歯科医師が答える!最悪の場合、全身へ悪影響を及ぼす歯周病の予防法と治療法


お口のトラブルの代表のように取り上げられることも多い歯周病。歯茎が腫れていたり痛みを感じたりするときなど、歯周病かな?と思う人も多いでしょう。
ですが、歯周病がどんな病気なのかをしっかり理解している人は、実は少ないのではないでしょうか。特に、歯周病の症状である歯肉炎と歯周炎、この2つは名前が似ていることもあり、違いを理解するのが難しいです。歯肉炎と歯周炎は何が違うのでしょうか。

歯周炎と歯肉炎の違いって?

治療しないまま放っておくと、歯を失う原因となったり、最悪の場合には全身へ悪影響を及ぼしたりしてしまう、とても恐ろしい歯周病。その一症状である歯周炎も歯肉炎も、口内の細菌が引き起こす歯茎の炎症と言う点では一緒です。この2つの違いは、なんといってもその深刻さでしょう。歯肉炎は、細菌によって歯茎の表面組織(歯肉)が炎症を起こした状態です。プラーク(歯垢)が原因と言われ、比較的軽度な炎症です。一方の歯周炎は、歯茎のみではなく内部にまで細菌が侵入し炎症を起こした状態を言います。歯を支える骨にまで炎症が拡がり、骨が溶けてしまうことを歯周炎と呼ぶのです。こうなってしまうと、元の状態に戻すことは非常に難しいでしょう。歯周病はある日突然発症するものではなく、徐々に症状が進行していくものです。最初は軽度の歯肉炎だったものが、治療せずに放置してしまうことで、徐々に悪化して、最終的に骨にまで炎症が拡がり歯周炎へと至ります。

歯周病の進行過程

歯茎が健康な状態から歯が抜けてしまうような重度の歯周病へ至る過程には、歯肉炎、軽度の歯周炎、中度の歯周炎、と症状が変化していきます。

①健康な状態

健康な状態だと、歯と歯茎のすき間(歯肉溝)には1~2ミリ程度のすき間があります。

②歯肉炎

歯の表面にプラークが溜まり、歯茎に炎症が起こります。歯と歯茎のすき間が2~3ミリへと広がります。

③軽度の歯周炎

歯肉炎を放置していると、歯茎の炎症が悪化します。歯周病原菌が内部(歯周組織)へと侵入します。歯肉の下にある歯槽骨や歯根膜が菌によって破壊され始めます。

④中度の歯周炎

炎症がさらに拡がり、歯の根の部分を支えている歯槽骨の半分近くまで到達します。ここまで進行すると、歯を支える力が低下し、ぐらつきを感じます。

⑤重度の歯周炎

歯の根の部分を支えている歯槽骨の半分以上が破壊され、歯がグラグラします。食べ物を噛むことが困難になり、ちょっとした衝撃で歯が抜け落ちてしまうこともあります。

歯周炎の後半まで進行してしまうと、健康なはずの歯を失ってしまうだけではなく、食事にも支障をきたします。食べられる食材の種類が減ってしまい、栄養面にも問題が出てきますね。また、痛みによって歯磨きができず、さらに症状が悪化するといった悪循環に陥ってしまうこともあるでしょう。歯周病は予防も大事ですが、早期発見・早期治療が何よりも重要な病気だと言えます。

歯周病が悪化してしまう原因

歯周病が悪化する原因には、様々な生活習慣などが関係していると言われています。歯周病が進行しやすい人の特徴としては、以下のようなポイントが挙げられます。

・喫煙習慣がある
・精神的ストレスを感じやすい
・妊娠などによるホルモンバランスの変化
・強い歯ぎしりや食いしばり

特に気を付けたいのがストレスでしょう。ストレスによってタバコを吸う本数が多くなったり、歯ぎしりや食いしばりを無意識にしていたりする人は少なくありません。歯周病によって弱った骨は、少しの衝撃でもダメージを受けてしまいます。また、妊娠などで女性ホルモンが増えると、歯周ポケットからの滲出液にも女性ホルモンが含まれるようになります。歯周病原菌の中には、女性ホルモンを栄養としてプラーク化するものも存在しますので、妊娠している女性はこまめに歯磨きをして歯科検診を受けるようにしましょう。

初期歯周病の予防法はプラークコントロール

歯周病を予防するには、プラークを発生させないことが重要になってきます。そのためにも正しいブラッシング方法を身に付けましょう。さらに、既に歯肉炎になっている場合でも、ブラッシングでプラークを除去してあげれば炎症の悪化を防ぎ、症状を改善させることが出来ます。正しい歯磨きの仕方は、歯医者さんで教えてもらうことが出来ます。歯医者さんでプラークや歯石を除去してもらうことは、歯周病予防にも大切なことですので、定期的に歯科検診を受けることを心掛けましょう。

歯周病が重症化した場合の治療法は?

既に歯周病になってしまっているという場合には、どのような治療をすれば良いのでしょうか? 歯周病は、素人判断できるようなものではありませんし、セルフケアで治療できるようなものでもないので、まずは歯医者さんに行って診察をしてもらいましょう。
セルフケアできないからといって、全く自分で気を使わなくて良いというものでもありません。根本的な治療をしつつ、毎食後の効果的な歯磨きをして、進行防止に努めなくてはいけません。
軽度、中度の歯周病の場合には歯に付着しているプラークや歯石を除去するのが主な治療法となります。場合によっては痛みを抑えるために麻酔を使用しながら、歯の表面にプラークが付着しにくいようスベスベに仕上げます。また、重度の歯周病となると歯周ポケットが深すぎるため、歯石を取るのが難しくなります。そのため、「フラップ手術」という手段をとることが多くなります。歯茎を切り開き、歯の根っこに付いた歯石を見えるようにしたうえで、歯石を除去します。その後、汚染された歯茎を除去し、歯周ポケットを浅くすることで、メンテナンスしやすい状態へともっていきます。最近では「エムドゲイン療法」という歯周組織を再生するための治療を行っている歯科医もいます。こちらは保険適用外のため、希望した場合にのみ治療を受けることができます。

歯周病治療は早期発見が重要

歯周病の治療法は、基本的には細菌を除去することが一番とされています。骨まで炎症を起こしている状態(慢性歯周炎)でも、上で説明したように、細菌の温床となるプラークや歯石の除去(口腔清掃)が主な治療法となっています。ですが、通常の口腔ケアだけでは治癒しないケースも存在します。このような場合には歯医者さんで歯周病原菌の検査を行い、有効な抗生物質を投与して除菌するなど、専門的な治療が必要となります。進行も早く、治療にかかる時間もかなりのものとなりますので、歯周病はなるべく早く発見できるようにしましょう。

編集部コメント

ちょっとした衝撃で歯が抜けるって怖すぎませんか…。手術で歯茎を切開しないといけないとか、歯周病ってそんなに生易しいものじゃないんですね…。歯周病の前段階の歯肉炎になっているかどうかって、歯と歯茎の隙間が1ミリ広がったかどうかで分かるそうですが、自分では気づきませんよね。やはり、歯医者さんに定期的に見てもらうのが一番ですね!医科歯科.comで、今すぐ歯医者さんを探しましょう!
 
監修日:2019年11月13日

監修医 プロフィール

藤本歯科長洲医院
藤本 俊輝
歯学博士
日本大学歯学部歯科補綴学教室Ⅱ講座兼任講師
日本補綴歯科学会 専門医・指導医
日本磁気歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医