きない患者さん自身の血液を採り、それを遠心分離器にかけると血球と血しょうに分かれます。
血小板(※1)やフィブリン(※2)を含んだ血しょう部分を固めてゲル状にし、患者さんの傷口に応用します。
 
これを「PRGF(Plasma Rich in Growth Factor)療法」と言います。
 
PRGFを入れることで傷の治りが早くなります。とはいえ、再生治療を成功させるためには条件があり、その条件を満たさないと失敗してしまいます。
 
ただ置けば成功するものではないのが難しいところです。
 
(※1)血小板には骨の再生を助ける物質がたくさん含まれています。
(※2)フィブリンとは、擦り傷になった時に、傷口を覆う粘性のある分泌物のことです。血小板を固めるのりの役割をしているものです。それが固まりかさぶたになって傷を治していきます。

 

骨を維持するために骨再生治療が有効な3つの治療とは?

1つ目は、歯を残すための、歯の周りの骨(歯槽骨)に対する治療です。
 
たとえば歯周病は、歯を支えている周りの骨が細菌によって溶け、歯がゆるんでくる病気です。
 
それをしっかりと 基本治療した上で、骨を再生させます。
 
これを歯周再生治療といいます。
 
また、歯の根っこの先の骨が細菌によって溶けてしまうことがあります(根尖病巣(こんせんびょうそう))。根っこの治療だけで治らない場合、外科的な処置が必要になります。
 
その時に溶けてしまった骨を再生させます。骨の中の大きな病巣(嚢胞や腫瘍)をとった時なども、空洞化してしまいますので、そこの骨を再生させます。
 
2つ目は、歯がないところの骨をいかに維持するかというものです。歯周病が進行したり、歯が折れてしまったりした時、歯を抜かなくてはならないことがあります。
 
歯がなくなると大きく骨も失ってしまう可能性が高いのです。(骨も一緒にダメージを受けたり、また長い間支える歯がないと、骨自体が細くなっていってしまいます)
 
その可能性を減らすために、PRGFで骨を再生させ、歯のないところの骨を保ちます。
 
つまり、その後の治療(ブリッジや入れ歯、インプラント治療など)がスムーズに行えるよう整えていくということです。
 
3つ目は、インプラントの周りの骨が炎症(インプラント周囲炎)を起こした時に、その骨を再生させることにも応用できます。

 

骨の再生は3ヶ月が目安。治療中のタバコは控えることが大切

一般的な骨の再生は3か月を目安にしています。
 
歯周病も根っこの病気も抜いた後の骨の再生は3ヶ月程度です。
 
その後、かぶせものやインプラントを行ったりするなど、それぞれの治療に移っていきます。
 
また、タバコは血流が悪くなり、再生(治療)を阻害するので、治療中は禁煙をお勧めします。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

寿命が延びて長生きできるようになったこの時代に、できるだけ自分の歯を残したいと願う人は多いと思います。
 
一昔前なら抜くしかないと諦めていたことも、維持できる可能性があると、塚原宏泰先生が熱意をもって希望を持つことができる再生医療についてお話してくださいました。
 
引き続き、国民病ともいえる歯周病での再生医療についても教えていただきます。

 
取材日:2019年12月4日
 

プロフィール

医療法人社団宏礼会 理事長 / 院長
塚原 宏泰 歯科医師

 
<経歴>
1989年
日本大学松戸歯学部卒業
1989~98年
東京医科歯科大学第2口腔外科勤務
1998年~
東京都千代田区にて開業
2004~15年
東京医科歯科大学顎口腔外科客員臨床教授
2012年〜
日本大学松戸歯学部顎顔面外科兼任講師
神奈川歯科大学補綴科非常勤講師

 
<専門医・指導医>
1997年
日本口腔外科学会専門医
歯学博士
2002年
日本口腔外科学会指導医
日本顎関節学会専門医・指導医
2009年
日本顎顔面インプラント学会指導医