【抜歯前に歯医者さんへ相談!】歯を抜くまえに知っておきたい「抜いたあと」の影響


抜歯は、あごの骨に生えている歯を抜くという外科手術の一種です。できれば避けたい方法ですし、歯医者さんで虫歯の治療上どうしても抜歯が必要だと言われても、「何とか抜かずにすむ方法はないか…」と考える人が大半ではないかと思います。そんな患者さんの希望に応えるように、最近ではできる限り自然の歯を残す治療が主流となってきました。しかし、いくら自分の歯が一番だといっても、歯を抜かなければならないケースや抜いたほうが良いケースは存在します。それはいったい、どんなときなのでしょうか?抜歯後に必要なケアや、抜歯が体に与える影響を紹介します。
 

周りに悪影響を与える歯は抜歯が必要

どうしても抜歯が必要なときとはどんな場合なのでしょうか?一言で言うなら、「その歯があることで周りに悪い影響が及んでしまうとき」です。
例えば、以下のような場合が挙げられます。
・虫歯が進行して歯の根の奥で化膿しているなど、歯の根の治療を長く続けても症状が改善されないようなとき
・歯周病でぐらついている歯を残すことで症状がさらに進行してしまい、その後のインプラント治療や入れ歯治療が困難になるようなとき
・親知らずが斜めに生えているために、奥まで歯ブラシが届きづらく虫歯になっているとき
・骨の中に埋まって横向きに生えた親知らずが隣の歯を押すために、隣の歯を圧迫したり、歯茎や顎の骨などに悪い影響をあたえる危険性があるとき
このような場合は、口全体のことを考えて「歯を抜く」ことが良い選択肢となるのです。「周りに悪い影響が及ぶ」の線引きをどこで行うかの判断は、歯科医院の治療方針によって多少異なりますので、ある歯科医院で抜歯をすすめられた歯でも、ほかの歯科医院では「まだ治療の方法はある」と判断されることがあります。しかし、「残しておくことで周囲の歯に悪影響を及ぼす歯は、抜いたほうが良い」という考え方は、ほぼ共通です。
 

抜歯手術後に注意したいポイント

口全体から見れば抜歯することが正しい選択だったとしても、歯を抜くことが体に負担を掛けることには変わりありません。歯を抜いたあとは、傷口が元どおりになるまでの数ヵ月、大事に術後ケアをする必要があります。また、抜歯後の歯磨きは傷口の様子をみながら行うようにしましょう。歯ブラシを軽く当てて磨く分には問題ありませんが、研磨剤が配合されている歯磨き粉の使用は傷口を刺激する可能性があるので避けたほうが無難です。ここでは、抜歯手術後に注意したいポイントを、いくつかの時期に分けてご紹介します。
 

抜歯手術直後(当日)

柔らかい血の塊(かさぶたのようなもの)ができて傷口を保護している状態です。刺激を与えないようにうがいは避け、血圧が上がるような運動は控えます。
 

抜歯後1週間

抜歯による痛みや腫れが引いてくるころです。経過が順調なら、手術跡の抜糸を行います。痛みが激しく、長引くようなら、血の塊のかさぶたがはがれたり、そもそもできなかったりして骨が露出した「ドライソケット」という症状になっている可能性がありますので、すみやかに歯科医院で治療を受けましょう。
 

抜歯後1週間~2ヵ月後

痛みはありませんが、抜歯後のくぼみに食べかすが入り込むのが気になる時期です。つい爪楊枝や歯間ブラシを使ってきれいにしたくなりますが、治りかけの傷口を傷付けてしまう可能性があるのでやめましょう
対応策としては、強めのうがいで洗い流すのがおすすめです。
 

抜歯後2~12ヵ月

抜歯後2ヵ月頃から徐々に歯茎が再生され、6ヵ月後には傷跡もほとんどわからなくなります。ただし、歯茎の下ではその後も骨の再生が続いており、まだ完全に元どおりというわけではありません。骨が再生されるのは、6~12ヵ月後頃になります。
 

抜歯跡を放置すると噛み合わせが崩れてしまうことも!

抜歯後に必要なのは、傷口のケアだけではありません。抜歯跡を放置せず、適切なタイミングで人工歯を補うことも大切です。なぜなら、歯を抜いた場所をそのままにしておくと、噛み合わせのバランスを取るために周囲の歯が移動したり、噛み合う相手がいなくなった向かい側の歯が伸びてきたりして、次のような悪影響が出てしまうからです。
・噛み合わせがずれる
・歯並びが悪くなる
・虫歯や歯周病になりやすくなる
・顎関節症の原因になる
・顔の輪郭が変わる(奥歯を抜歯した場合に、抜いた歯の分だけ頬がすぼみ、輪郭線に影響することがあるため)
人工歯を補う方法としては、ブリッジ、入れ歯、インプラントの3種類があります。抜歯前に歯科医師と相談して、治療法を決めておくと良いでしょう。入れ歯なら、抜歯後の歯茎が落ち着くのを待って2週間~3ヵ月後に型取り・製作します。インプラントなら、骨の修復を待ってから行うことが多いのですが、抜歯したその日に入れる方法もあります。歯を抜いたあとの正しいケアや治療法を知っておくことは、傷の治りを早め、二度と歯を失うことのないように予防することにも役立ちます。歯を抜くまえに、ぜひ流れと注意点をチェックしてみてください。
 

編集部まとめ

歯を抜くという重大な決断の後にも、考えないといけないことがたくさんあるようです。術後のケアまでしっかりサポートしてくれる歯医者さんを見つけたいですね。とはいえ直接歯科医院に行って、その都度歯医者さんの良し悪しを確かめていくのは時間と手間がかかってしまいます。かかりつけの歯医者さんを見つけておくことが大事ですね。
 
監修日:2019年10月8日
 

監修医 プロフィール

藤本歯科長洲医院
藤本 俊輝
歯学博士
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医