ママ必読!長期の指しゃぶり・おしゃぶりは噛み合わせに悪影響あり


赤ちゃんが指しゃぶりをする姿は、見ているだけでもかわいいものです。しかし一方で、「しゃぶり癖がつくと歯並びが悪くなる」「言語発達が遅れる」など、悪影響を心配する声もあります。そこで参考にしたいのは、小児科医と小児歯科医をメンバーとする「小児科と小児歯科の保険検討委員会」がまとめた、歯と指しゃぶり・おしゃぶりの関係についての提言です。同委員会が2006年に発表した「指しゃぶりについての考え方」及び「おしゃぶりについての考え方」をベースに、「指しゃぶり・おしゃぶりの体への影響」「続けて良い時期の目安」「やめさせるタイミングや方法」などについてご紹介します。
 

長期の指しゃぶり・おしゃぶりは噛み合わせに悪影響あり

「指しゃぶりについての考え方」では、指しゃぶりを続けるほど歯並びや噛み合わせに影響が出てくることが指摘されています(ただし、しゃぶる指やしゃぶり方にもよります)。長期間指しゃぶりが続くと、例えば次のような噛み合わせ異常が起こる場合があります。
・出っ歯(上顎前突)
・歯を噛み合わせたときに上下の前歯のあいだに隙間が空く(開咬)
・上下の奥歯が横にずれて中心が噛み合わない(片側性交叉咬合)
また、これらの噛み合わせ異常が起こる結果、「舌癖がつく」「口呼吸になる」「さ行やた行の発音がしづらくなる」といったことが起こるとされています。一方で、「おしゃぶりについての考え方」では、指しゃぶりに比べて症状は軽いものの、年齢が高くなるまでおしゃぶりを使用すると、上下の前歯のあいだに隙間が空きやすいことが指摘されています。
 

3歳頃までの指しゃぶりは気にしなくて良い

では、指しゃぶりやおしゃぶりの使用はまったくダメなのかといえば、決してそういうわけではありません。生まれたばかりの赤ちゃんが指しゃぶりをするのは「吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)」と呼ばれる自然な反応のひとつですし、生後2~4ヵ月の赤ちゃんも口のそばに来たものは無意識に吸うのが普通です。生後5ヵ月頃から1歳頃までは、何でも口に持っていってしゃぶろうとしますが、これは目と手の機能を連動させる学習をしながら、しゃぶることで物の形や味、性質、状態などを学ぶための行動で、必要なものだと考えられています。つまり、指しゃぶり自体が悪いのではなく、通常なら指しゃぶりを卒業する時期を越えて長く続けた場合に弊害が起こる可能性があるということなのです。
 
また、おしゃぶりの使用は乳児の精神安定や母親の子育てストレスの軽減といった、良い効果があると考えられています。こちらの問題点は指しゃぶりよりも習慣化しやすいことで、長く続けすぎると先に紹介したような弊害が出てきます。そこで重要になるのが、「何歳ぐらいまでなら大丈夫なのか?」ですが、先に紹介した「小児科と小児歯科の保険検討委員会」の提言内容を参考に、2つのポイントをまとめてみます。
 

指しゃぶりについて注意したいポイント

1歳までの指しゃぶりは乳児の発達に必要なものです。無理にやめさせる必要はなく、そのまま経過を見ても構いません。1~2歳になり、積み木や人形で遊んだりするようになると昼間の指しゃぶりは自然に減り、退屈なときや眠いときのみに見られるようになるのが一般的です。そのため、あまり神経質にならずに、子供の生活を見守ると良いでしょう。ただし、「一日中頻繁に吸っていて減る気配がない」「強く吸いすぎて指にタコができてしまう」というような場合は、習慣化を防ぐためにも小児科や小児歯科を受診するのがおすすめです。また、指しゃぶりが習慣化している場合でも、幼稚園や保育園に入って子供同士で遊ぶようになれば、自然に減少していきます。ですから、3歳頃までの指しゃぶりは特に気にする必要はないといえるでしょう。
 

おしゃぶりについて注意したいポイント

おしゃぶりの使用による噛み合わせの異常は、もし出ていたとしても、2歳頃までにおしゃぶりの使用をやめれば発育するに従って改善されます。1歳を過ぎたらおしゃぶりを常時使うことは控え、2歳半までに卒業するのがおすすめです。
 

子供の興味がほかに移り、自然にしゃぶらなくなるのが理想

習慣化した指しゃぶりを、無理にやめさせることは簡単なことではありません。しかし、子供の興味がほかのものへ移り始めると、自然にしなくなることがほとんどです。もし、指しゃぶりが続くのが気になるようなら、下記のように無理なく子供の興味がほかへ移るように、誘導してあげると良いでしょう。
・子供の生活リズムを整えて、外遊びでエネルギーを十分に発散させてあげる
・手や口を使う機会を増やすようにする
・スキンシップを増やして子供を安心させてあげる
また、保育園に入るなど、環境の変化もきっかけになることが多いです。
 
保護者としては、子供の指しゃぶりには神経質になりがちですが、長期化しなければ噛み合わせに大きな影響を与えることはないとされています。過剰に警戒せずに、2~3歳頃までは見守ってあげてください。
※4歳過ぎても、指しゃぶりがあるようなら歯科医院にて相談してください。
 

<参考>
日本小児歯科学会

 

医科歯科ドットコム編集部コメント

お子さんの指しゃぶり、歯並びについてお悩みがある方はひとまず歯医者さんに相談してみましょう。

 
監修日:2019年11月26日
 

監修医 プロフィール

藤本歯科長洲医院
藤本 俊輝
歯学博士
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医