銀歯の現状
お口の中に1つくらい小さな銀歯が有るという方は、多くいらっしゃると思います。
日本では保険で治療を受けると、小さな虫歯はレジンという樹脂系の素材か、銀歯で治すことが多いです。
大きな虫歯は銀歯で治すというのが一般的で、患者さんに納得して貰える説明もされず、当たり前のようにそのような治療が行われているのが現状です。
銀歯は小さなもの(詰め物)をインレー、大きなもの(被せもの)をクラウンと言います。
インレーを用いて治療をするようになったのは1907年。
アメリカで、初めて鋳物として金属を溶かして型に流し込んで固めて作る方法が考えられ、1911年頃にクラウンが完成してから100年以上も同じ方法で治療されています。
ですが、この銀歯を用いた治療がスタンダードとして利用されている先進国は日本だけです。
他国を見てみると、ドイツやスウェーデンでは銀歯の口腔への使用が禁止されています。
銀歯は何で出来ているのか?
銀歯は銀だけではなく、正式には金銀パラジウム合金と言って、金・銀・銅・パラジウム・亜鉛・インジウム・イリジウム・すずの合金なのです。
この金銀パラジウム合金が、口腔内の唾液で溶かされたり腐食してイオンが流出してしまい、カラダの様々な場所に蓄積されることになります。
これらは数年かけて徐々に症状が出ることが多くみられるのですが、これが銀歯による金属アレルギーです。
その他に、同じ銀歯と呼ばれているものでもアマルガムという金属による治療もあるのですが、こちらには水銀が含まれていて更に身体への影響が心配されます。
又、銀歯の悪影響はアレルギーだけでなく他にもあります。
銀歯の2次弊害
銀歯を接着する時にセメントという接着材料を使うのですが、このセメントは唾液で徐々に溶けていくため、歯と銀歯の間に隙間ができてしまいます。
その隙間に虫歯菌が入り込んで同じところに虫歯が出来てしまうといったことが多く見られます。
これを2次カリエスと言って、1度治療した歯が2次カリエスになる確率は約80%と言われています。
さらに、2次カリエスになると歯の中心部にある神経に虫歯菌が侵入して、歯の根っこまでダメにしてしまうこともあり、最悪の場合抜歯することになってしまいます。
ある調査で銀歯がある方がどれくらいいるのか調べたところ、銀歯の保有率は全体の約70%で。その中で最も多い世代は40代で約80%にもなります。
古くなった銀歯を10年以上再治療せずに使い続けている方は約40%という結果も報告されていることから、かなり多くの方に銀歯が有り検査も治療も受けずに放置されているので、2次カリエスになるリスクを抱えていると言えるでしょう。
定期的な検診を受けることで2次カリエスになるリスクを下げることが出来るので、銀歯が有るけどしばらく検診を受けていない、という方は1度検診を受けることをおすすめします。
保険治療と自費治療
ではなぜ、歯にも身体にも良くないと言われている、このような銀歯治療がいまだに行われているのか?
それは銀歯を用いた治療には健康保険が適応されるから。
現在、日本には国民健康保険という諸外国にはない、非常にありがたい制度があります。
使い方では、大きな手術や治療にも適応され命を救われることもあるこの制度です。
しかし歯の治療、特に詰め物や被せ物となると歯科医師が治療前によく説明し、患者さんが理解して受診しないと、
ただただ早く安くできて痛みも無くなれば良いのか?
その後の事を考えずに長期間放置されて結果的に状況を悪くしてしまうことにもなりかねないのではないか?
という疑問がでてきます。
歯の治療において、保険を利用した治療が悪いわけではなく、しっかりと説明を受け理解して判断するように気を付けていただきたいのです。
その他、保険適応の虫歯治療にはコンポジットレジンという樹脂系の素材を使った治療もあります。
この素材はアレルギーが発現する可能性も低く良いのですが、やはり隙間が出来て2次カリエスになってしまうので、定期的な検査や再治療が必要になります。
また、被せ物には使用できないという欠点もあります。
何らかの理由で、銀歯やレジンで修復された歯を繰り返し治療すると、治療の度に歯が削られダメージを受けることになりますので放置することはおすすめ出来ません。
本来は、小さな虫歯治療はコンポジットレジンで治療をし、大きな虫歯はアレルギーの原因にならない劣化しにくい素材を使って治療することをおすすめします。
医科歯科ドットコムコメント
保険適応でない治療はハードルが高いかもしれませんが、後にさらに高額な治療が必要になったり、抜歯に至ってしまうリスクを考えると、これからの時代は保険治療だけに頼らず、どのような選択がベストなのかもう一度よく説明を受けて、銀歯を使用するリスクを理解し、ご自身で考え選択することが重要になるのではないでしょうか。
執筆日:2019年9月1日
プロフィール
フジタデンタルクリニック院長
1994年神奈川歯科大学卒業。
歯科医としてだけでなく過去に、デザイン、洋服のパーソナルコーディネーター、鎌倉のビーチハウスのプロデュースなども行っている。
2000年、フジタデンタルクリニック開業。
特定の派閥や勉強会に属さず、「精密治療」が話題の歯科医。