「虫歯は痛いし嫌だけど、命に関わるわけじゃないし」と、毎日の歯磨きがおざなりになってしまうこともあるのでは。
しかし、本当に「命に関わるわけじゃない」のでしょうか?実は、放置した虫歯は全身に影響を及ぼす可能性があり、中には死に至るケースもあるのです。
今回は、虫歯とはどんな病気なのかという基本のおさらいをしつつ、その治療法と虫歯の原因、またその影響についてご紹介します。
なぜ虫歯になるの?
虫歯は、口の中に存在する300~400種の細菌のうち、「ミュータンス菌」と「ラクトバチルス菌」の2つの虫歯の原因菌によって発生します。
いわゆる「虫歯菌」として有名なのは「ミュータンス菌」ですね。ミュータンス菌は、感染している人の唾液を介して人に感染します。
そのため、幼少期に大人と同じ食器を共有することによって感染する場合がほとんどです。
日本人の成人のうち、実に半数以上がミュータンス菌を保有していると言われています。
虫歯の第一段階は、このミュータンス菌が歯の表面に付着する感染からスタートします。
虫歯になるまでの流れって?
歯の表面に付着したミュータンス菌は、食べ物に含まれる「糖」を分解してネバネバした物質を作ります。
これが別の細菌を引き寄せ、細菌の塊である「歯垢(プラーク)」になり、酸を作り出します。
細菌が作り出す酸によって歯からカルシウムやリン酸が溶け出すことを脱灰といい、この状態が進んでしまうと、歯を溶かしてしまい虫歯になります。
しかし、「ミュータンス菌」と「糖」だけで虫歯になることはありません。
毎日一生懸命に歯磨きをしているのに虫歯になってしまう人と、適当にブラッシングしているようでいて虫歯になりにくい人がいることからも分かるように、「歯の質」が大きく影響してきます。
「ミュータンス菌」と「糖」「歯の質」の3つの要素が口の中で重なり合う時間が継続することによって、虫歯が発生する考えれば良いでしょう。
進行度ごとの症状は以下の通りです。なお、歯科治療では進行度に合わせてC0からC4と呼んでいます。
進行度 無:CO(シーオー)
歯の表面を覆うエナメル質がミュータンス菌に侵食されている状態。
痛みなどはなく、プラークを取り除くことで再石灰化をうながすことで自然治癒する可能性も高いです。
進行度 低:C1
歯の表面、ツルツルしたエナメル質の部分に虫歯が発生している状態です。
自覚症状は少なく、発見できれば簡単な治療で済みます。
進行度 中:C2
歯の表面が溶け、象牙質まで達した状態。
冷たいものがしみるという自覚症状が出ることもあります。
進行度 高:C3
虫歯が歯髄(神経)まで達した状態です。
何もしなくても痛みがあり、冷たいものだけでなく温かいものもしみるようになります。
進行度 危:C4
C3の状態がさらに進み、根元以外の歯がなくなってしまいます。
神経が死んでしまうので痛みは感じませんが、放置していると膿が溜まったり、細菌が歯の内部に入り込んで顎や頬が腫れあがったりすることもあります。
ここまで進行すると、抜歯しなければならないことがほとんどです。
虫歯は再発する?
虫歯の再発率はかなり高く、治療終了=完治というよりも「予防の始まり」に近いのが現実です。
歯をすべてかぶせ物で覆ってしまえば、通常の虫歯のように歯の表面から溶けていくことはありませんが、虫歯菌はかぶせ物と歯茎の境目から侵入してくるのです。
・年齢とともに歯茎が下がってきた
・かぶせ物をしてからかなり時間が経っている
・かぶせ物が緩いような気がする
上記のような場合は要注意! かぶせ物を外したら虫歯だらけ、ということがないよう、1度しっかり点検してもらいましょう。
かぶせ物をした歯は、表面よりも境目に気を付けてブラッシングすると良さそうですね。
虫歯が全身に影響する!?
「生死に関わるわけではない」とつい放置しがちな虫歯。
しかし、本当にそうなのでしょうか? 最新の研究では、虫歯菌が全身疾患に大きく影響することがわかってきました。
虫歯を放置した結果、菌血症から敗血症になり、細菌が脳に達したりして死に至ったという例も世界中で報告されています。
副鼻腔炎(上顎洞園)
上顎の奥歯の虫歯を放置していると、細菌が副鼻腔(上顎洞)に達して副鼻腔炎(上顎洞炎)をひき起こし、蓄膿症とも呼ばれます。
脳梗塞や心筋梗塞
虫歯菌が血液に入り込んで全身に流れることにより、脳梗塞や心筋梗塞を誘発することがあります。
潰瘍性大腸炎などのリスクが高まるのも、同様の理由によるものと考えられます。
高齢の方の場合、肺炎の原因となることも少なくありません。
このように虫歯は誰にも発生しやすい疾患であり、再発率も高いです。
身近であるが故に甘く見てしまいがちですが、基礎疾患を持っている方は特に症状が悪化しやすい傾向にあります。
その一瞬の油断が文字通り命取りになりかねないということを肝に銘じ、定期的な検診で予防に努めましょう。
医科歯科ドットコム編集部コメント
あまり大ごとに思わない虫歯ですが、実はそれが死に至る病気でもあるとは考えもしませんでした。
しっかりと気をつけていかないといけないですね。
この記事を読んで少しでも不安に思ったなら、これを機にひとまず歯医者さんへ行くのも良いかもしれません。
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監修日:2020年1月20日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医