最近では、大人になってからでも歯の矯正を始める人が増えてきましたね。
そこで矯正を検討している方に向けて、現役歯科医師で「毒出し歯みがき」・「歯科医が考案 毒出しうがい」・「『噛む力』が病気の9割を遠ざける」の著者でもある照山裕子(てるやま ゆうこ)歯科医師に、大人の歯列矯正は見た目以外にどんなメリットがあるのか?バランスの悪い歯並びのリスクについて教えていただきます。
大人になってからでも矯正治療は始めたほうがいいでしょうか?
私自身は間違いなく、大人になってからでも矯正はするべきだと思っています。
現場でご要望を聞くと、矯正を求める患者さんというのはどちらかというと見た目が気になっている方が大半ですね。
とはいえ、歯科医師側からみると、長い将来を考えたときに歯周病や虫歯のリスクを減らせることのほうが一番に推したいポイントです。
どうしても歯と歯が重なっていればその部分に汚れがたまりやすくなるので、そのまま放置するとトラブルが起きるリスクがぐんと上がります。
噛み合わせが乱れていると歯にかかる力が不均一になり特定の歯にばかり負担がかかってしまうので、その歯自体の寿命が確実に短くなってしまいます。
たとえば、奥歯だけに集中的にかぶせ物が入っているという人の場合、それは歯並びのアンバランスによって歯が欠けた、そこからむし歯が進行したというケースも多いですね。
歯並びの不均衡がずっと続いてしまうと歯を失うリスクにつながるので、長い目でみたときに全部の歯に均等なバランスがかかって、汚れがつきにくい状態がキープできるメリットは本当に無限大です。
ですので、お口の健康のためにも歯並びはやはり綺麗に治したほうがいい、ということが私の持論ですね。
日々の食事や飲み物について、気をつける点を教えてください
これはすごくシンプルで、その方の歯の質によってもだいぶ変わります。
たとえば夫婦で同じ食事をとっていても、色の付き方や変色の仕方が違う、ということがあるんですね。
ですので、まずは歯医者さんで自分の歯に合ったケアができているか、ということを見極めてもらう必要があると思います。
タバコのヤニをゴシゴシこするのは逆効果
男性で多いのは、タバコのヤニが気になるので粗い研磨剤が入った歯磨き粉や硬い毛先の歯ブラシでゴシゴシとこすってしまい、余計に歯の表面に傷をつけて、またそこにヤニが入り込んでしまう、ということを繰り返す人がいます。
そうなると、ずっとタワシでこすったような状態が続いて歯に傷がつき、それがエンドレスになってしまいます。
そういった汚れを優しく落として、表面のデコボコを埋めるような処置(エナメルトリートメント等)を歯医者さんでしてもらい、そのうえで食生活に気をつけたケアの仕方に変えると効率が良いですね。
習慣を身に着けることが大事
あとは、食べ物や飲み物についても多少は気にしたほうがいいとは思いますが、制限された生活を長く続けるのは難しいと思うんですよ。
カレーが好きでも、ワインが好きでも、コーヒーが好きでもいいのですが、とにかく汚れがたまりにくい習慣を身に付けるということですね。
もちろん、歯磨きがすぐにできると一番いいのですが、環境的に難しいこともあると思います。
お仕事中であれば「コーヒーを飲んだらお水をひと口含んでちょっとゆすぐ」といった習慣をつけるだけでも歯の表面に汚れがとどまる時間が短くなるので、だいぶ変わってくるのではないでしょうか。
医科歯科ドットコム編集部コメント
歯並びのアンバランスが続くと歯を失うリスクにつながりやすい、と照山裕子歯科医師はおっしゃいます。
大人になってからでも矯正をするメリットは、噛み合わせを整えて将来の歯のリスクを減らすことなのですね。
歯にコンプレックスのある方は、自分に合ったタイミングで矯正を検討すると良いかもしれませんね。
取材日:2019年9月24日
プロフィール
歯科医師・歯学博士
2000年 日本大学歯学部 卒業
2005年 日本大学大学院歯学研究科(歯科臨床系局部床義歯学)修了、東京医科歯科大学歯学部附属病院(回復系診療科顎義歯外来)医員
2009年 大手医療法人にて分院長として勤務
2018年 フリーランスとしての活動を開始
日本歯周病学会
日本顎顔面補綴学会
日本口腔インプラント学会
日本歯科審美学会
日本アンチエイジング歯科学会 理事・認定医
美容口腔管理学会 認定医
IoMT学会
顎顔面補綴学を専攻し、日本大学付属歯科病院および東京医科歯科大学歯学部附属病院にて研鑽を積む。口腔がんの早期発見には、患者自身が口元を鏡で見る習慣と医療者側の目を養うことが重要な役割を果たすと確信、メディアでの情報発信を開始。
13万部突破の『歯科医が考案・毒出しうがい』の著者でもあり、台湾語に翻訳された本も発売されている。2020年1月25日に「毒出しうがい」シリーズ第二弾!「歯科医が考案 毒出し歯みがき」 がリリース。「痛い・怖い」といった歯科のネガティヴなイメージをなくし、日本人にとってオーラルケアが身近な存在になるよう啓発活動を行っている。