歯科医師が語る!虫歯の進行を止めるサホライドとは?


子供が治療を怖がって歯医者に行きたがらない……。
そうなってしまうと虫歯はどんどん進行してしまい、重症化してしまいます。
そんなときに、虫歯の進行を止められたらいいなと思いませんか?
虫歯の進行を止めるなんてこと、できなさそうな感じもします……。
しかし、虫歯の進行を妨げることができる薬があります!
いったいどんな薬なのか、効果はいかほどなのか?
今回は、その薬「サホライド」についてご紹介していきたいと思います。
 

サホライドとは?

虫歯の進行を止める薬の名前を「サホライド」といいます。
このサホライドの中にはフッ化ジアンミン銀という成分が含まれています。
具体的に何かというと、フッ素と銀が入っています。フッ素は皆さん馴染みのある言葉だと思います。
最近の歯磨き粉にはほとんどフッ素が含まれており、このフッ素は虫歯を防ぐ再石灰化を促したり、歯の表面を酸から保護してくれる効果があります。
フッ素と虫歯の進行と聞くと結びつく感じもしますが、一方で銀はどのような役割を果たすのでしょうか?
銀には殺菌作用があって、この銀が虫歯のある部分に吸着することで虫歯が悪化するのをくい止めてくれるのです。
サホライドはフッ素の予防作用と銀の殺菌作用を利用して虫歯進行対策として用いられる薬品ということです。
 

塗ると歯が黒くなる?

「塗るだけで虫歯の進行を止められるなんて最高!」……そう思われるかもしれませんが、良い薬にデメリットはつきものです。
そのデメリットは何かと言いますと「塗った部分の歯が黒くなる」ということです。これは、付着した銀が酸化していくことで黒くなるからです。
「磨けばそのうちとれるんでしょう?」と普通は思われるかも知れませんが、実は困ったことに、このサホライドで黒くなった部分というのは自然にはとれないのです。
虫歯の部分にのみ塗る薬なので、奥歯や歯と歯の間などであればそれほど目立たないので良いのですが、万一目立つ部分に虫歯ができてしまって、そこにサホライドを塗布した場合は審美的な面で非常に困りますよね。
黒色の部分を削ってレジンを埋め込んだりして白色に戻すことはできますが、どうしても一部人工的な歯にしなければならないということで抵抗を示す人も今は多いようです。
 

そもそも今サホライドは使われているのか?

今現在でも虫歯治療にサホライドは使用されていますし、いえば塗布してくれます。
ただ、サホライド使用を好む人は少なくなっています。というのも、サホライドが多く使われていたのは今から40年くらい前の1970年代なのです。
その頃は、今よりもっと多くの子供に虫歯がありました。小さい子供は虫歯治療を嫌がったり、赤ん坊の虫歯治療にはリスクもあったため、子供の虫歯は治療よりも進行抑制しなければ、ということでサホライドが普及しました。
ただ今の親は「見た目があまりよくないから」という理由でサホライドをあまり使おうとしない傾向が強いようです。
昔と比べ人々の歯のケアについての意識も高くなり、道具も発達してきましたから虫歯になる子供が少ないというのもあまり使われなくなった一因だと思います。
 

サホライドのメリット・デメリット

 

●メリット

サホライド使用のメリットは、痛みや刺激を伴わないという点です。
ですから治療で痛い思いをすることを嫌がる小さい子供には有効です。
しかし、しっかりした治療をしないと虫歯の進行が止まったとしても、物が挟まりやすい形状は治療をしない限り回復出来ておらず、隣の歯が虫歯になるなど、リスクもありますので、あくまで応急処置としてのメリットとなります。
 

●デメリット

一方でデメリットも多数あります。
まずは前述の通り歯が黒くなってしまうこと。
小さい子供の場合は、将来的にサホライドで黒くなってしまった歯が生え変わって永久歯になるのでそれほど問題はないのですが、大人が使う場合は削って白い詰め物をしたりする手間がかかるということです。
子供でも生え変わるまでは見た目が悪いままなので、使用するかどうかは慎重に判断しましょう。
また、非常に苦い薬だという点もデメリットです。万が一舌でサホライドをなめてしまい、舌が黒くなってしまうこともあるかもしれません。
舌が黒くなっても皮膚の新陳代謝のおかげでそのうち黒い部分はなくなります。しかし非常に苦いので子供は嫌がると思います。
そしてもう一つ大事なのが、「サホライドは初期虫歯にしか効果がない」ことです。
ある程度虫歯が進行してしまっている場合は、サホライドの効果が出ない場合があります。虫歯が重症化してしまったならば子供でも致し方ないですが治療で虫歯を削ってもらうしかありません。
 
監修日:2020年01月06日
 

監修医 プロフィール

医療法人社団 輝 藤本歯科長洲医院
藤本 俊輝
歯学博士
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医