普段私たちが特に意識することもなく使っている「歯」。
ほとんどの場合は乳歯を経て永久歯に生え変わり、現在に至っているわけですが、なぜわざわざ一度だけ生え変わるのか疑問を持ったことはないでしょうか?
思えば、爪や髪などはすべて伸びるのに、歯だけ生え変わるというのは不思議な話です。
ここではそんな「歯の生え変わり」の秘密を紹介します。
乳歯から永久歯への生え変わりは、無理なく大人になるためのステップ
実は「乳歯から永久歯へ生え変わる」というしくみを持っているのは人間だけではありません。
イヌやネコ、サルをはじめ、ほとんどの哺乳類に共通する「二生歯性」と呼ばれる生態です(哺乳類でも「げっ歯類」やゾウは除きます)。
なぜ、わざわざ乳歯と永久歯という2段階構造になっているかというと、赤ん坊のときは顎が狭く、最初から大人の歯を並べようとしても収まり切らないというのが理由です。
そのため、最初に生える乳歯の数は永久歯より少なく、歯の大きさも小さくなっており、骨格が十分に成長した頃を見計らって抜け落ち、体と顎の大きさに見合った永久歯と交代するというシステムを取っているのです。
ちなみに永久歯の種となる「歯胚」の多くは、生まれたときにはすでに歯茎の中に準備されています。
サメなどの場合はこの歯胚が次々に出てくるので、何度でも歯が生え変わります。
しかし、人間の場合は通常1回分しかないので、歯が生え変わるのも1回だけというわけです。
進化?退化?乳歯が生え変わらない人が増加中
人間の場合、乳歯は全部で20本、永久歯は親知らずまで含めると32本生えます。
しかし、現在では永久歯32本すべて自然ときれいに並ぶ人はそう多くはありません。
理由は、人間の顎が徐々に小さくなっているためで、歯が並びきるのに必要なスペースが確保できないためです。
また、最近では、乳歯が生え変わらないまま大人になる「大人乳歯」の人が増えているといわれています。
2010年に日本小児歯科学会が全国の7歳以上の子供15,000人を調べた結果でも、10人に1人の割合で永久歯が生えない「欠損歯(先天性欠如)」の子供がいると発表されています。
その場合、生えてこなかった歯は大人になっても乳歯のままです。
一般的に乳歯は、永久歯が生えてくるのに合わせて歯根が吸収され、自然に抜け落ちます。
しかし、永久歯が生えてこない場合は歯根が吸収されることもなく、そのまま大人になります。
ただし、歯根は経年によって徐々に吸収されるので、20~30代になると自然に抜けてしまう例が多いようです。
この場合、抜けた場所から新たに永久歯は生えてこないので、空いた場所を矯正治療によって隣接する歯を寄せて埋めるか、ブリッジやインプラントなど人工の歯で埋めて噛み合わせを整える必要があります。
「大人乳歯」の原因ははっきりとはわかっていませんが、1~2本程度が欠如する原因は、食生活の変化で柔らかい食べ物が中心となったことに適応した結果ではないかと考えられています。
このほかにも、顎の骨格が狭くなったことで親知らずが生えない人が増えているなど、私たちの体も長い年月の中で環境に合わせて少しずつ変化しています。
今後の生活習慣によって、未来には歯の生え変わりの時期が遅く/早くなったり、生え変わりそのものがなくなったりすることが、もしかしたらあるのかもしれませんね。
医科歯科ドットコム編集部コメント
ひとによって生え変わりの時期も、生え変わるかどうかも違うんですね~。
心配な方は一度クリニックを受診してみるといいかもしれませんね。
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監修日:2020年1月17日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医