歯科医師が回答!「ホワイトニング歯磨き粉でできることには限界がある!」

 
最近、ホワイトニング効果をうたった歯磨き剤(歯磨きチューブ・デンタルリンスなど)がよく目につきます。
「科学的なことはよくわからないけれど、これだけ宣伝しているのだから、一定のホワイトニング効果はあるのでは?」と考えている人も多いのではないでしょうか。でも、ちょっと待ってください。
 
「歯を白くする」という目的は同じでも、デンタルクリニックやデンタルサロンなどでいう「ホワイトニング」と、「ホワイトニング歯磨き」とでは目的も歯を白くするしくみもまるで異なります。
だからといって「ホワイトニング歯磨きには効果がない」とか「使うべきではない」というわけではないのですが、目的やしくみの違いを正しく知ったうえで使ったほうがいいのではないでしょうか?

 

ホワイトニング歯磨きについて知りましょう

インターネット通販などで、よく「ホワイトニング専用歯磨き」などという歯磨き剤を見かけます。
メーカーや製品ごとに特長や成分が異なるので一概には言えないのですが、これらの歯磨き剤には、「○○成分を配合しており、歯本来の白さを取り戻します」といったコピーが添えられているものが多いようです。
 
そして、通販で販売される商品ですから当然といえば当然ですが、これらのほとんどの製品は医薬部外品です。
医薬部外品というのは薬事法上の区分では、厚生労働省が「治療」ではなく「予防・衛生」を目的として認可している製品です。なお、「薬用」という言葉が名前についている製品も、実際は医薬部外品であることがほとんど(医薬部外品として「薬用」という表示が認められている)ですから、「薬用と書いてあるから薬だ!」と思い込まないようにしてください。
 
もうひとつ付け加えると、現在はインターネット通販でもOTC医薬品(ドラッグストアなどで購入できる医薬品)は購入できますが、実店舗もなく、日本で市販されていない医薬品などを勝手に販売することは禁止されています。
このため、「薬局などでは購入できない、海外から輸入した特別な効果がある医薬品」のような印象を与えるホワイトニング歯磨きなどの広告を見かけても購入しないようにしてください。
そして、私たちが歯科医師の処方もなく正当に購入できるホワイトニング歯磨きには、デンタルクリニックでいう「ホワイトニング」の効果はありません。歯の汚れを落として歯本来の白さを取り戻すことは可能かもしれませんが、クリニックの「ホワイトニング」はそれとはちょっと意味が違うのです。

 

クリニックの「ホワイトニング」とは?

では、クリニックで行うホワイトニングとはどのようなものでしょうか?
これは、「歯の汚れを落として白くする」のではなく、「歯の表面に染み込んだ(入り込んだ)色素を分解して白くする」という施術です。
私たちの歯の表面はツルツルしているようですが、顕微鏡でみると、実は歯の表面には小さな穴が無数にあいています。
歯の黄ばみなどの着色は、この穴に食べ物の色素が入り込んでしまうために発生するのです。
 
もう少し正確に言うと、歯の表面のエナメル質は「エナメル小柱」という微小な棒状の組織がびっしりと並んでいます。
この棒状の先端部にわずかなすき間があり、これが結果的に「微小な穴」となっているわけです。
これは虫歯で生じた穴などとは桁が違う小ささで、歯ブラシの毛先などは到底入り込めません。
したがって、どんな歯磨き剤を使っても、歯の表面に入り込んだ色素を取り除くことはできないのです。
 
クリニックで行うホワイトニング(オフィスホワイトニング)では、過酸化水素という薬液を使います。
この薬液を歯の表面に浸透させ、強い光を当てて活性化します。すると、色素を構成する分子がバラバラに分解され、色が消えます(実際にはすっかり色が消えてしまうわけではなく、肉眼では色が感じられないレベルにバラバラになってしまうのですが)。
 
歯科医師の指導によって自宅でホワイトニングを行う「ホームホワイトニング」という方法では、過酸化水素ではなく、もう少し性質の穏やかな過酸化尿素という薬液を使いますが、原理は過酸化水素と同じです。
そして過酸化水素も過酸化尿素も「ホワイトニングに使用していいのは歯科医師だけ」と法律で定められていますから、市販のホワイトニング用品などに含まれることはありません。
 
もっとも、過酸化水素も過酸化尿素も、単に「それで歯を磨けばいい」というような安易な薬液ではありません。また、歯科医師の管理のもとで使用する限り危険はほぼないのですが、用法を知らない一般人が使うのは危険です。
 
このように、市販のホワイトニング歯磨きとデンタルクリニックのホワイトニングはまったく異なるものです。このため、「ホワイトニング歯磨きにはホワイトニング効果があるのでは?」という疑問自体がナンセンスということになってしまいます。

 

ホワイトニングの歯磨き粉でできること

歯の黄ばみや黒ずみ、あるいは食べ物の色素による着色汚れなどは、歯の表面の汚れを落とすことである程度白くできる(歯のもつ本来の白さを回復できる)可能性があります。
ですから、「ホワイトニング」をうたっている歯磨き剤などを使うことは決して悪いことではありません。
ただしそれは、ここでご説明したように、デンタルクリニックで行われるホワイトニングとはまったく別物であることは理解しておいてください。
 
また、歯磨き剤を使って歯の表面をきれいにすることにも限界があります。
ゴシゴシ磨いて歯の表面を傷つけると、一時的に光が乱反射して「歯が白くなった」と錯覚することがありますが、それはあくまでも一時的な効果です。
実際には歯の表面のエナメル質が削れてしまい、歯を弱くする原因にもなりますし、虫歯の原因にもなります。
 
そして、エナメル質が薄くなるとエナメル質の奥にある「象牙質」という層が透けて見えやすくなります。
象牙質は黄色味を帯びたクリーム色(いわゆる象牙色)をしていますから、歯を磨きすぎることによってますます歯が黄色くなってしまうという悪循環にもなりかねません。
歯をきれいに磨いても白くならない場合は、やはりデンタルクリニックでホワイトニングを受けることを検討したほうがよさそうです。

 

気になる歯の黄ばみの原因は?どうすれば白くなるの?

毎日鏡で見ていると気が付きませんが、長い目で見れば口の中の状態は意外と変化しているものです。
 
その代表が、時間の経過に伴って起こりがちな歯の黄ばみです。白く整った歯が健康的でさわやかな印象を与える一方で、歯が黄ばんでいると年齢より老けて見られたり、だらしない印象を持たれたりと、知らず知らずのうちに損をしていることもあります。つい見落としがちな歯の黄ばみについて、その原因と治療法を紹介します。

 

歯の色を決めるのは象牙質の色

一般に「歯の色は白」だとされていますが、実は一人ひとり個人差があり、真っ白というわけではありません。
歯の構造は、一番真ん中に「神経(歯髄)」、その周りに「象牙質」の層、そのさらに外側に「エナメル質」の層が重なる三重構造になっています。
このうち、象牙質は黄色みがかった象牙色、エナメル質は透明感のある白色です。
外から見たときの歯の色は、エナメル質の透明な白を通して見えている象牙質の色なのです。
なお、象牙質の色には個人差があり、白っぽい人もいれば黄色みが強い人もいます。また、加齢によっても変化します。

 

歯が黄ばむ原因は、内側からの変化と外側からの変化

歯の黄ばみの原因は、大きく「歯の内部からの変化」と「歯の外側の変化」に分類できます。
具体的には次のような原因が挙げられます。

 

【歯の内部からの変化】

●加齢
歯の象牙質は、生えてきたばかりのときは薄いクリーム色であることが多いのですが、時間の経過によって徐々に黄色みが濃くなります。
一方、歯の表面を覆うエナメル質は、長年使っていくうちに磨り減って薄くなり、より象牙質の色を透過しやすくなります。
その結果、年齢が上がるにつれて歯が黄ばんで見えるようになるのです。
 
なお、「歯を噛み締める癖や歯ぎしりの癖がある」「ブラッシングの際に力を入れすぎる」「目の粗い研磨剤(物理的に汚れを落とすために歯磨き粉に配合される成分)入りの歯磨き粉を使っている」といった場合は、エナメル質が削られる速度が速まってしまい、歯の黄ばみの進行も早くなりますので注意が必要です。
 
●薬の影響
ケースとしては限定的ですが、昭和40年代に風邪薬のシロップなどで使用された「テトラサイクリン系抗生物質」を、0~8歳頃までに大量摂取した場合、歯の色が徐々に濃い褐色へと変化していくことが知られています。
 

【歯の外部からの変化】

●食べ物や飲み物による着色汚れ
コーヒーや赤ワイン、紅茶、カレーなど、色の濃い食べ物や飲み物を日常的に摂取して いると、歯の表面に少しずつ着色汚れ(ステイン)が付着します。
ステインは強力に歯に付着しますので、ブラッシングだけではなかなか落とせません。
年月が経つうちにエナメル質の表面だけでなく、エナメル質の内部にも着色汚れが沈着してしまうこともあります。
 
●タバコによるヤニ汚れ
日常的にタバコを吸う場合は、食べ物や飲み物と同じように歯の表面にヤニ汚れが沈着します。

 

それぞれの原因に合った対処が大事

加齢やテトラサイクリン系抗生物質の影響など、「歯の内部からの変化」による黄ばみを直接止める方法はありません。
「ホワイトニング効果のある歯磨き粉」を使えば歯を白くできそうに思えますが、ホワイトニング効果をうたう歯磨き粉は、基本的に汚れを落とすことで歯を白くする物です。
 
そのため、内部の変化による黄ばみには、効果は期待できません。
歯の内部の変化により黄ばんでしまった歯を白くするには、歯科医院でホワイトニングを受けるのが最も良い方法です。
また、歯の表面に付け爪のような薄い板をつけて、見た目を改善する「ラミネートベニア」や被せ物で見た目を改善する方法もありますので、まずは歯科医師に相談してみると良いでしょう。
 
一方、「歯の外部の着色汚れ」が原因の場合は、歯科医院でのホワイトニングはもちろん、歯科医院で受けるプロによる歯のクリーニング(PMTC)、ホワイトニング効果のある歯磨き粉、歯の汚れを落とす専用のメラミンスポンジ(歯の消しゴム)などで汚れを除去し、歯の白さを取り戻すことができます。
 
一口に「歯の黄ばみ」といっても、原因がどこにあるのかによって正しい対処法は異なります。
自分で判断が難しいときや効果的な対処法を知りたいときは、まず歯科医院を訪れてアドバイスを受けてみるのがおすすめです。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

クリニックでホワイトニングをしてもらった方がいいには違いないのでしょうが、とはいえ実際にいくらかかるのかが不透明でなかなか踏み出しにくいですよね。
そうした方は医科歯科.comをぜひ使ってみてください!
クリニック毎のホワイトニングの値段が記載されているので、納得のいく状態で予約をすることができるのではないでしょうか。
歯を白くするにも色々やりかたがありますが、適切なやりかたをみつけるにはまず歯の黄ばみの原因を特定する必要があるんですね、、、これは歯医者さんに任せた方が良さそうです(笑)

 
監修日:2020年2月12日
 

監修医 プロフィール

医療法人社団 輝 藤本歯科長洲医院
藤本 俊輝
歯学博士
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医