【産業医が解説】うつ病は1年以内に28%が繰り返す!復帰の仕方を慎重に

 
産業医が担当するのは受診を促すことだけではありません。職場の環境自体に働きかけ、復帰のサポートも行います。
 
前回産業医について教えていただいた産業医事務所 合同会社ケンワーク代表 津田健司(つだ けんじ) 医師に、実際の業務について教えていただきます。
 
復帰の仕方によっては悪化をする場合もあります。産業医はどのようにサポートをしているのでしょうか。

 

産業医は仕事と治療の間を取り持つ

医療機関外での診察・治療は法的に認められていないので、産業医は医療行為である「診断」はできません
 
「今の状態はやはり普通ではないから、一度〇〇科に行った方がよいですよ」とアドバイスをしたり、職場として配慮できることがないか、本人及び会社側と相談・調整したりするのが、産業医の役割です。

 

重要となる復帰の仕方をサポート

また、本人が病院を受診して治療が始まった後も、病気と仕事の両立をサポートします。
 
例えば、脳梗塞の後遺症で麻痺はないか、集中力や判断力は十分に回復しているか、抗がん剤の副作用で眠気やしびれなどはないか、運転は大丈夫か、生活上の注意点がないか、今後の治療の見通しはどうなのか、などを確認して、仕事の量や内容、残業時間などに制限を提案したり、場合によっては配置転換の可能性を探ります。
 
うつ病では、一回休んで復帰した後に、再度休んでしまう確率が高いので、復職後も月一回は面談してフォローしています。
 
2017年の調査では、復帰1年以内に再度休職してしまう方が28.3%おり、5年以内で47.1%、実に半数の方が再度休職してしまうと報告されています。
 
また、休職期間も1回目が平均107日に対し、2回目では157日と、段々と長くなっていく傾向にあります。

 

自分の強みを掴む「リワーク」の利用もおすすめ

休職期間が十分に取れる場合には、うつ病の方のリハビリである「リワーク」に通うこともおすすめです。
 
リワークには「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が運営している公的なものと、精神科クリニック等がデイケアの枠組みの中で運営している私的なものがあります。
 
ある程度心身が落ち着き復職が視野に入った段階で、自分自身についての振り返りや、気持ちの切り替え方の練習、事務作業訓練などを行うことで、自分の特性への理解が深まり、復職後に再休職しにくくなると言われています。
 
一方、都道府県によってリワークへのアクセスはかなり差があります。
 
私が震災以後非常勤ながら診療を続けている福島県いわき市は、人口が35万人と県内最多ですが、市内にリワーク施設はなく(2018年10月調査)、最寄りの施設のある郡山市までは電車で1時間半かかります。電車も1日数本しかないので、通うことはほぼ困難です。

 

医科歯科ドットコム編集コメント

復帰さえすれば大丈夫という訳ではないようです。
 
悪化や繰り返すことのないように、復帰する際には産業医の先生としっかり打ち合わせをして、心配の少ない状態で戻れるようにすることが重要です。

 
取材日:2020年3月12日
 
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プロフィール

津田 健司(つだ けんじ)医師
 
<略歴>​
1984年生まれ/千葉県出身​
2003年開成高校卒業​
2010年北海道大学医学部卒業/同年より亀田メディカルセンター初期研修医​
2012年より同院血液腫瘍内科後期研修医​
2013年より帝京大学ちば総合医療センター血液・リウマチ内科後期研修医​
2014年より助手​
2015年より帝京大学大学院医学研究科第一臨床医学専攻博士課程​
2018年博士課程早期修了/博士(医学)​
2018年 合同会社ケンワーク代表社員​
 
<資格>​
日本医師会認定産業医​
日本血液学会血液専門医​
日本内科学会総合内科専門医​
日本内科学会認定医​
抗加齢医学会抗加齢専門医
 

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