保険治療と自費治療、歯科医療費の高い・安いという判断基準を計算!

仕事がデキる女性は積極的に歯医者へ通うし、自由診療など高額治療も納得できるものは躊躇なく導入する…。
その理由について解説する連載「デキ歯医」。
今回は、歯科医療における治療費と保険診療のしくみ、自由診療の費用が「高い」といわれる原因について解説します。

 

歯科医療における「保険制度」のしくみとは?

日本の医療制度は「国民皆保険」。
保険証を1枚持っていけば、自由診療専門の医療機関を除いた全国どこの病院や診療所でも、同じ料金で一定の治療を受けることができます。
日本の保険制度では、治療内容に一つひとつ細かく点数が決められているため、それに応じて金額が算出されます。
例えば「レントゲンを撮影したので○点」+「歯を削ったので○点」+「プラスチックの詰め物をしたので○点」という感じです。
それを「1点=10円」で換算し、合計額を算出します。
 
最近では治療よりも虫歯や歯周病にならないよう、予防することのほうが大切といわれるようになってきました。
しかし、残念ながらこれら予防処置に健康保険を使うことができない場合もあります
また、噛み合わせ調整で機能回復させる治療や、「審美」「歯列矯正」など、見た目を良くするための施術は保険適用外となります。

 

保険治療は必要最小限の治療、最良の治療とは

保険治療は国民皆保険制度で万人が治療を受けられる非常に良い制度です。
一方で、公的機関が補助する「最小限の治療」であるともいえます。
日本は世界でも有数の豊かな国になりましたが、医療保険では国で決められた必要最小限の治療法以外は認められていません。
つまり、必要十分な条件を満たす治療まで保障しているわけではないということです。
そのため、現在の保険制度では「この患者にはこの治療法がベストだ」と医師が判断しても、保険診療の適用対象でなければ自費診療となってしまいます。
 
これは、歯科医療においても同様であり、保険治療は日本国民が受診可能な「最小限の治療」であって、それが「最良の治療」でしょうか。
特に歯科医療は、内科や外科など他診療科目よりも自費診療が選択肢になりやすいといえるでしょう。
歯科医は、患者さんの症状から保険診療か、保険適用外の自費診療を判断し、患者さんに提案します。
保険治療か自費診療にするかどうかは、患者本人の選択なのです。

 

口の状態が悪いと全身疾患を招く原因に

口は私たちの体と外の世界とをつなぐ通路のひとつです。
歯と全身疾患の関係について研究が進んだのは最近のことで、以前は口腔の病気が影響を与えるのは口腔内だけと考えられていました。
しかし、今では、歯科医療が食欲・全身の健康・顔の形にも影響を与え、口の健康が患者の生きがいや生命といった包括的な医療にも影響していることが解明されてきています。
 
特に歯周病が全身に与える影響は多岐にわたり、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)や糖尿病、心疾患、妊娠トラブルなど、多くの疾患との関係が指摘されています。
また、日本でますます課題になると思われる認知症についても、健康な歯が多いこと、虫歯があってもちゃんと治療していること、もしくは歯が残っていることは、認知機能と関係があるという報告もあります。
このように、歯周病が怖いのは直接的に「歯をなくす」ことではなく、寿命を縮める疾患につながっているということです。

 

歯科医療の費用が高い・安いという判断基準はどう設定する?

このように、歯の健康は命に関わる可能性があるわけですが、自分の健康を守るために「最小限の治療」(保険診療)だけでいいのでしょうか?
ここで、外食することを想像してみてください。例えば、ファストフード店で300円のハンバーガーを食べることで満足するかもしれません。
それでは物足りないので、ファミリーレストランで1,200円のハンバーグ定食を食べたいという方いるかもしれません。
いやいや、一流レストランの10,000円で出されるフランス料理フルコースのステーキじゃないと納得できないという方もいるかもしれません。
どれも同じ「肉を使った料理」1食分であることには違いありません。
しかし、肉や野菜といった素材とその鮮度、味付け、雰囲気、接客サービスの質はまったく違います。どれで満足するかは、その日の体調、食事にかけられる時間の有無、価値観、経済力など、その人次第です。
どれがいいとか悪いとか、他人がとやかく言うことではありません。
 
歯科医療でいうなら、全国で料金サービスが同じであるチェーン店やファミレスの食事にあたるのが保険診療、一流レストランでの食事に当たるのが、自費診療といえるでしょう。
もし、チェーン店やファミレスで選ぶならば、保険治療の範囲で良い歯科者を探すことです。
一定以上の十分な治療を受けたいと希望するのであれば、自費治療になります。
自費の歯科治療は100万円以上の費用がかかることもあります。
自分の生命や健康に関わることですから、受けたい治療が治療費に見合う価値があるかどうかが重要となります。

 

あなたは前歯を一本、いくらなら売りますか?

「自費診療の治療費は高い」「インプラントは高い」という言い方をする人がいますが、それは本当なのでしょうか?
多くの人は、保険診療の費用と比べて高いと言っているケースが多いと私は感じています。
これは、ある歯科医から聞いた話です。
患者さんが、「前歯に白い歯を被せたい」と希望されたので、「1本、10万円です」と答えたそうです。
すると「10万円は高いなー」と患者さんは言いました。
そこで歯科医は、患者さんに対して「だったら、あなたの前歯一本を私が買い取りましょう。いくらで売ってくれますか?10万円で売ってくれますか?100万円なら売ってくれますか?」と質問したそうです。
 
この歯科医の意図は、今までの「保険診療と比べて高い」という価値観を壊すことであり、そのための質問として「前歯の治療費は1本10万円ですが、あなたの天然の歯の値段はいくらになると思いますか?」と聞いたのです。
金には代えられない、体の一部の値段と思ってもらってもいいでしょう。
 
ちなみに、この患者さんは、ご自分の歯は当然10万円では売らないし、100万円でも売らないと答え、治療の効果が10万円の価値があるかないかを考え、結論を出したそうです。
歯科クリニックの中には、保険外治療については、治療後に被せ物や詰め物の保証期間を設けているケースもあります。例えばセラミックの被せ物が10万円で、5年保証だとします。
そうすると、1ヵ月にかかる金額は、
 
10万円÷60ヵ月=1,666円
 
となり、1ヵ月あたり約1,700円となります。1日あたり、約58円です。
計算の結果を見て、「あれ?こんなもの?」と驚かれる方も多いと思います。
1回にかかる費用が大きいので高いと思ってしまいがちですが、実際に計算してみるとこの程度なのかと思う場合もあります。
また、治療した歯の手入れをしっかり行えば、保証期間を超えて、さらに長く使用できる場合も多く、そうすれば1ヵ月あたりの金額は、もっと低くなります。
確かに、自費治療は保険よりは高いですが、蘇った健康と将来の健康とを比べて、つまり、ご自身の人生におけるその治療の価値と比較して、高いか安いかを判断してほしいのです。
自分の寿命に大きく関係するのが歯科治療ですから、納得いくまで説明してもらって、保険がいいのか自費がいいのかを選択してください。

<参考>
「歯の本 歯医者に行く前に読む 決定版」(ダイナミックセラーズ出版)
「口の中に毒がある その安全な除去方法と健康回復」(ダイナミックセラーズ出版)

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

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監修日:2020年1月17日
 

監修医 プロフィール

医療法人社団 輝 藤本歯科長洲医院
藤本 俊輝
歯学博士
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医