歯科のインプラント治療とは、人工的な歯の根を使って失った歯を補う治療法のことです。
「自分の歯で問題なく噛めている」という人にはあまり縁がないものかもしれません。
ただ歯科クリニックのホームページや歯科情報サイトでよく紹介されているので、「インプラント」という名称自体は聞いたことがあるという方も多いことでしょう。
歯の根を人工的に補うという治療法は昔からありましたが、日本で現在のようなインプラント治療が普及し始めたのは1980年代以降のことです。
比較的新しい治療法であるためか、インプラントに関する情報は推進派・反対派の双方により、そのメリット又はデメリットばかりが強調されがちです。
しかし、ほかの治療法と同じように、もちろんメリットもあればデメリットもあります。
インプラント治療とはどういうものなのか、ほかの治療法とも比較しながら、その特徴をご紹介します。
歯を失った時の治療法は3種類
事故や病気で歯を根元から失ってしまった場合、そのままにしておくと周りの歯が動いて噛み合わせが悪くなるといった悪影響が出てしまいます。
そのため、歯の隙間は埋めておく必要があります。治療法は次の3種類です。
①ブリッジ
抜歯箇所の前後の歯を円柱形に削り、その前後の歯を支柱にして橋(ブリッジ)をかけるように3本分の人工の歯をかぶせる方法です。
②部分入れ歯
両側にバネがついた義歯を作り、失った歯の前後にある歯にバネを引っ掛けて義歯を固定する方法です。
③インプラント
抜歯箇所のあごの骨にネジのようなチタン製の人工の歯の根を埋め込み、その上にセラミック製など人工の歯をかぶせる方法です。
上の2つと違い、埋め込んだ歯の根に固定することで人工の歯を安定させます。
それぞれのメリット・デメリットは?
3つの治療法はそれぞれにメリット・デメリットがあります。
①ブリッジのメリット・デメリット
ブリッジは、装着に違和感が少ないのが特徴です。
また両側の歯で人工の歯をしっかり支えているので、支柱となる歯に問題がなければ噛み心地は天然の歯とそれほど変わらず、快適な使用感が得られます。
素材の制限はありますが、保険適用内での治療も可能です。
一方デメリットは、支柱となる両側の健康な歯を削らなくてはならないということです。
支柱となる歯には大きな負担がかかるので、歯周病などと相まって、将来その歯を失う原因になることもあります。
また、基本的にこの治療法は1~2本用で、歯を失った部分が広範囲に及ぶと、この治療法自体が使えなくなってしまいます。
②部分入れ歯のメリット・デメリット
部分入れ歯は両隣の歯を削ったりすることがほとんどないのがメリットです。
ブリッジ同様に健康な周囲の歯を利用して義歯を固定する方法ですが、ブリッジでは対応できない広範囲の治療にも対応できます。
また、素材の制限はありますが、保険適用の範囲内での治療も可能です。
一方、ブリッジと比べてガタつきやすいことや、金属のバネが見えてしまうので見た目が不自然なこと、また噛む力が健康な歯の6割ほどしか入らないことなどがデメリットとしてあげられます。
バネをかけている歯に負担がかかるので、将来的にその歯を失う原因になることもあります。
ただし、周囲の歯への負担としてはブリッジより少ないと言えるでしょう。
③インプラントのメリット・デメリット
インプラントの最大の特徴は、人工の歯の根を顎の骨に埋め込み、それにかぶせる形で人工の歯を固定するため、隣の健康な歯に負担をかけずに済むことです。
また、しっかりと固定されるため噛む力は強く、硬いものでも噛むことができます。
見た目はほかの歯と変わらないのも、大きなメリットです。
一方デメリットは、保険適用外で外科手術が必要となるため治療費が高いことです。
使う素材やあごの骨の状態によっても変わりますが、費用は1本およそ30万~45万円が相場と言われています。
また人工の歯の根を顎の骨に結合する手術が必要なので、糖尿病や骨粗しょう症といった疾患がある等、全身の状態が悪い場合は、制約受ける事があります。
また顎の骨が痩せていたり、幅が狭い場合は、手術が難しかったり、事前に骨量を増やす手術が必要になったりする場合もあります。
インプラントと「かぶせ物」は何が違うの?
インプラントと同じように見えるもので「かぶせ物」がありますが、見た目は似ていても根本的に別のものです。
インプラントが「歯を根ごと失ってしまった場合」に用いる方法なのに対し、かぶせ物は「歯の上の部分は失ってしまったけれど、根はまだ残っている状態」というときの治療法として用いられます。
歯の根の治療(根管治療)を行った後に金属やプラスチック製の土台を入れ、最後にかぶせ物をします。
歯の根が残っていなければできない治療法であるところが、インプラントとの最大の違いです。
このように歯を失った場合の治療法には、いくつかの選択肢があります。
どんな治療法が良いかは、自分にとって何が一番大事かによっても変わってきます。
それぞれの特徴を踏まえて、治療法を選ぶ際の参考にしてみてください。
医科歯科ドットコム編集部コメント
インプラントやその他の治療法のメリット・デメリットを考えながら、治療法を選んでいく必要があるのですね。
そして同じ治療法であっても、クリニック毎にその内容や方針は異なります。
そうした点を確認するのには、医科歯科.comをぜひご利用ください。
監修日:2020年1月21日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医