子どもが1歳を過ぎると、卒乳を考える時期ですね。といっても、母乳を欲しがるし、無理にやめるのも……と思って、いつの間にか3~4歳まで卒乳できなかったというケースもあります。しかし、授乳や哺乳瓶でのミルクは、意外と虫歯の原因になりやすいものです。虫歯ができるまでの過程に母乳が及ぼす影響や卒乳にふさわしい時期など、歯科的な観点から気になる情報をまとめて紹介します。
虫歯ができるまでの過程
虫歯は、ある日突然できるわけではありません。いくつかの段階を経て、虫歯が発症します。最初に、母親からの虫歯菌・ミュータンス菌が子どもの口の中に感染します。このミュータンス菌というのは、糖分を分解して、その副産物として酸がつくられ、この酸が歯質を溶かします。生後6~7カ月の歯が生え始める頃から、ミュータンス菌に感染する可能性があります。そして、生後12カ月になると感染率が急激に高まります。さらに進行すると、このミュータンス菌が虫歯を引き起こすレベルにまで蓄積されます。もっとひどくなると、急速に脱灰(エナメル質からミネラルが流出すること)が進んで、目に見える虫歯ができてきます。
ところで、赤ちゃんが母乳を飲むときや哺乳瓶でミルクを飲むとき、口の中で舌がどうなっているかご存じですか?舌の先が歯茎を少し超えたところまで伸び、舌の真ん中がくぼんで平らになるそうです。歯が生えてくる頃に長時間この状態になると、上顎の前歯が虫歯になりやすくなるので気を付けましょう。
母乳・哺乳瓶のミルクが及ぼす影響
母乳を与え続けることで、口の中は虫歯ができやすい環境になってしまいます。カルシウムの吸収を良くして赤ちゃんの骨や歯の発育を助けてくれる母乳には、“乳糖”つまり糖分が含まれています。通常は母乳の糖分が8~10度ですが、母親が甘いものをよく食べていると糖分が12~13度にまでアップすることもあります。うちは母乳でなく哺乳瓶でミルクだから大丈夫、と思っている方はいませんか? 離乳期を過ぎても、寝かしつけのときに哺乳瓶でミルクなどを飲ませると前歯を中心に虫歯ができることがあります。これを“哺乳瓶う蝕(しょく)”といい、つまり哺乳瓶による虫歯です。赤ちゃんだけではなく、人間は寝ているときに唾液の分泌量が少なくなるため、虫歯に対する自浄作用が期待できません。母乳も哺乳びんも、どちらも寝かしつけるときは避けたほうがいいでしょう。赤ちゃんの上唇の内側に、ミルクや母乳が残ったまま寝てしまうことになります。
このように母乳もミルクもどちらも虫歯の原因になりやすいですが、どちらかというと母乳の方が虫歯の発生率は高いと言われています。もちろん母乳には、小児がんの発症率を低下させるほか生活習慣病のリスクを下げるなど良い働きもあるので、一概に良くないとは言えません。母乳の利点を活かしつつも、母親自身が口の中の状態を良好にしておいたり、濡らしたガーゼで前歯を拭いてあげたり、子どもを寝かしつける前にきちんと歯磨きをしてあげるなど心掛けましょう。授乳後は、虫歯菌の栄養にならないうちに速やかに母乳やミルクの成分を取り除くことが重要です。
母親が甘いもの好きだと、子どもにも影響がでます。母乳をあげている期間中は、母親自身も食べるものに気を付けたいですね。自分が食べたものがきっかけで子どもが虫歯になることは、避けたいものです。母乳は、子どもの虫歯と密接な関係があるということを、忘れないようにしましょう。
卒乳を促す方法
卒乳の時期の目安は、1歳半~2歳頃と考えてください。無理やり断乳するのでなく、自然と卒乳するのがベストと思っている方は多いでしょう。ただ、乳歯が多く生える前に卒乳することが好ましいです。いきなり卒乳は難しいので、最初は寝る前や夜中は授乳・ミルクなしにすることからスタートします。そして1歳を過ぎた頃は、哺乳瓶もやめてコップでミルクを飲ませるように習慣づけます。徐々に慣らしていき、自然と卒乳できるようにしてみてください。赤ちゃんや幼児は、自分で自分の口の中をきちんとケアすることができません。その分、母親が自分の歯のケアはもちろん子どもの口の中のケアもしっかりとしてあげたいですね。
医科歯科ドットコム編集部まとめ
虫歯予防は赤ちゃんの時から気を付けないといけないようですね…。皆さんはお子さんの歯の健康のことで、なにかお悩みのことはありませんか?卒乳と虫歯の関係についてはもちろん、その他のお子さんの虫歯予防についてもしっかり指導してくださる歯医者さんを探して、不安があれば早めに解決してしまいましょう!
監修日:2019年10月16日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医