海外では常識の予防歯科!悪くする前に歯医者に行くこれだけのメリット

 
定期的に口内をメインテナンスすることで、虫歯や歯周病を未然に防ぐ予防歯科。
すでに欧米では一般的な歯科治療の考え方となっていますが、日本で注目され始めたのは最近のことです。
515名の女性に対して行ったアンケート調査によると、「予防歯科という言葉を知っていますか?」という質問に対して、「聞いたことがある程度でよく分からない」と答えた人が最も多い46.4%となりました(2016年4月)。
 
これらの数値からもわかるように、「予防歯科とは?」と聞かれても具体的になにをするのか認知度はあまり高くないようです。
厚生労働省の「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」においてもその重要性が説かれていますが、予防といっても具体的にはどのようなことをするのでしょうか?
(アンケート調査:ナイル株式会社実施)

 

1 予防歯科とは、なにをするのか?

みなさんが歯科医院へ行くきっかけは何でしょうか。
例えば「歯が痛くて我慢できないから」「かぶせ物が取れてしまったから」「歯茎がムズムズするから」など、何らかの症状が現われたときに行く人が多いと思います。
 
しかし痛みや違和感が出るのは、実は虫歯や歯周病の症状がかなり進行している状態です。ドリルでガリガリ削ったり、神経を抜いたり、なかには抜歯しなければならないときもあります。
このように手遅れになる前に、定期的にチェックしましょうというのが「予防歯科」の考えです。

 

2 予防歯科で防げるリスク

予防歯科ではおもに以下のようなリスクに対応できます。
 

(1)虫歯

虫歯は大きく分けると5段階に分類できます。
・初期虫歯のCOやC1のは見た目もさほど変わらない段階
・ C2は痛みはないが、目に見えて穴が開いている状態
・冷たいものがしみたり痛みを感じたりするのがC3です
・痛みを我慢した結果、根元まで到達してしまったのがC4です
 
この段階になると歯を抜かなければいけません。このように症状が進むにつれて、治療に伴う痛みも大きくなります。
予防歯科で早期のうちに発見してしまえば、フッ素塗布などの予防処置で治すことも可能です。
歯を削るドリルの記憶から歯医者が苦手という方にこそ、おすすめしたい治療法といえます。

 

(2)歯周病

歯周病とは、歯と歯茎の間に細菌が溜まって炎症を起こす病気です。
赤くなったり腫れたりしますが特に痛みはありません。しかし、放置していると歯槽骨(歯を支えている骨)が徐々に溶け出して歯茎がグラグラと不安定になり、最終的には歯がポロリと抜け落ちてしまいます。
日本では30歳以上の成人の約80%がかかっていると言われ、歯を失う原因の1位となっています。
予防歯科では歯周病の原因となる「歯石」「プラーク」などの除去を行ってくれます。
症状の進行を食い止められるので、定期的に行っておきたい治療の一つです。

 

(3)口臭問題

口臭の怖いところは、自分では臭いに気付けないというところです。
知らないうちに相手を不快にさせていたり、臭いが原因で恋人と別れたりというケースも珍しくありません。
予防歯科によって口の中を清潔に保つことで口臭の悪化を未然に防ぐことができます。

 

(4)歯の着色

ニッコリと笑ったとき、歯が汚れていると相手に不潔なイメージを与えてしまいます。
生活リズムの変化によって徐々に着色してしまうことがあるので、予防歯科で定期的にチェックやクリーニングしてもらうことが有効です。

 

(5)全身疾患

口臭の原因はほとんどが口内にあるのですが、まれに鼻や喉などの耳鼻科疾患や、肝臓や腎臓などの内科疾患など全身疾患が原因のケースもあります。
このように口臭チェックがきっかけで糖尿病が見つかったという事例もあるので、予防歯科のメインテナンスは定期的な健康診断のひとつとしても活用できます。

 

3 歯を「守る」治療

予防歯科の先進国は、北欧にある「スウェーデン」です。
世界に先駆けて、1970年に国家プロジェクトとして予防歯科をスタートさせました。
スウェーデンは現在、歯科疾患が最も少ない国と言われており、80歳でも約20本の歯が残っているそうです。
厚生労働省が平成23年に行った「歯科疾患実態調査」によると、日本の80~84歳における歯の数は、男性が平均13.6本、女性が平均11.0本ですから、改めて歯の多さに驚かされます。
 
スウェーデンも予防歯科を始めた直後は、年齢に対する残存歯(残っている歯)の数が日本とほぼ変わりませんでした。
しかし、歯のメインテナンスを長年続けてきた結果、今では80歳になったときに日本人の2倍近い数の歯を残すことに成功しています。
「歯が抜けるのは自然なこと」と思われがちですが、それは何も対策をしなかった場合なのです。
 
日本では予防歯科の認知度はまだまだ高いとは言えませんが、徐々に利用者が増えています。
公益社団法人日本歯科医師会の調査によると、歯科受診のきっかけとして「定期的に通う(チェック)時期だったから」と答えた人が2011 年には20.6%だったのに対して、2016年には32.0%と大幅に上昇しています。
 
予防歯科の登場によって歯科医院のイメージは変わりつつあります。
症状がひどくなる前に見つけて治すという点では「人間ドック」と同じです。
これからは歯を治すだけでなく、「歯を守る」ために通院する人が増えていくのではないでしょうか。

 

4 予防歯科ではおもにどんなことをするの?

このように予防歯科を取り入れることで得られるメリットは多くありますが、具体的にどのような診察や治療を行うのでしょうか。
代表的なものを紹介します。

 

(1)口腔内検査

いわゆる定期検診のことです。歯や歯茎の状態をチェックします。
異常が見つかれば治療を行います。痛みのない初期虫歯の段階で見つけられれば、歯を削ることなく治療することも可能です。

 

(2)スケーリング(歯石除去)

スケーラーと呼ばれる器具を使って、歯石を除去する治療です。
歯石は歯周病を悪化させるだけでなく、口臭の原因にもなります。接客業や管理職など人と接することが多い人におすすめです。

 

(3)PMTC(クリーニング)

PMTCとは、プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略で、簡単に言ってしまうと「プロによる歯のお掃除」です。
歯ブラシでは磨ききれなかった汚れを、プロがしっかりとクリーニングしてくれます。キレイになるだけでなく、お口の中がサッパリとするので病みつきになる人が多いようです。

 

(4)シーラント

シーラントとは、新しい歯が生えてきた直後に歯の溝をプラスチックで埋める方法です。溝が深いと食べかすが詰まりやすく、そこから虫歯になってしまいます。
自分は虫歯となる可能性が高いと感じている方などは、子どもの歯が生えてきたタイミングでシーラントは受けさせてみてはいかがでしょうか。

 

(5)フッ素コーティング

フッ素コーティングとは、歯の再石灰化を促す方法です。
以前は小さな虫歯もドリルで削っていましたが、フッ素コーティングならば削らずに覆うことで治療できます。
虫歯を初期の段階から見つけられる予防歯科ならではの治療といえるでしょう。

 

(6)ブラッシング指導

ブラッシングの正しいやり方を教えてくれます。
予防歯科は「プロケア」と「ホームケア」が両立して成り立つものです。正しく歯磨きをすれば虫歯や歯周病を防ぐことができます。
 
予防歯科といっても、このようにさまざまな治療方法があります。
クリニックによっては行っていないものもあるので、特定の治療を受けたいときは問い合わせをしてみましょう。

 

5 予防歯科のメリットまとめ

予防歯科を実践することで得られるメリットをまとめてみました。大きくわけると、ポイントは3つあります。

 

(1)虫歯や歯周病を未然に防げる

定期的にプロにチェックしてもらうことは、虫歯や歯周病の早期発見につながります。
症状が軽いものならば削らずに治せるので、見た目にもそれほど影響はありません。

 

(2)医療費の負担が軽くなる

虫歯や歯周病は症状が進むほど治療が大がかりなものとなって、費用も増えていきます。
予防歯科ならば治療も比較的簡単で、数ヶ月~半年に1回のメインテナンスが中心なので、虫歯や歯周病の悪化で手術を行うような場合と比較すると長い目で見た場合に負担を軽減できます。

 

(3)高齢になっても歯を多く残せる

予防歯科の先進国であるスウェーデンでは、80歳になっても平均20本の歯があると言われています。
これは日本の平均を大きく上回る数字です。こまめにメインテナンスをして、美しい歯を保ちましょう。
 
海外では子どものころから予防歯科が始められています。
虫歯を早期発見できれば痛い思いをせずに治せるので、日本と比べて歯医者に苦手意識を持つ人が少ないようです。
「ドリルの音が苦手」「痛いのは嫌い」「なるべく歯医者には行きたくない」という人こそ予防歯科を受けてみてはいかがでしょうか?

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

予防歯科という言葉自体、はじめて耳にしたという方も多いのではないでしょうか?
しかし実は、クリニックでは予防歯科を行っているところが日本でも既にたくさんあります。医科歯科.comから探してみてください。
たくさんのクリニックのなかから、予防歯科を行っている場所を検索することができます。

 
監修日:2019年11月26日
 

監修医 プロフィール

医療法人社団 輝 藤本歯科長洲医院
藤本 俊輝
歯学博士
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医