ドラッグストアの歯ブラシコーナーへ行けば、これでもかというほど並んでいるデンタルグッズ。
歯医者さんの受付でも売られていますが、取り扱っている品物は同じではありません。
「歯医者さんに置いていないものがたくさんあるけれど、いったいなぜ?」
「やっぱり歯医者さんで売っているものを使った方がいいの?」
と疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は歯医者さんに置いているデンタルグッズは「歯科専売品」であり、一般のドラッグストアでは買うことはできないものばかりです。
では、一体何が違うのでしょうか? デンタルケア用品選びに役立つ、両者の違いを紹介します。
万人向けのものか、少人数向けの専門の道具か
一般のドラッグストアで売られている市販品と歯医者さんの歯科専売品のデンタルグッズの違いは、ひと言で説明すると「誰にでも使える品」か「細かい状況に合わせた専用の道具」かという点です。
市販品として販売するにはJIS規格(日本工業規格)を満たす必要があり、例えば歯ブラシなら毛先の長さを変更することはできません。
用途によってグリップの形状や毛の硬さに違いはあるものの、あくまで規格内での違いです。
一方、歯科専売品は規格に関係なく作ることができるので、それぞれのメーカーで積み重ねられた長年の研究を活かし、より力加減を調整しやすかったり歯並びに合わせたりできる製品が作られています。
例えるなら、市販品の歯ブラシは家庭用万能包丁のようなもので、肉でも魚でも野菜でもある程度は切れるかわりに、特段何が切りやすいというものはないものです。
誰がどのように使っても、そこそこプラークや汚れを落とせるような設計になっています。
それに対して歯科専売品の歯ブラシは刺身包丁やそば包丁のようなものです。
「歯周ポケットが深い人用」「歯肉炎の人用」など、用途に応じてそれぞれ違う設計がされており、自分にピッタリのものを選んで正しく使えば、最も効率よくプラークや汚れを落とせるようになっているということです。
キシリトールガムは配合率に注目
歯ブラシや歯磨き粉といったデンタルグッズだけでなく、キシリトールガムについても市販のものと歯科専売のものでは違いがあります。
キシリトールというのは糖アルコールの一種で、天然の代用甘味料です。
ほかの糖アルコールと同様に唾液の分泌促進と歯の再石灰化作用(細菌の酸により溶かされた歯が元に戻る作用)があります。
またキシリトールだけの特徴として細菌の餌にならず、歯垢中の酸の中和を促進する、虫歯菌の代謝を阻害するという働きがあるために、虫歯予防に役立ちます。
※<参考>キシリトール(厚生労働省 e-ヘルスネット)
ただ市販のキシリトールガムの場合、キシリトール率は約50%前後で、そのほかの部分は細菌の餌にもなる別の糖が含まれているものが大半です。
これに対して、歯科専売のキシリトールガムはキシリトール率97~98%で余計な糖分をほとんど含まないのが特徴で、それだけ高い虫歯予防効果が期待できるものになっています。
アドバイスを受けて選ぶことが大事
ではこれらを踏まえて、最初の疑問「結局どちらを使うべきなのか?」についてはどう考えればよいのでしょうか。
いろいろ選べると迷ってしまいますが、歯磨きや口内ケアは虫歯・歯周病の予防のために行うものです。
なので「現状のやり方でしっかり予防ができている」かどうかを基準にするのが一番です。
市販のデンタルグッズでしっかり汚れが落とせて、口の中の健康が維持できているなら特段変える必要はないでしょう。
しかし「歯磨きしているのに虫歯ができてしまう」「磨き残しが多いと言われた」など、気になることがあるのなら、デンタルグッズの選び方や使い方を見直してみるのがおすすめです。
歯科専売品の一番のメリットは、歯の専門家である歯科医師や歯科衛生士に、自分にピッタリのものを選んでもらえることと、効果的な使い方を直接教えてもらえることにあります。
気になることがあるのなら、健診の際に、歯科医院にて相談してみるとよいでしょう。
市販品に比べより細かい用途に合わせて設計された歯科専売品は、専門家にアドバイスを受けて正しい使い方をすることで高い予防効果を発揮します。
中にはネットショップで購入できるものもありますが、最初の購入に際しては、必ず実際に歯科医師や衛生士に相談して選んでもらうのが効果的です。
監修日:2020年2月4日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医