美しく健康的な歯並びには、年齢に関係なく憧れるものです。「歯列矯正は子供が受けるもの」という考えが強かった日本ですが、最近では取り外し可能なマウスピース矯正や歯の裏側からワイヤーをつける舌側矯正など、目立たない矯正方法が普及してきました。今では、大人になってから矯正治療を行う「大人の歯列矯正」も珍しくありません。しかし、歯列矯正はお金が掛かるイメージがあり、「受けてみたいけど費用が高いから無理だな…」と感じている方も多いのではないでしょうか?ただ、「矯正治療」といっても、方法により治療期間や費用は大きく異なります。具体的な治療方法ごとに、その特徴や予算の概算をまとめて紹介します。
矯正費用の内訳はこうなっている
とにかく「高い!」というイメージが強い矯正費用ですが、その内訳についてはあまり知られていません。矯正費用の内訳は、おおよそ次のようになっています。
・初診料
・検査、診断料
・治療費(チェック料、調整料など)
・矯正器具代
このうち、初診料は高くても20,000円程度、検査・診断料は25,000~50,000円程度であることが多く、治療費・矯正器具代の合計は65万~95万円程度が目安といわれています。ただし、治療を受ける歯科医院や治療方法によって大きな差がありますので、必ずしもこのとおりだとはいえません。また、支払いもメインテナンスや調整費まで含めて最初に総額を計算する歯科医院もあれば、治療段階が進むごとに支払っていく歯科医院もあります。さらに、長期の分割払いやデンタルローンの使用可否といった違いもあります。
なお、一般の歯列矯正は保険の対象にはならず、自由診療扱い(3割ではなく、全額自己負担)となります。ただし、口蓋裂や口唇裂など、先天性疾患の治療を目的とする場合や、外科的な治療が必要な顎変形症の治療を目的とする場合には保険が適用できることがあります。
矯正方法ごとの特徴と治療費の目安
歯列矯正にはさまざまな治療法があり、どの方法を選ぶかによって治療費用は大きく変わってきます。ここでは、代表的な5つの治療方法の特徴と治療費、矯正器具代総額の一例を紹介します。
1. ワイヤー矯正
歯の表面に金属装置の「ブラケット」をつけ、そこにワイヤーを通して歯の位置を調整していく治療方法です。「歯列矯正」と聞いて多くの人が思い浮かべるであろう、最もオーソドックスな矯正方法です。通常は金属製ブラケットとワイヤーを使いますが、セラミック製の白く目立たないブラケットを使う方法や、より目立たないよう歯の裏側にブラケットを装着する方法もあります。費用としては、金属製ブラケットを使う場合で約40万円~、白いブラケットの場合で約60万円~、歯の裏側に装着する場合で約80万円~、といった金額が目安です。
2. マウスピース矯正
透明なマウスピースを使って歯を動かす方法です。ワイヤー式に比べて処置できる歯並びは限られますが、取り外しができるので目立たず、装着感や痛みが小さいのが特徴です。費用は治療期間の長さと使うマウスピースの種類によって変わりますが、高額なマウスピースでなければワイヤー式より20~30万円ほど安くなることもあります。
3. インプラント&ワイヤー治療
ブラケットとワイヤーに加えて矯正用のインプラントを使って歯を動かす方法で、比較的新しい治療法です。従来のワイヤー式に比べて、治療期間を最大半分ほどに短縮できるメリットがあります。費用はワイヤー式より高額となることが多く、60~150万円が目安です。インプラントの場所によっても費用が大きく変わります。
4. 外科手術との組み合わせ治療
見た目の問題だけでなく、噛み合わせの機能に問題がある顎変形症が起きている場合に行われる治療法です。一般的に通常の矯正治療を数ヵ月~1年半ほど受けてから、大学病院で入院・手術を受ける流れとなります。保険が適用される場合もあり、その場合の治療費は入院費用と合わせて約50~65万円程度であることが多いです(症例にもよります)。
5. 部分矯正
前歯のみなど、一部分だけを矯正する方法です。ワイヤー式とマウスピース式があり、多少費用は変わりますが、10万円以下と少額で矯正できる場合も多いです。
なお、歯列矯正は審美目的の場合は医療費控除の対象とはなりませんが、噛み合わせの治療など医療目的の場合は医療費控除の対象となる場合があります。確定申告で医療費控除を受けるには、領収書のほか歯科医院が発行する治療証明書が必要になることもありますので、その場合は歯科医院に発行を依頼しましょう。同じ矯正でも、口の中の状態によっては部分矯正で治療が可能な場合もあります。どの矯正方法が一番適しているかは一人ひとり違いますので、「高い」と決めつけてしまわずに、まずは歯科医院で相談してみるのがおすすめです。
編集部コメント
矯正治療と一口に言っても様々な種類があるのですね。そして種類が多ければまた、かかる費用にも幅があるということでした。今回の記事では治療法毎の大まかな値段相場が紹介されていましたが、かかりつけの歯医者さんへ矯正治療の費用についてはご相談ください。
監修日:2019年11月18日
監修医 プロフィール
藤本 俊輝
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医