毎日の歯磨きの度に使っている歯磨き粉。
けれど、「あなたはどの歯磨き粉を使っていますか?」と聞かれて、パッと答えられる人は、案外少ないのではないでしょうか。
考えてみれば、シャンプーや化粧品よりずっと使用回数は多く、ましてや口の中に入れるものなのに、値段やパッケージだけで適当に選んでしまうというのも不思議な話です。
ドラッグストアにたくさん並んでいる歯磨き粉には、いったいどんな違いがあるのか?
歯磨き粉選びのコツを紹介します。
歯磨き粉はこんなものからできている
歯磨き粉の歴史は古く、4世紀頃のエジプトではすでにミントの葉や食塩が使われていたといわれています。
日本でも平安時代には塩を焼いたものなどが使われ始め、江戸時代には粉状のものが普及していたようです。
時代によってその中身にだいぶ違いのある歯磨き粉ですが、現在ドラッグストアで販売されているものは、基本的に次のような成分からできています。
・研磨剤…歯の表面の汚れを落とす
・湿潤剤…歯磨き粉に適度な湿り気を与え、歯磨き粉の形状を保つ
・発泡剤…歯磨き粉を泡立たせる
・粘結剤…粉末成分と液体成分の分離を防ぐ
・香味剤…香りをつける
・保存料…成分の変質を防ぐ
歯磨き粉の中には、これらに加え「薬効成分」と言われる虫歯や歯周病の予防や知覚過敏を抑えるのに役立つ成分を含んでいるものもあります。
薬効成分とは、例えば次のようなものです。
・フッ素 … 歯を強くし、虫歯・歯周病を予防する
・硝酸カリウム … 歯の周りの保護膜を作り、知覚過敏で歯が染みたり痛んだりするのを防ぐ
・デキストラナーゼ … 歯垢分解作用があり、歯をきれいに保つ
・トラネキサム酸 … 炎症を抑える作用により、歯茎の腫れを防ぐ
現在販売されている歯磨き粉の約80%にはフッ素が入っており、フッ素入り歯磨き粉が現代の主流になっています。
賛否両論ある「研磨剤」と「発泡剤」
これらの成分は基本的には国の基準で安全とされている審査を通過して市販されているものばかりなので、「体に悪い成分がふくまれているのでは!?」と神経質になる必要はありません。
ただ、デメリットもあるため注意したいのが、「研磨剤」と「発泡剤」です。
研磨剤が歯を傷つけてしまうことも
炭酸カルシウムやリン酸水素カルシウムなどの研磨剤は歯の汚れを落としやすくする役割があり、役に立つこともあります。
しかし、汚れは歯磨き粉の力で落とすものではなく、ブラッシングで落とすのが基本。
むしろ強い力で磨くと、研磨剤が歯を傷つけてしまう可能性もあります。
泡の正体は合成界面活性剤
発泡剤として使われているラウリル硫酸ナトリウムは、シャンプーや台所用洗剤に使われているものと同じ合成界面活性剤。アレルギーやアトピーの原因にもなる物質です。
歯磨き粉に含まれるほどの少量では体への影響はほとんどないと言われていますが、口内炎などで口の中に傷がある時や、アレルギーを持っている人には悪影響を及ぼすこともあり得ます。
また、発泡剤そのものは洗浄力とは関係ありませんが、口の中がすっきりするので、磨けていなくても「磨いた気」になってしまうというデメリットもあります。
オーガニック歯磨き粉という選択肢
歯をキレイにするための歯磨きで歯を傷つけたり、体に悪いものを取り込んでしまっては本末転倒です。
健康のことを考えれば、研磨剤・発泡剤を含まないもので、できるだけ体に悪い成分が使われていないものが、理想の歯磨き粉ということになるでしょう。
そういう需要に応えるものとして、塩や海泥など天然由来の洗浄成分を使い、発泡剤を一切含まないさまざまな「オーガニック歯磨き粉」が販売されています。
発泡剤を使っていないので一切泡だたないため、慣れないうちは変な感じがしますが、そこさえ乗り越えれば使い心地は良好。洗浄力も従来の歯磨き粉に負けませんし、海泥を使ったものではむしろ従来の歯磨き粉よりキレイになります。
もし子どもが食べてしまっても安全です。
従来の歯磨き粉に比べて価格が高めなのが難点ですが、興味があれば一度試してみてはいかがでしょうか。
歯磨きは毎日繰り返すものだからこそ、安全性の高いものを選ぶ価値があります。
歯医者さんでも研磨剤・発泡剤なしの歯磨き粉を扱っているところは多いので、一度アドバイスを受けてみるのもおすすめです。
医科歯科ドットコム編集部コメント
私自身歯磨き粉の中に何が入っているかなんて考えたことがありませんでした。
自分に合う歯磨き粉が知りたい方は医科歯科.comから予約をして、歯医者さんに相談してみるのもいいかもしれませんね。
監修日:2020年01月06日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医