危険です!治療していないのに痛い虫歯が痛くなくなった場合は注意

虫歯と言うと子供に多い歯科疾患と思われがちですが、実は近年、子供の虫歯は減少傾向にあります。
そして、その一方で増えているのが大人の虫歯です。
虫歯=痛いと思われがちですが、大人の虫歯は痛みにくいため、気付いたころには歯の神経を抜かなければいけないほど重症化してしまっていることも少なくありません。
今回は知らないうちにジワジワと進行する「大人虫歯」について解説したいと思います。

 

「大人の虫歯」は痛くない!?

厚生労働省の学校保健統計調査(平成27年度)によると、虫歯が見つかった幼稚園児は、平成17年度だと54.39 %であったのに対して、平成27年度には36.23 %となっています。
その他の区分である小学校・中学校・高等学校も同様で、ここ10年間で虫歯は減少傾向にあるようです。
これは予防歯科への関心の高まっていることに加えて、フッ素入りデンタルケア商品の普及、そして親御さんたちの努力の成果と言えるでしょう。
虫歯に悩む子供が少なくなっているというのは、非常に喜ばしいことです。

<参考>厚生労働省「学校保健統計調査」平成28年度および平成18年度

しかし、その反面、増加傾向にあるのが「大人の虫歯」です。
虫歯になると歯の内部にある神経が刺激されるためにズキズキと痛むわけですが、大人の場合は虫歯の侵蝕がゆっくりと進行するため子供の急性に進む虫歯で痛みを感じる場合と異なり、それほど痛みを感じなくなるのです。
 
とはいえ、これは痛みを感じにくくなっているだけで虫歯が治っているわけではありません。
「痛くないから虫歯もないはずだ」と思っていたら症状がかなり進行していた、ということも多いのです。
「痛み」を通院の目安にしている人は、一度検査してもらった方が良いかもしれません。

 

痛くないのに削らないといけないの?

以前は「虫歯になったらあとは進行するだけ。削るしかない」という考えが主流でした。
しかし、虫歯の研究が進んだ今、「症状が軽く、なおかつ痛みを感じていない状態ならば無理に削らない」というのが歯科医師における一般的な考えとなっています。
虫歯だからといって見境なくガリガリ削ってしまうと健康な歯がほとんど無くなってしまうためです。
 
歯を削るか削らないかの判断の一つとして「虫歯の種類」があります。
一口に虫歯といっても、進行のスピードによって以下の2つに分けることが可能です。

 

①進行性う蝕

●急速に進行する虫歯のこと
●子供に多い
●触ると柔らかい
●黄色または薄茶色

 

②停止性う蝕

●進行が遅い虫歯のこと。
●大人に多い。
●触ると硬い。
●茶色または黒色。
 
このうち、進行性う蝕の場合は削る可能性が高いのですが、停止性う蝕の場合はセルフケア指導を含めた経過観察を行うことも少なくありません。
どちらのタイプの虫歯であるのか微妙なケースもあるので、自分で判断をせずに、一度診察を受けてみてください。

 

痛みが消えたら要注意!

大人の虫歯は痛みを感じにくいと言いましたが、「痛みのある虫歯が治療していないのに痛くなくなった」という場合は非常に危険です。
この場合、歯髄が死んでしまった可能性があります。
歯髄とは、いわゆる「歯の神経」のことで、歯に異常が生じたときに知らせてくれるセンサーの事で、痛みを伝えるのと同時に歯に栄養を送り届けるという大切な役目を担っています。
この歯髄は非常にデリケートな組織となっていて、虫歯菌に侵されると炎症を起こし、やがては死んでしまうのです。
 
歯髄の死は、歯の死を意味しています。
他の歯と比べて色がくすんでしまうほか、強度も下がるため、硬いものを食べたりすると割れてしまうこともあります。
また歯髄が死んでしまった歯は痛みを感じなくなります。
次に虫歯や歯周病になったときに気付きにくく、重症化しやすいので注意が必要です。
現在、歯髄を再生させる研究が行われていますが未だ実用化には至っていません。
取り返しのつかないことになる前に、定期的に検診を受けて、未然に防ぐようにしましょう。

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

痛みがなくなったと思ったら歯の神経が機能しなくなっているなんて、恐ろしいです…。
やはり、痛みの有無にかかわらず、未然に虫歯を防ぐことが重要なようですね。
医科歯科.comは、患者さんと一緒に虫歯予防に取り組んでくださるお医者さんを紹介しています。
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監修日:2020年1月21日
 

監修医 プロフィール

医療法人社団 輝 藤本歯科長洲医院
藤本 俊輝
歯学博士
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医