皆さんはけがや虫歯で歯を失ったとき、自分の歯を移植することができるということをご存知でしょうか?実際は症状によって適さない場合もありますが、インプラントや入れ歯などの人工物を使わないという点が魅力的に感じます。歯の移植をおこなっている「中村歯科クリニック」院長の中村貴則(なかむらたかのり)歯科医師にお話を伺いました。
けがや虫歯で歯を失っても、歯を移植することができる可能性があります
――歯を移植することができると聞きましたが、どういうものですか?
歯の移植について初めて聞いたという方も多いと思いますが、親知らずや噛み合わせに使われていない歯を、傷んでしまった奥歯など代わりに必要な場所に移し替える治療法です。
移植には特に親知らずが多く使われます。親知らずは奥歯ですので、6歳臼歯や12歳臼歯が傷んで抜かないといけない、けがで歯が割れてしまった場合などに、元のように噛めることを目標として、その抜歯した場所に移植することが多いです。
――歯を移植したらすぐにくっつくのですか?
患者さんからも、「移植したらすぐにくっつくのですか?」とよく聞かれます。残念ながら、すぐに定着してその日のうちに何でも噛めるようになるわけではありません。
流れとしては、移植先となる抜歯箇所の除菌をした後に歯の移植をします。はじめはグラつくので動かないように固定して、だいたい2~3か月経つと普通に食事ができるようになります。
固定期間自体は1か月程度で、特にその間はあまり移植した歯の方で硬いものを噛まないよう気を付けていただきます。けがしたところと同じように、労わりながら治りを待っていただきます。
歯の根っこの形はそれぞれ違い、移植することは簡単ではありません
――歯の移植は簡単にできるものですか?
歯の根っこの形はそれぞれ違っていて、まったく同じ形のものはありません。抜歯後の穴の形と、移植する歯の根っこの形が合うように、微調整してから移植をします。
すでに歯がなく穴が埋まってしまっている場合は、歯の根っこが入るように穴を作って移植をしていきます。
編集部コメント:適さない場合もあるが、いざという時は相談してみましょう
「中村歯科クリニック」院長の中村貴則(なかむらたかのり)歯科医師に、歯の移植について教えていただきました。自分の歯を移植するのは、人工物を入れるより抵抗感が少ないように思います。
しかし、奥歯の根っこは複雑で、歯を移植することは簡単ではないようです。微調整が必要であったり、症状によっては適さない場合もありますが、いざという時は相談してみるのもいいかも知れませんね。
取材日:2019年11月28日
プロフィール
中村貴則(なかむらたかのり)歯科医師
<経歴>
平成11年3月 神奈川大学附属高等学校卒業
平成11年4月 日本歯科大学歯学部入学(剣道部に所属)
平成17年3月 日本歯科大学歯学部卒業(学術優秀賞)
平成17年4月~平成22年7月 医療法人社団歯愛会 須貝歯科医院 勤務
平成22年7月~ 医療法人社団健歯会 中村歯科クリニックでの診療開始
<資格>
日本歯周病学会 認定医