歯磨きはオーラルケアの基本です。毎食後の歯磨き習慣を守りたいですよね!
でも、ご存じですか? 虫歯菌や歯周病菌、各種病原菌の巣である歯垢(プラーク)は、顕微鏡で見るとネバネバした鎖状の物質です。
せっかく歯から歯ブラシで引きはがしても、今度はしっかりと歯ブラシの毛に絡みついてしまいます。
いくらこまめに歯ブラシを交換する人でも、その頻度は月に1回くらいでしょう。
では、衛生的に歯ブラシを使い続けるためにはどうしたらいいでしょうか?
歯ブラシってトイレより汚い???
私たちの口のなかには、数百万~数十億もの細菌がいると言われています。
そして、3週間ほど使用した歯ブラシに付着している菌数は、調査によって100万以上とも1億以上とも言われます。
ちなみに、小児歯科学雑誌に掲載された論文(*1)によれば、「新品の歯ブラシを小児に1回だけ使用してもらい、その歯ブラシを小児自身に洗ってもらった後、残った細菌数を測定した結果、10の4乗(10,000)から10の5乗(100,000)コロニー(※)の菌数が測定された子がもっとも多く、最多では10の7乗(10,000,000)コロニーという子もいたそうです。
※コロニーとは、菌を培養して集落にしたもの。この場合、歯ブラシに付着した菌がそれぞれ増殖してコロニーを形成するため、付着していた菌数=コロニー数と考えられます。
たった1回使っただけの歯ブラシでこれですから、1カ月も使い続けた歯ブラシがどのようになっているか、想像するだけでゾッとしますね。
一説によると、保管状態の悪い歯ブラシは「便器に溜まっている水よりも汚い」レベルだそうで、そんな状態の歯ブラシはとうてい使う気持ちになれませんよね?
毎日煮沸消毒? それとも除菌?
理想を追求するなら、本当は「歯磨きをするたびに、新品の歯ブラシを使う!」のがベストかもしれません。
でも現実問題として、ちょっとそれは無理でしょう。
そして歯ブラシだけが無菌だとしても、元々人間の口のなかは菌だらけですから、そこまで潔癖になる必要もありません。
では、「現実的な範囲で、毎日心掛けたい歯ブラシの保管方法」とはどのようなものでしょうか?
歯ブラシを熱湯消毒する? アルコールや除菌液に浸けておく? でも、市販の歯ブラシの多くは樹脂製で、熱湯などでグラグラ煮ると、溶けないまでも変形したり、毛先が変質して劣化してしまったりする可能性が高いとのことです。
おもしろい方法としては、「電子レンジでマイクロ波を照射した結果、5分の照射で十分な殺菌効果が認められた」という論文があります(*2)。
しかし、歯ブラシを電子レンジで5分も加熱するという方法は、ちょっと一般家庭の日常習慣としてはおすすめできません(歯ブラシの材質によっては危険な事故につながる場合があります)。
また、アルコールや除菌液などを使っても気休め程度で、歯ブラシに付着してしまった菌を殺菌するまでの効果は期待できないようです。
また、口のなかに入ると有害な除菌液などもあるようですから注意が必要です。
毎回乾燥! 保管場所にも気を付けて!!
結局のところ、私たちにできる日常的な歯ブラシの保管方法としては、「しっかり水洗いする」「十分乾燥させる」の2点がもっとも重要です。
そのためには、次のようなことに注意してください。
- ・歯ブラシを使い終わったら、水道の流水でしっかり毛先を動かしながらよく洗う。
- ・歯ブラシをペーパータオルやティッシュなどでよく拭いて、水分をしっかりとる。
- ・毛先がケースなどに触れないよう、コップやケースに立てるなどして保管する。
- ・風通しのいい、できれば自然光のある場所で歯ブラシを保管し、十分乾燥させる。
- ・ユニットバスなど、トイレと洗面所の距離が近い場合はできるだけトイレから離れた場所に保管する。
- ・次の歯磨きまでに歯ブラシが乾燥しない場合、2本の歯ブラシを交互に使うのも効果的。
- ・オフィスなどで携帯歯磨きセットを使っている人は、ケースのなかの湿気で菌が繁殖しないよう、ケース内もよく乾燥させる。
なお、「どうしても菌が気になる」という人は、紫外線を照射して除菌してくれる歯ブラシケースなどの利用も検討してみるといいでしょう。
<参考>
*1 山木戸隆子、香西克之、鈴木淳司、長坂信夫(1992)
『小児が使用する歯口清掃器具の細菌汚染に関する研究』
*2 倉田さっき、金谷誠久、水内秀次、永禮旬(1993)
『重心病棟における歯ブラシの消毒に関する検討』
医科歯科ドットコム編集部まとめ
歯ブラシにはこんなにも多くの金が付着していたんですね。自分の歯ブラシの使用頻度が気になった方は、医科歯科.comを利用して、歯医者さんに相談してみてもいいかもしれませんね。
監修日:2019年12月18日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医