虫歯は悩ましい問題ですよね。特に子供に虫歯ができてしまうと、治療を嫌がったりして親御さんも苦労すると思います。
虫歯の予防法は数多くありますが、やはり地道で丁寧なケアが必要なので面倒くさいと感じることもあると思います。
また、子供の場合は上手に歯磨きができない子が多いのでその点も悩ましいところです。
そんな虫歯の究極の予防法というのがあって、なんと「それ」を使用することにより、高確率で虫歯の予防をすることができるのだそうです。
「それ」というのは「シーラント」という治療法のことなのですが……。
いったい「シーラント」とは何なのでしょうか?
今回はそれについてご紹介していきます。
シーラントとは?
「シーラント」とは、子供の虫歯予防に使われる治療方法です。
別名「小窩裂溝充填(しょうかれっこうじゅうてん)」とも呼ばれます。子供の生えたばかりの乳歯や永久歯の噛み合せの部分にある歯の溝のところを、プラスチックやセメントで埋めてしまうことで、事前にそこにできる虫歯を予防する方法のことをいいます。
歯の溝の部分というのは奥まで歯ブラシが届きにくいこともあって、虫歯が出来やすい部分の一つでもあります。
シーラントを行うと、約66%も虫歯の発症を抑えることができた、という研究結果がありますから、その効き目はある程度保証されているようです。
歯の治療となると保険のことが気になると思いますが、このシーラント治療は保険が効きますので安心してください。
シーラントは健康保険で行うことができ、金額としては自己負担3割で1本約400円程度で治療ができます。
シーラント治療をすべき適切な時期とは
具体的に子供がどのくらいの歳になったらシーラント治療を考えるべきでしょうか?
これは、3段階に分けて考えるべきです。まずは乳歯の奥歯が生えてくる3歳頃に一度検討しましょう。
乳歯は永久歯に比べて歯の質が弱く虫歯になりやすい傾向にあります。
そして3歳くらいだとまだうまく歯磨きも出来ないと思いますから、汚れも溜まりやすくなります。
次に、真ん中の歯から6番目、6歳臼歯が生えてくる6歳頃にも検討しましょう。
食事をする時に一番大事な6歳臼歯は、溝がとても深いのが特徴です。前述のように歯ブラシが届きにくいので、汚れが溜まりやすく虫歯になりやすく、最も寿命の短い永久歯の一つと言われています。
最後が、6歳臼歯のさらに奥、真ん中の歯から7番目に、12歳臼歯が生えてくる12歳頃です。
6歳臼歯と同様に12歳臼歯も虫歯になりやすい歯ですし、小学校高学年ということでそろそろ歯のケアの大切さを自覚させるためにも、この時期にも一度やっておくとよいと思います。
シーラント治療のメリット
シーラント治療のメリットですが、まずは安いということが挙げられます。そして治療自体も痛みを抑えたものになるので、痛いのを嫌う子供でも安心して治療に臨むことができます。
この治療には麻酔も使用しませんし、虫歯がすでにできていなければ特段歯を削る必要もありません。
そして溝を埋めている限りは、この上から虫歯になるということもありません。埋めてしまえばそれで予防は終わりです。
上述したように、かなり高い確率で虫歯が予防できるのでおススメとされています。
加えて、最近のシーラントには歯の再石灰化を促すフッ素が配合されていていることもメリットの一つです。
市販の歯磨き粉にも含まれているフッ素の効果を、シーラントをすることによって口の中に長く持続させることが出来るのです。
シーラント治療のデメリット
一方で、シーラント治療にはデメリットも多くあります。実際、シーラント治療の有効性を見直す歯科医師も増えてきているのだとか。
まずは「歯の溝にしか使えない」ということです。歯と歯の間や歯と歯茎の間といった、他の虫歯が出来やすいところには使えないのが欠点です。
そして、シーラント治療のあと、詰め物がずっと取れないということは保証できません。食べ物を食べていたりして詰め物が外れてしまう可能性もあります。
そうなるとまた詰め物を詰めに行かなければならないので手間がかかるということもあります。また、シーラント処理をする前の歯の溝がきれいになっていない場合、そこに細菌が残った状態でシーラントされてしまうという可能性もあります。
その場合はシーラントしていてもその下で細菌が繁殖してしまうので何の意味もありません。
ですが、このことは歯科医師であればきちんとわかっているので、適切な処置をしてくれると思うのであまり心配はいりません。
そして、詰め物を詰めるときに使用する薬品が、歯のエナメル質を一部溶かしてしまうという点も指摘されています。
歯の表面部分の一番外側の部分がエナメル質です。エナメル質は人間の体の中で最も硬い組織であり、歯に対する様々な外部からの刺激から歯の神経を守るという役割を果たしていると言われています。
これが一部溶けてしまうことでその部分が弱くなってしまうという危険もあるのです。(現在は、それらの薬品を使用しないシーラントもあります。)メリットの裏にもこれだけのデメリットが存在していますから、シーラント治療をするかどうかは歯科医師と相談するなどして慎重に検討するべきですね。
<参考>
・子どもの歯を虫歯から守る!歯医者さんもおすすめする「シーラント」の働きを紹介
・乳歯を虫歯から守ってくれるシーラント
監修日:2020年01月06日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医