【産業医に聞く】20代女性の約4割が五月病に?春のうつ症状に気を付けて!

桜のつぼみもほころび始めて段々と春を感じるようになりました。
 
暖かくなり新年度が近づくと、なぜか心の不調を多く聞くようになってきます。五月病は代表的ですが、なぜ過ごしやすくなる春に不調が出てくるのでしょうか。
 
今回は産業医事務所 合同会社ケンワークの津田 健司(つだ けんじ)医師に、「春のうつ症状」と「五月病」について、教えていただきました。

 

元気が出てくるからこそ春が危ない

 
春はうつ病が発生しやすいというより、自殺など思い切った行動に出ることが多くなるので注意が必要です。
 
冬場は、うつ症状が悪くなりやすいのですが、悪すぎる時というのはエネルギーが切れてしまって行動に移すことはあまりありません。
 
しかし春になって暖かくなり、少し元気になってきた時が一番危ないのです。実際、自殺者数の政府統計を見ると、例年12月が最も少なく、3~5月に最も多くなります

 

五月病になる人は想像以上に多い

うつ病まで行かなくとも、ゴールデンウィーク明けに全然やる気がおきなかったり、体のだるさを感じたりする「五月病」の方も多くいます。
 
頭痛や腰痛、食欲低下など体の症状や、思考力の低下、ネガティブ思考なども出たりします。

 

|五月病は新入社員だけの問題ではない

五月病は元々、期待に満ちて入ってきた新入社員が、生活パターンや人間関係の変化、理想と現実のギャップなどから新しい環境について行けず、会社に来られなくなってしまう現象について名付けられました。
 
しかし最近は、新入社員以外でも春先に心身のバランスを崩してしまう方が多くおり、これらも五月病と言われています

 

|環境の変化があった人は注意!20代女性は約4割が五月病に?

2018年に、外資系生命保険会社が1000人のビジネスパーソンに行ったアンケート調査では、男女ともに20%以上が五月病になったことがあると回答し、特に20代女性では約4割が五月病になったことがあると答えました。
 
この調査で、五月病になったと思われる原因は、1位が入社、2位が人間関係の変化、3位が転職、でした。
 
部署や役職が変わったり、転職した方、引っ越しや家庭環境の変化などがあった方などは、特に五月病に注意した方がよいと思います。

 

メンタルヘルス不調を招く“思考の癖”がある

外部環境の変化以外に、個人の性格や内面の要素にも、メンタルヘルス不調に繋がりやすい思考の癖が知られています。
 

|真面目で責任感がつよい人に当てはまりがち!思考の癖に注意!

例えば、コップに半分水が入っている状態を、「まだ半分ある」と捉える人もいますし、「もう半分しかない」と捉える人もいます。
 
メンタル不調になりやすい人は、ほんの少し減っただけでも「もう」と思ってしまいがちです。
 
この他にも例えば、1つでも間違いがあってはならないと考えるような「全か無か思考」や1回の失敗で自分にはこの仕事は向いていないと考えるような「一般化のしすぎ」になっていないでしょうか。
 
他人からの厳しい指摘が頭から離れなくなり、心の切り替えができない「心のフィルター」、上司の期待に120%答えなければならないと考える「すべき思考」などもメンタルヘルス不調に繋がりやすいと言われています。
 
このような方は職場では、真面目で責任感がつよく、仕事ができるタイプだと思われていることが多いのですが、完璧主義の裏返しで細部が気になってしまったり、悩みを抱え込んでしまったりして、メンタルヘルス不調になってしまうことが多いのです

 

|意識していつもと違う考え方を

思考の癖を直すのはなかなか難しいことです。
 
しかし自分にどのような思考の癖があるかを把握し、物事をあえていつもの自分とは違う角度から考えてみるように心がけてみてください。
 
少し自分を俯瞰して見ることができる
ようになり、メンタルヘルス不調になりにくくなるかと思います。

 

医科歯科ドットコム編集コメント

春という不調が起こりやすい季節だからこそ、意識してメンタルヘルスの不調を防いでいくことが重要ですね。
 
不調になりやすい思考の癖に、心当たりのある方はぜひ、見直してみてください。また、心の不調が続くようであれば、専門の医師を頼るのも大事なことです。
 
引き続き次回、津田先生にメンタルヘルスの健康な保ち方についてお話を伺います。

 
取材日:2020年3月12日
 
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プロフィール

津田 健司(つだ けんじ)医師
 
<略歴>​
1984年生まれ/千葉県出身​
2003年開成高校卒業​
2010年北海道大学医学部卒業/同年より亀田メディカルセンター初期研修医​
2012年より同院血液腫瘍内科後期研修医​
2013年より帝京大学ちば総合医療センター血液・リウマチ内科後期研修医​
2014年より助手​
2015年より帝京大学大学院医学研究科第一臨床医学専攻博士課程​
2018年博士課程早期修了/博士(医学)​
2018年合同会社ケンワーク代表社員​
 
<資格>​
日本医師会認定産業医​
日本血液学会血液専門医​
日本内科学会総合内科専門医​
日本内科学会認定医​
抗加齢医学会抗加齢専門医

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