【現役歯科医師に聞く】マウスピース矯正が流行ってますが矯正治療で注意することはありますか?

 
現役の歯科医師である佐藤美嘉(さとうみか)歯科医師にインタビューし、矯正治療を行う際の注意点について教えていただきました。最近SNSの広告でよく見かけるマウスピース矯正ですが、適さない症例もありよく吟味する必要があるようです。また、乳幼児のおしゃぶりや指しゃぶりが歯並びに与える影響についても伺っています。
 

矯正治療で注意することはありますか?

近年マウスピース矯正というものが流行っていますが、こちらは全ての方に対して対応可能な治療法ではありません。矯正治療をする前によく吟味して欲しいと感じています。ブラケット矯正で、表側だとワイヤーやブラケットが見えて嫌だという方がほとんどだと思います。そういった方にマウスピース以外におすすめなのが、以下のような治療法です。
 
1.舌側で行うことができる舌側矯正(裏側矯正)
2.ホワイトのブラケットやホワイトワイヤーによる唇側矯正(歯と近い白色を使うことで目立ちにくくします)
3.ブラケットがよく見えてしまう上を舌側にし、下を唇側で行う舌側唇側矯正
 
歯科医師とよく相談のうえ、ご自身にあった最適な治療法をお選びになることをお勧めします。ブラケット矯正は2年間くらいで全体的な矯正治療を終えることができます。マウスピースだけに頼りマウスピース矯正が素晴らしいというようには思わないで欲しいなと思います。
 

子どものうちに矯正すれば歯を抜かないで済みますか?

矯正時の抜歯についてはケースバイケースです。一般的に身長の伸びと下顎の成長は比例すると言われています。そのため、身長の高い人は顎が出ている傾向があります。
 
例えば、アントニオ猪木さんですと2メートル近い身長があり顎が出ています。成長と共に顎も発達するため、早めに治療をしたからといって歯を抜かなくて良いかというとケースバイケースです。
 
しかし、早めに治療することによって、12歳以降の生えそろってからの対応は何もしない場合と比較すると変わると思います。また、原因が骨格性か歯槽性(しそうせい)かによっても大きく変わります。骨格性の場合は顎骨を削る必要も出てきます。
 
歯を抜くかどうかは歯科医師の中でも選択が分かれます。そのため、自分にあった治療法を患者さんが選択する必要があります。歯科医師とよく相談し、セカンドオピニオン等を利用しても良いかと思います。
 

乳幼児のおしゃぶりや指しゃぶりが⻭並びに与える影響は?

特に研究結果が出ているわけではありませんが、ミルクで育ったお子さんはおしゃぶりや指しゃぶりが小学生くらいまで続いてしまう傾向があります。自立が生まれる3歳から4歳くらいまでにおしゃぶりをやめることが好ましいです。
 
しかし、どうしてもおしゃぶりをしないと眠れないという場合もあるかと思います。そういった場合は「寂しくて」ということがありますので、ぬいぐるみを置いてあげるとそちらに気が向いて癖がなくなるというケースが多いです。
 
ずっとおしゃぶりや指しゃぶりを続けてしまうと、永久歯が開咬してOの字に開いてしまい、噛み合わせた際に隙間が開いて、話す時に空気が抜けてしまいます。そうなると話し方のトレーニングも必要になってしまいます。
 

医科歯科ドットコム編集部コメント:歯並びは人それぞれ、合う治療法も人それぞれです

佐藤美嘉(さとうみか)歯科医師に、矯正治療を行う際の注意点について紹介していただきました。矯正の種類は昔よりも増え、目立ちにくい矯正など選択肢が広がりました。
 
しかし、安易に選択してしまうと思ったような結果にならないかも知れません。歯並びは一人ひとり違い歯科医師の考え方もそれぞれ異なります。場合によっては抜歯や顎骨を削るケースもあります。
 
矯正は時間が長くかかりお金もかかる治療です。様々な歯科医師に相談し、よく話し合い適した治療法を見つけて欲しいと思います。
 
また、おしゃぶりや指しゃぶりを長く続けてしまうことは歯並びに影響してしまうようです。できるだけ3歳頃から徐々に辞められるようトレーニングをしましょう。
 
取材日:2019年11月14日
 

プロフィール

佐藤美嘉(さとうみか)歯科医師

・岩手医科大学卒業、2010年に歯科医師免許取得し、研修医終了後、都内医療法人に勤務
・現在は医療法人社団 高輪会、常勤医として外来、総合病院の病棟、ターミナル施設を担当
・一般的な歯科、美容診療の他に歯科口腔外科(摂食嚥下、ターミナル治療を含む)

特に摂食嚥下治療に関しては、高齢による機能低下、器質的変化により、食べることが今後難しいと言われた患者様の摂食のリハビリをしております。さらに、認知機能を摂食により改善させています。

オーラルケア(リハビリも含めた専門家による口腔周囲の衛生管理、および機能向上)の重要性が日本では欧米に比べると認知が低く、認知症改善、嚥下機能改善、生活習慣病に効果があることを広める活動をしております。

・大手生命保険会社生命保険加入者様向けセカンドオピニオンドクターを担当
・大手生命保険会社主催のセミナーで、看護師や保育士の方向けに、小児の予防医療、発育セミナーを開催