みなさんのお口の中には、詰めものや被せものが入っていますか?
もし入っているのであれば、それは何色でしょうか?「詰めもの」「被せもの」と一口にいっても、実は様々な種類があります。
昔から広く使われている銀色のものから、本物の歯と見分けがつかない白いものまで、選択肢はたくさんあるのです。それぞれに異なるメリット・デメリットがあり、もちろん必要な費用にも差があります。
・もし、あなたが歯を削らなければならなくなったら……
・もし、今装着している詰めものや被せものが外れてしまったら……
・もし、今よりもっと綺麗な口元にしたいと思ったら……
そんなときにベストな方法を選ぶには、全ての選択肢について比較検討し、自分の希望と照らし合わせて考えることが必要です。
この機会に、詰めもの・被せものについて詳しく解説していきます。
<目次>
- 1.詰めもの被せものにはどんな種類があるの?
- 1-1.保険が適用される詰めもの(インレー)
- 1-2.保険が適用される被せもの(クラウン)
- 1-3.自由診療になる詰めもの(インレー)
- 1-4.自由診療になる被せもの(クラウン)
- 2.銀歯のデメリットは見た目だけじゃなかった! 保険の銀歯が体に与える悪影響とは
- 3.気になるお値段はそれぞれどのくらい?
- 4.知らなきゃ損! 保険で白い被せものに変えられるケースも
1.詰めもの・被せものにはどんな種類があるの?
詰めもの(インレー)は、軽度の虫歯で歯を少しだけ削ったときに使用します。
一方で、被せもの(クラウン)は、歯の大部分を失った場合や、神経を取った場合に多く使われるものです。
まずは、詰めものと被せもの、それぞれの素材を「保険が適用されるもの」と「自由診療になるもの」とに分けて、特性やメリット・デメリットを見ていきましょう。
1-1.保険が適用される詰めもの
コンポジットレジン(白い詰めもの)
コンポジットレジンというプラスチックを使った詰めものです。歯の欠損部に柔らかい状態のコンポジットレジンを流し込み、特殊な光を当てて固めます。
メリットは、白くて見た目の良い歯を安価で手に入れられること、歯を削ってから詰めるまでの時間が短いこと、歯を削る範囲を小さく抑えられること、修理が比較的容易なことなどが挙げられます。
また金属を使わないので、アレルギーの心配もありません。
デメリットは、耐久性に劣ることです。強い衝撃が加わると、割れたり欠けたりする恐れがあります。歯ぎしりや食いしばりのクセがある方は、特に注意が必要でしょう。
さらに変色するスピードが早く、口内環境にもよりますが2年も使用すると端の方から段々と茶色くなってきます。そのため、気になり始めたら、やり替えてもらうと良いでしょう。
メタルインレー(銀の詰めもの)
「金銀パラジウム合金」でできた銀色の詰めもので、日本では最も多く採用されています。
メリットは、コンポジットレジンと同じく価格が非常に安いこと、そして強度に優れており、どれだけ噛んでも割れたり磨耗したりする心配が少ないことです。
ただし、見た目が悪く、少し見えるだけで銀歯だと目立ってしまいます。また、詰めものの下で虫歯が発生するリスクが高いこともデメリットです。
加えて、非常に硬い素材であるため、詰めものを入れている歯や噛み合う歯にダメージを与えてしまうこともあります。
1-2.保険が適用される被せもの(クラウン)
硬質レジン前装冠
金属でできた被せものに、見た目を考慮して表面をレジン(白いプラスチックの素材)でコーティングしたもの。
主に人目につきやすい前歯に使われます(犬歯より後ろの歯は保険適用外)。メリットは、ベースが金属であるため強度があり、かつ最低限の見た目を保証してくれることです。
デメリットは、レジンの特性である変色のスピードが速いことが挙げられます。また、裏側は金属がむき出しの状態なので、大きく口を開けると目立つことがあります。
メタルクラウン
「金銀パラジウム合金」でできたメタルインレーの被せもの版。保険適用の範囲内で奥歯の被せものをつくる場合は、このメタルクラウンを選ぶことになります。
メリットやデメリットは、メタルインレーと同じ。安価ではありますが、見た目の悪さや歯へのダメージが目立ちます。
また、長年使用していると、金属イオンの流出により歯茎が黒ずんできます。
この他にも、特定の歯に使う場合は保険が適用される白い被せものもあります。(詳しくは後述します。)
1-3.自由診療になる詰めもの(インレー)
ゴールドインレー
金合金や白金加金でできた詰めもの。同じ金属でありながら、メタルインレーのデメリットをしっかりカバーしていることが魅力です。
強度があることはもちろん、詰めものの下で虫歯になってしまうリスクはぐっと低くなります。
これは、メタルインレー「金銀パラジウム合金」に比べてしなやかな素材であるためです。ものを噛んで歯が動いてもぴったりとフィットするので、歯垢が入り込むことはほとんどありません。
デメリットは、やはり見た目でしょう。保険のメタルインレー「金銀パラジウム合金」に比べると金色で美しい輝きですが、白い歯の中にあると違和感があるように感じる方もいらっしゃるかもしれません。
セラミックインレー
陶器でできた白い詰めものです。天然歯と見分けがつかないくらいの美しさで、見た目はピカイチ! 変色する心配もなく、破損しなければ長く使い続けられます。
とにかく見た目を重視する方には最適でしょう。
また表面が滑らかなので、汚れが付きにくく、虫歯になりにくいことも特徴です。デメリットは、硬い素材であるため、詰めものを入れている歯や噛み合う歯にダメージを与えることです。
衝撃に弱いため、金属に比べると強度は劣り、強い力がかかると割れてしまう心配もあります。
そのため、ある程度の厚さで作る必要があり、場合によっては歯を必要以上に削らなくてはならないこともあります。
ハイブリッドセラミックインレー
セラミックにレジンを混ぜてつくった詰めもの。セラミックよりも安価で、白く美しい歯を手に入れられることがメリットです。また、レジンが混ざることで素材としても柔らかくなるため、歯にダメージを与えるリスクも軽減できます。ただし、セラミックとは違い、レジンを混合している為少しずつ変色してしまいます。また、割れる可能性はあまり無いものの、噛むことで徐々に磨耗はしていきます。
1-4.自由診療になるかぶせもの(クラウン)
ゴールドクラウン
金合金や白金加金でできた被せもので、特徴はゴールドインレーと同じです。なお、類似の素材として保険適用の被せもので紹介した「メタルクラウン」があります。
自由診療で「金銀パラジウム合金」を使用している歯科医院もあるため、混同しないよう素材や性質については、必ず事前に確認しておきましょう。
オールセラミッククラウン
セラミックでできた被せものです。被せものは歯の全面を覆うため、見た目の良いセラミックを選ぶととても綺麗な仕上がりになります。
メリットやデメリットは、セラミックインレーと同じです。
メタルボンド
金属でできたフレームをセラミックでコーティングした被せものです。セラミックのみでつくる場合よりもやや安価で、見た目の綺麗な歯を手に入れることができます。
また、金属を使っているため強度もあり、オールセラミックと違って割れるリスクはありません。ただし、中に金属があるため、透明感が失われるのは避けられません。
加齢によって歯茎が下がってきた場合などは、特に歯とメタルボンドとの境界が目立ってしまうでしょう。
ジルコニアクラウン(人工ダイヤモンド)
メタルボンドはベースが金属ですが、ジルコニアクラウンでは白色のジルコニアを採用しています。
メタルボンドよりも白く自然な仕上がりになり、強度もややジルコニアクラウンの方が上です。奥歯など、大きな負荷がかかる部分でも安心して使えます。
しかし、メタルボンドよりは見た目に優れているものの、セラミックに比べると仕上がりは劣ります。前歯など、人の目につく部分はセラミックの方が良いかもしれません。
2.銀歯のデメリットは見た目だけじゃなかった! 保険の銀歯が体に与える悪影響とは
虫歯の原因にもなる「ドライマウス」とは?
ここまでで、メタルクラウンやインレーには、見た目の悪さと二次虫歯(詰めものや被せものの下で虫歯になること)などの問題があると説明してきました。
しかし、実はデメリットはそれだけではありません。
まず、体に有害であるとされている「パラジウム」が使われています。実はこのパラジウム、ドイツでは安全性に問題があるとして使用禁止になりました。
具体的には、金属アレルギーを引き起こすきっかけになるからです。現在は金属アレルギーでなくても、メタルのクラウンまたはインレーを使うことで、近い将来に発症する恐れがあります。
そして、メタルクラウンやインレーは、お口の中で微弱な電流を発することも分かっています。
これは「ガルバニー電流」と呼ばれ、頭や目の痛み、肩こり、めまいなど、全身症状の原因にもなるのです。もちろん、全ての方にこうした症状が出るとは限りません。
ただ、リスクを予め知っておくことは必要です。もし、上記のような原因不明の不調が続いている方は、一度歯科医院に相談することをオススメします。
3.気になるお値段はそれぞれどのくらい?
価格設定は詰めものの場合、コンポジットレジンで1,000円程度、メタルインレーで1,000〜2,000円が相場です。
自由診療の場合は歯科医院によって異なるため、最も高額なのはセラミックで、30,000〜80,000円。ハイブリッドセラミックとゴールドは同程度の金額で、30,000〜50,000円になります。
被せものは、レジンで3,000〜7,500円、メタルは3,000〜5,000円です。
自由診療では、セラミックが100,000〜150,000円、ハイブリッドセラミックとゴールドが50,000〜100,000円と考えておきましょう。
なお、値段が高くても保証がついているものを選ぶと、例えばセラミックが割れたときでも安心です。保証は歯科医師の自信の表れでもあるので、是非チェックしてみてください。
4.知らなきゃ損! 保険で白いかぶせものに変えられるケースも
「本当は白いかぶせものにしたいけれど、予算の関係で銀歯にした」という方は少なくないでしょう。
しかし、現在は保険の適用範囲が変わり、前から4~5番目(犬歯の1つ後ろと2つ後ろ)の2本の歯であれば、硬質レジンジャケット冠(前出の硬質レジン前装冠と類似のもの)も保険で作製できるようになりました。
しかし、硬質レジンのみで作られる為、メタルクラウンよりも強度が劣ります。数年前に銀歯を選んだものの、できれば変えたいという方は、是非歯科医院に相談してみてください。
なお、費用はおよそ9,000円となっています。
歯は、毎日のエネルギー源である食事に欠かせないパーツであり、かつ人から目に付きやすいポイントでもあります。
そのため、値段だけを見て決めるのではなく、それぞれの性質と自身の体質などを総合的に考慮して、自分に合うものを選ぶことが大切です。
これから治療を受ける方も、既に詰めものや被せものを使っている方も、今一度自分のお口についてよく考えてみてはいかがでしょうか?
医科歯科ドットコム編集部まとめ
詰めものや被せものは、できればあまり目立たないものを選びたいですよね。ですが目立たなければ目立たないほど、価格も上がっていきます。詰めものや被せものの種類や価格とにらめっこをする際には医科歯科.comです!各歯科医院ごとに一目で手術内容と価格がわかり大変便利ですよ!
監修日:2019年12月18日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医